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三日之神伝説編 51話

 01


 西久保事件から二週間。

 季節は梅雨に移り変わっていた。

 初旬から連続で雨が降り続いているせいでイライラする。

 バス代かかるから手加減しろよ梅雨……



 衣替えをしたおかげで女子生徒はワイシャツ一枚になるのでは?

 と思い込んでいたが現実は甘くなかった。

 セーターでスケスケ防止か、うんまあしょうがないよね。

 俺は傘を差しながら項垂れる。

 ……そういえば来月の月末でようやく夏休みになるな。

 真梨愛と出会って色々な事があった。

 百聞は一見にしかずっていうけど確かにその通りかもしれない。


 孤高の冷血女王と周りから恐れられていたり、理事長の姪を利用して権力を振りかざしていると噂されていたが実際は西久保が能力を使ってただけだ。

 まあ、あまり噂に興味無かったから真梨愛と普通に接する事が出来たのか。


 頭の中で色々と考え事をしていると学校に着いた。

 以前の頃とは大違いだ。

 前は他人の事なんて一切考えなかったのに。 

 ……いずれ辞めるなんて考えたくない。 


 今日はどんな日常が待っているんだろうな。

 昇降口に足を踏み入れた瞬間、日常が非日常に変化した。


「おっうふ!??」


 黒服の男達が俺を抱え込み、黒塗りの高級車に投げ入れた。

 え、ちょっとこれは犯罪なのでは!?

 突然の事に俺は言葉が出なかった。

 02




 どうしよう……

 学校は既に遠い彼方、逃げようと思っても怪我は免れない。

 俺に身体強化系の能力があれば脱出出来た可能性が……


「おい」


 隣にいた強面のお兄さんがドスの効いた声で俺に話しかける。


「は、はい?!」


「……お前は明日香様の正体に気づいているのか」


 何だただの犯罪者ではないのか。

 少し安心したが明日香「様」?

 三雲家の関係者かと思っていたがどうやら違うようだ。


「はい。三日之神なんですよね?」



「確かにそうだが……神降ろしの能力の詳細までは奴から知らされていないんだな。本邸に着くまで我々一族の話をしてやろう」



「あの俺を拉致る意味はあるんですか?」 


「明日香様がお前を呼んだんだ。寺に着くまでに私の秘密を話せと命令をされた」



 明日香さんが俺をわざわざ呼んだ?

 スマホで連絡すればいいのに。

 状況が掴めなくて頭が混乱している。


「ひとまず話をしてやろう。まず三雲家は分家である竜宮寺家の神降ろしの力を借りて数百年かけて三日之神を封印し続けた。神降ろしは竜宮寺家当主だけが使える封印術で神や霊などを体に閉じ込める事が出来る」


「しかし、三日之神を自らの体に降ろした者は三雲家当主()()()()()()()()()()を使わないと体の所有権を取られてしまい、本人の人格は消されてしまう。……つまり今の明日香様は既に消えかかっている状態だ」


「三雲家の能力は入れ替わりじゃないんですか」


 男は困ったような顔で俺に真実を話してきた。



「真梨愛様は幼い頃に三日之神によって奪取の能力を消され、入れ替わり能力という呪いをもらった。封印する力を失った我々は途方に暮れたが明日香様から君の噂を聞き、強行手段を取った。手荒な真似をしてすまない」


 運転手を除いた男達は俺に頭を下げた。

 俺は慌てて頭を上げるように促した。


 そうか真梨愛も三日之神の被害者だったのか。

 昔の俺だったら嘘をつかれていた事に腹を立てるかもしれないが今の俺は違う。

 ずっと真梨愛が他人を助ける為に頑張っていたのを誰よりも知っているからこそ責められない。

 かなり辛かっただろうな、生徒会メンバーに事実を伝える事が。

 会長である自分が誰よりも早く呪いを受けていたとなると面目無いし。

 呪いを得ていたとなると真梨愛にも人には言えない悩みがあるのだろうか。

 明日から顔合わせづらいな……


「君は明日香様に直接会ってもらう事になるが真梨愛様には今日合った事は絶対に言うなよ」




 まだ竜宮寺さんは病院に入院している筈、なのに会わせるって……

 俺は三日之神と初めて遭遇した時の事を思い出す。


『その様子だとまだ自身の秘密も言ってないみたいだな。この儂自ら教えてやるのもいいが……』



 もしかして竜宮寺さんの事実を真梨愛には知らさないようにしているのか?

 隠し通せるのだろうか。

 俺は真梨愛に嘘はつかないと約束をした。

 一度約束をした以上、破らないのは当たり前だがこれから三日之神について対策を練らなきゃいけない時が必ずくる。

 もし、その三日之神が竜宮寺さんの体を乗っとって乗っとられた原因は自分だと気づいたらきっと真梨愛は自分を責めるだろう。


 俺はどうすればいい。


「少年、お前の気持ちは充分わかるけど明日香様と会えば今後の道筋がわかると思うぜ。まだ生きてたらの話だけど」


 運転手の隣にいたいかにも陽気なお兄さんは俺の心を見透かしていたのか、励ましてくれた。

 俺の選択次第で真梨愛の今後が決まる。

 プレッシャーで胸がはち切れそうだった。


 ――

 ―――


「着いたぞ、ここが竜宮寺家の隔離屋敷だ」



「これが家……」


 俺の目の前には世界文化遺産になりそうな巨大な寺があった。

 三雲家の分家というぐらいだから小さいかなと勝手に想像していたけどデカすぎないか?



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