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西久保有紗編 47話

 01



「ここが須加尾ドームですか……!」


 俺達は数時間かけて東京に到着。

 ツアーはまだ行われないのに周辺には音漏れを聞こうとしているファンが沢山集まっていた。

 平日なのに社会人ぽっい見た目の人達がいるが彼らは一体いつ働いているのか。



「詩織、気持ちはわからんでもないが今は西久保を探さないとな」


「わかりました……」


 詩織は名残り惜しいのかスマートフォンのカメラで写真を撮り始めた。

 チケット当落はまだ先だから詩織が当たってくれると嬉しいな。


「……有紗大丈夫かな、あの子意外とプレッシャーに弱いところがあるから抜け出してないかな?」


「心配している気持ちを素直に伝えたりしてみた?」


 真梨愛は唐突に東雲に話を振る。

 ストレートに言えない事を言えるのは真梨愛の良いところだ。



「言おうと思ってもいつも逃げられちゃうんだよね、私の事嫌いなのかな」


「あー、もう!」


「え、真梨愛ちゃん!?」


 しびれを切らしたのか真梨愛は東雲の手を掴み、須加尾ドームとは真逆の方向へと歩き出す。 

 釣られて俺と詩織もついて行く。


「友達だったら西久保さんがいるところはわかるでしょう。私は今まで友達がいなかったから分からないけど、これだけは言えるわ。お互い素直にならないの本当馬鹿みたい!」



 真梨愛がここまで怒ったのは初めてみた……!

 東雲や西久保はお互いに思うところがあるみたいだけど()()()()()()()()()みたいだ。

 確かに俺は真梨愛と同じ様な気持ちを抱いたが、まだ知り合って間もないから口出ししていいか悩んだ。

 でも真梨愛は俺と同じ立場でありながら東雲に自分が思った事を伝えた。


 ああ、そうか。

 真梨愛は友達として、俺は第三者としてじゃ見る目線が違うんだ……

 この時点で真梨愛はもう俺とは違う場所にいる。

 どうにかしてその場所へ辿り着きたい……



「真梨愛ちゃんに何がわかるのって言いたいけど、薄々自分でもケジメつけなきゃって感じてたんだ。真梨愛ちゃん、私に勇気をくれてありがとう」



「西久保さんがよく行く場所とかわかるかな」



「有紗は緊張するといつも空が見える高い建物に行ったりしてたような……」



「詩織、この周辺で空が近くで見える場所を探してもらえないか」



「お任せください!」


 俺は既に写真を撮り終えてた詩織にスマートフォンで西久保が行く様な場所をリサーチしてもらうように頼む。

 五分もしない内に詩織はリサーチを成功した。


「須加尾展望台、ここから歩いて十分もしない場所にあります!」


 東京の地理がわからない以上、俺達は文明の利器であるスマートフォンに頼るしかなかった。

 十分もしない場所にあるらしいが桜ヶ丘と違って東京は道が複雑すぎる。

 上手く到着出来るのか不安になってきた。


 02




「高校生四人! お釣りはいらないわ」


 到着時間が予定よりも五分遅れてようやく須加尾展望台に到着した。

 入場料金を払わなきゃいけないが、高校生四人だと少し厳しい額で俺達は躊躇した。

 ただ一人を除いて。

 真梨愛はどこからか出したお札を受付へと出し、お釣りを受け取らずにチケット四枚を貰う。

 三雲財閥の跡取りは男らしいな!



 しかし、平日にも関わらず須加尾展望台には人が大量にいた。

 ここから西久保を探すのは厳しいな……


「ここは二手に別れた方がよくないか?」



「ハジメくんの言う通りね。私と詩織さん、ハジメ君に東雲さんで西久保さんを探しましょう」



「西久保先輩が見つかったら連絡しますね!」



 俺達は二手に別れ、西久保を探すのを開始した。

 六階以上ある須加尾展望台を探すにはもう少し人手が欲しいが、贅沢は言ってられない。

 隅から隅までお客さんの邪魔にならない程度に走りながら探す。

 だがどんなに息を切らしながら探しても西久保の姿は見当たらない。


「東雲、西久保はどういう……タイプだ」



 くっそ……俺にもう少し体力があれば……


「自分が緊張している姿は他人に見られたくないタイプだね。あっ、もしかして」



 普通の一般客が行けない裏側に行っている可能性が出てきた。

 従業員に見つからずに行くのは難しそうだ。


「今は西久保を探さなきゃ、見つかった時の事は後回しだ」


 抜き足差し足忍び足という感じで俺と東雲は従業員の目を掻い潜りながら非常階段に着いた。

 須加尾展望台の従業員、高校生が裏側へと侵入しているのに全く気づかないのはちょっとまずいですよ……



「このドアの先に西久保がいてくれますように」


 階段を登っていくと、目の前には見るからに重たそうな扉が現れた。

 俺は西久保がいる事を願い、重たい扉に手をかけた。

 ……あれ?

 一応、男なんだけどなぁ。

 どうして開かないんだろう。


「工藤、もしかして力が」



「ぜ、全然力あるがらぁぁぁあ!!」



 思い切って引っ張ってみても全然ビクともしない。



「東雲……助けて」


 俺は恥を捨てて東雲に助けを乞う。

 たまに力が出ない時ってあるよね、絶対ある筈。


「ちょっとどいてもらっていい? せーの!」


 東雲は難なく扉を開ける事に成功した。

 細い体のどこに筋肉は隠れているのか不思議でならない。

 帰ったら筋トレしよう……男の威厳がないし。


 ドアを開けてもらうと強い風が髪をなびかせた。

 空はまだ青く、どの場所からでも街の様子が眺める事が出来た。

 ただし、窓ガラスは無く柵のみ。

 正直立っているだけで辛い。


「あの姿……有紗!?」



 東雲が指を指す方向に西久保はいた。

 下手したら落下するかもしれないのに寄りかかっており、見ているだけで冷や冷やする。

 西久保は東雲の声に気づいたのか蔑むような目でこちらを見つめていた。


「どうして来たの」

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