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西久保有紗編 46話

 01


「本当に西久保先輩来ますかね?」



「大丈夫、絶対来るはずだから……多分」


 俺は詩織といっしょに朝早くから放送室に来ていた。

 詩織に頼む前に真梨愛や東雲に頼んだが、何故か二人きりだとわかると拒否されてしまった。

 嫌われているのか……?


 俺はスピーカーの音量を最大にして昨日撮った録音を流す。

 初日に西久保が俺を罠に引っかけようとしたのだから仕返しだ。

 引っかかるとは思えないが一応、逃げ道は確保した。


『西久保、今日の正午に桜の木の下で待っているから』


 ……我ながら恥ずかしくなる。

 校内の殆どが西久保の洗脳を受けているから早めに洗脳を解けばこの録音内容は忘れるだろう。


「詩織、外の様子はどうだ?」


「特に変わりはないですね……あの、今の内容は真梨愛先輩に伝えましたか?」


「いや? 言ってないけど」



「あっ……真梨愛先輩には私からちゃんと伝えますので先輩は今後の作戦でも考えてください」


 詩織は俺を可哀想な目で見てくるがどうしたんだろう……

 まあ、とにかく西久保が来ないと話が出来ない。

 真梨愛が来る前に何とかしなければ。

 西久保と対面させるわけにはいかない!


 ―――

 ――――


「来ないですね……」


 一時間は経過したが、西久保は姿を見せなかった。

 顔を赤くしながら俺を罵倒しにくるだろと予想していたのにあんな録音流した意味無いじゃん。


「俺が恥かいただけだな。教室に戻るか」


 俺達は自分達の荷物を持ち、お互いの教室に戻ろうとすると扉に紙が貼られていた。


「なんでしょうこれ。えーと、なになに……西久保有紗は現在学校を休んでボイコットした妹の代わりにツアーの練習に借り出されている……あの工藤先輩これって」


 そっか、詩織は西久保の妹が推しのアイドルの姉だと知らなかったんだ。

 どう反応するべきか悩むな。


「あまり人に言わないようにな、俺達だけの秘密だ」


 東雲から話を聞く限りだと西久保は妹と比べると才能はない。

 妹の代わりに西久保をわざわざ学校を休ませて代役をさせるのは本人にとっては酷だ。

 でもこれは第三者から見た感想。

 彼女にとっては親に見てもらえるチャンスなのかもしれないな。


「ツアーの練習って大抵何週間もかけると思うんですけど、能力を放置したままだと危なくないですか?」



 確かに詩織の言う通りだ。

 西久保の性格を考えると親や周りの人間に自分の能力を使っている可能性も充分考えられる。

 それに昨日の事も引っかかってしょうがない。

 もしかして西久保の能力は既に暴走していて、昨日の出来事も能力が原因だとすれば大変な事になる。

 洗脳された人間が飼い主に手を出す事もありえなくはない。


「関係者じゃないから入れてもらえないだろうしな」


 新たな案は出てこない。

 洗脳された人はこの学校だけで百人以上はいく。

 その人数が西久保に牙を向いたら身の安全はないだろう。

 どうにかして助けないと。


 考える暇もなくHR前のチャイムは鳴り響く。


「詩織、昼休み東雲と真梨愛を連れて俺の教室に来てくれ」


 またあの人の手を借りなくてもいいようにしなければな。


 02



「竜宮寺さんに力を貸してもらおう」



 すいませんやっぱ無理です。

 今回ばかりは自分の手でやりたかったが、相手は芸能一家の子供だ。

 一般人の俺には無理がある。


「ああ、明日香は今病院で検査を受けているから連絡つかないわよ」


 昼休み、詩織は約束通り真梨愛達を連れて俺の教室に来てくれた。

 洗脳された生徒が多数いるが、今日は飼い主の西久保はいない。

 そのせいか生徒達の赤目は薄くなっていた。


「竜宮寺さんって体が弱い人なの?」


 初めて出会った時には入院していたとは言っていた。

 でも一度きりのものだと思っていたが間違いだったのか?


「うん。小さい頃からよく入退院を繰り返していたとは聞いていたんだけど、病名は教えてくれないんだよね」



 人に言えない病気なのか。

 真梨愛に心配かけないようにしているのはわかるが、真実を言わなきゃ余計に心配すると思う。

 他人の俺が口出しするべきではないんだろうけど。



「無理をさせるのは良くないから自分達でやるべきだな。思いつかないが」



「あの、工藤いいかな?」



 遠慮がちに東雲は手を挙げて発言した。



「多分私の名前を言えば通して貰えると思うんだよね。確証は無いけど」



 そういえば東雲は幼い頃から仲が良かったんだ。

 名前を覚えていれば中に入れてくれるかもしれない。



「確証は無くても別にいいよ。助かったよ東雲」




「有紗を助けられなかった昔の自分とは違うところを見せなきゃ意味ないからね!」


 いつもの元気な東雲にようやく戻ってくれた。

 暗い雰囲気は似合わない。


「詩織、ツアーの場所ってどこかわかる?」



「ちょっと待ってくださいね……」


 詩織はスマートフォンで西久保梨沙の公式Twitterを見ていた。

 ツアーの告知が確か載っていた筈。

 遠くなければいいんだけど。



「あの、先輩。ツアーの最初の場所言っていいですか?」



「ああいいけど」



「東京です……」




「「「と、東京!?」」」



 思わず東雲と真梨愛と同じ言葉を言い放ってしまった。

 流石に距離がありすぎるな。

 車が無いと東京まで行く金額が凄まじい額になってしまう。



「人の命がかかっている以上、躊躇していられない。私の専属運転手に東京まで行かせるわ」



 真梨愛は目にも止まらない速さでスマートフォンを使い、運転手に連絡をし始めた。

 誰かの為に自分の権力を使えるのは凄い。

 それに比べて俺は……

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