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西久保有紗編 40話

 01


「ねっむ……」


 詩織と一緒にイベントに行って既に二日が経った。

 同じジャンルを好きになった俺達は一昨日からLINEで頻繁にやり取りをするようになった。


 一日で途切れるかなと思いきや、詩織から次のイベントも一緒に行きませんかと誘われた。

 ここは男が誘うものだろと言われるだろうが、詩織の方が一足早かったからしょうがないんだ。

 うん、しょうがない……

 まだだいぶ先だけど楽しみでしょうがない。

 同じ趣味の友達と遊べるなんて夢みたいだ。



 色々と楽しみ事が増えたが、今日から文化祭に向けての会議が始まる。

 もう少し体を休めたいけど、そうはいかない。

 生徒会に入った以上は真梨愛の為に働かないと。

 そういえば去年の文化祭は叶枝がずっと一緒だったな、今年は誰と回るんだろう。


「あ、工藤先輩おはようございます」


 下駄箱から自分の上履きを取り、生徒会室に向かおうとすると詩織とばったり出会った。

 俺と詩織は偶然欠伸を同時にやってしまい、思わず笑ってしまう。 


「おはよ、昨日は眠れた?」


「見ればわかるじゃないですかー、意地悪ですね」



 詩織の顔にはうっすらと目にクマが出来ていた。



「綺麗な顔にくまは合わないな……」



「……え?」



 あっ、しまった……心の声漏れてた。


「せ、せ、先輩は真梨愛先輩がいるのに私をからかわないでください!」


 茹でたこのように顔を真っ赤にした詩織は俺をボコボコと効果音が出るような殴り方をしていた。

 痛くないのが彼女の性格が出ている。


「俺と真梨愛は別にそういう関係じゃないよ、釣り合わないと思うし」



「先輩は自分の事を下げすぎです、充分魅力あるんですから自信持ってくださいよ!」


「例えば?」


「や、優しいとことか?」 


 恥ずかしながらも答えてくれる詩織。


「後は?」



「誰かが困っていたら助けてくれるとこ」


 チラチラこちらを見ながら言葉を選んでそうなところを見ると頭を撫でたくなる。



「うん、次は?」



「……先輩ふざけてますね?」


 詩織はいちいち反応が可愛いからついからかいたくなる。

 叶枝が俺の事を実の弟みたいに可愛がっていたから、いつの間にか移ったのかな?


「真梨愛先輩! 工藤先輩が意地悪するんですよ! 助けてくださーい」


 俺達は真梨愛が()()()()()()()()()生徒会室に着き、扉を開ける。


「あら、()()()()()。どうかしたの?」



 生徒会長席に明らかに三雲真梨愛ではない人物がふんぞり返っていた。


 02




 何で西久保有紗さんがここに……?

 いや、今この状況でさん付けするのはやめておこう。

 俺に対する敵意がひしひしと伝わってくる相手にさん付けは不要だ。


「……詩織、アイツの()()()()()。これ使って目を隠せ」 


「はい……」


 俺は詩織に自分が所持していたハンカチを渡す。

 詩織は俺の後ろに隠れて西久保の様子を見ていた。


「赤目をした生徒が増えているのはお前の仕業か?」


 俺の能力が西久保の目を見るなと訴えかける。

 西久保を見ていると無性に嘘を見抜ける能力を使いたくなってきた……

 どういう事だ?


「何を言っているのかしら、工藤君。私は三雲よ、洗脳能力なんて使えるわけないじゃない」


「ああ、そうだよな。俺は三雲に何を言っているんだろう」


 そう言うと西久保の片目は赤色に変色した。

 まるでルビーのように赤い目を見ていると、心が吸い取られそうになるが俺は堪えた。

 いや、堪えたという言葉は変だな。

 言い直すなら全然効かなかった。

 何故なら……


「西久保、お前嘘が下手くそだな」


 俺には嘘を見抜ける能力がある。

 先に嘘をついたおかげで西久保がどれだけ俺を洗脳しようとしても、相手が気にしているであろう言葉を言えば全く通用しない。



「は、はぁぁ!? 私が三雲じゃない証拠が何処にあるか言いなさいよ!」


 ほら引っかかった。



「まず、真梨愛はそんな汚い言葉を使わない。嘘がバレても焦らない」


「へぇ、やるじゃない……私が三雲じゃないって事がわかるなんて流石能力者ね」



「俺が能力者だって聞いたのか?」


 嘘はついていないようだ。



「三日之神に貴方の事を聞いたのよ、嘘を見抜ける能力を持った男の子がいるみたいだと」


「おい、嘘つくなよ。三日之神がこの現代にいるわけないだろ」


 三日之神が東雲達に能力を与えたのは祠に行ったからだ。

 この世に実在してしまったら色々な場所に移動して更に能力者が増やされてしまうはず。



「ご自慢の能力を使えばわかるでしょ? 私は嘘をついていない。彼女から貴方を配下にしろって言われたのよ、私の能力を使わないとついて来ないからってね」 



「はぁ……じゃあこの場に三日之神を連れてこいよ」



「そう簡単に来るわけないじゃない、神様だもの」



 普通の人間が嘘をつく時は周りに薄汚れた色が少し入る程度だが、西久保の場合は色が真っ黒だ。




「嘘をついても良い事なんてないぞ」


「本当よ! ただ顔が思い出せないだけでさっき言った事は事実だから!」


 俺が嘘を見抜ける能力を持っている事は生徒会以外知らない。 

 今の言葉は真実なようだ。

 真実という事は三日之神が西久保に能力を与えた事になる。

 三日之神は記憶を一部消去させる能力でも持っているのか?




「洗脳能力は俺には効かないから三日之神に言っとけ、能力者の性格ぐらいは理解しろってな!」



「く、ムカつく……! 三日之神に連れてこいとは言われたけど個人的に貴方の事嫌いだから少し痛い目にあってもらうわ」



 西久保は唐突に指を鳴らすと、どこからか大男が二人現れた。

 風紀委員会に所属している奴らか!!


「三雲様、我々は何をすればいいのでしょう」



「死なない程度に痛めつけてちょうだい、後ろにいる女の子は可哀想だから傷つけないでね」


 大男二人も目を赤くしており、西久保を真梨愛だと思い込んでいた。

 コイツらに捕まったら何をされるかわからない。

 詩織だけでも逃がさないと!



「詩織、お前だけは逃げろ!」



「いいえ、工藤先輩だけ残していけません!」


 詩織は俺の手を引っ張り、生徒会室から飛び出した。


「アンタ達、工藤を捕まえたらいいことしてあげるから追いなさい!」


 後ろから雄叫びが聞こえてきた。

 俺達は逃げ切る事が出来るのか……

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