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36話

 01


「貴方お父様から雇われたメイドじゃないわよね?」



「大丈夫です、真梨愛様。私自らが選んだメイドですのでご安心を」


 真梨愛は俺を明らかに敵視しているような目だった。

 見られているだけで、石になってしまうような感じがする。

 三雲家で一体何があったんだ?



「自己紹介してください」



 竜宮寺さんは俺に対してウィンクをしてくる。

 上手く乗り切れという事だろう、でもウィンクって……



「えーと、私の名前は久島千里です。よ、よろしくお願いします」


 限界まで声を高くして話す。

 この甲高い声で話すのは無理があるな。

 名前は女の子ぽっくしてみたけど、声や仕草などを意識しないとバレるから気をつけないと。


「………」


 なんか凄い俺を凝視してくる……

 もしかしてバレたか??


「よろしく、久島さん」


 真梨愛は()()()()で俺に握手を求めてきた。

 試されているな、信用に値するのかどうか。

 俺は逆に満面の笑みで握手に答える。

 今、真梨愛が困惑したように見えたけど気のせい……か。



「真梨愛様、午後から紫吹様との会食が入ってますがいかがなさいますか」


「キャンセルにしといて、私午後から出かけるから」



「ですが、正和様に言い訳するのにも限度があります」


 俺の自己紹介が終わったと思ったら、竜宮寺さんと真梨愛が険悪な雰囲気になっていた。

 この二人は仲が良いんじゃなかったのか?

 あまり喧嘩はしないように見えるけど。



「三日之神の伝説で気になる事があったから本殿があった場所まで行かなきゃならないのよ。ハジメくんの為にも」



 俺の為に?



()()()()()()()()()()()()()?」



「え、ええ。そうよ、私は約束したんだからハジメくんと。入れ替わり残滓を無くすって。だから行かなきゃいけない」



 誰が見ても真梨愛は嘘をついているように見える。

 嘘を見抜ける能力を使うと真梨愛の周りは淀んだ色が出ていた。

 俺の事を思って考えているけど他にも理由があるという事だ。

 真梨愛に対して能力は使わないと約束したけど、あまりにも様子が変だからつい使ってしまった……

 罪悪感が俺の心にへばりつく。


「わかりました。旦那様には私から伝えときます……」


 納得したというよりかは妥協した感じだな、竜宮寺さん。

 竜宮寺さんはポケットからスマートフォンを取り出し、番号を押し始めた。




「そうだ、久島さん。ちょっといいかしら?」



「は、はい。なんでしょうか?」


 真梨愛が手招きをしているから、俺は傍に駆け寄った。

 近くで見ると真梨愛の髪の毛は絹みたいに美しいのに寝癖のせいで台無しだ。

 叶枝と同じように髪をブラシで梳きたくなってきた……!

 彼女でもない女の子の髪の毛を触る


「今、私のせいで明日香が立て込んでいるから髪を梳いてもらってもいい?」


「明日香以外のメイドには私の髪の毛を触らせたりはしないのだけど、貴方にだけはそういう嫌な感情は湧かないのよね」


 また嘘をついている……どうして嘘をつくんだ?



「真梨愛様、流石に入ってきたメイドに髪を触らすのはどうかと思います」



「そうね、ちょっと悪ふざけが過ぎたわ。じゃあ明日香の代わりに私が指示してあげる」


 顔の表情には出ていなかったが、目だけは驚いている様子を見せていた。

 もしかして真梨愛は新人のメイドが父親からのスパイじゃないか見極めているのか。

 信用を掴むのが大変そうだな。


 02


 カバンは用意されていた部屋に置き、俺は真梨愛の指示通りに多くの場所を掃除した。

 後から来た竜宮寺さんが俺の手際の良さを見て、褒めてくれから少し気分が良い。

 真梨愛は午後から出かける為に自分の部屋に戻っていった。

 俺が昼食の準備をしていると、竜宮寺さんが真梨愛がいなくなったのを見計らって話かけてきた。


「工藤さん、暇な時にまた働きに来てもらっていいですか?」




「以前私とした約束を果たしてもらう為に来てもらいましたが、思った以上に働いてくれたので正式に雇いたいです」



「正規雇用だとお給料出ますけど良いんですか?」


 また女装するとなると頭痛が再発しそうで怖くなるけど、学校とは違う真梨愛を見れるのは嬉しい。

 嘘をつく理由も気になるし。


「ええ、もちろん。今回働いたぶんもきっちり払わせてもらいます」


 ……手際が悪かったらお給料出てない可能性出てきたな。

 家事が出来る叶枝に教わってよかった……


「ただ……工藤さんにはお願いしたい事があるんです」


 正式に働く代わりに何か条件つけられるのか?

 学校も女装とか?

 いや、それはないか。



「真梨愛様を救ってくれませんか?」 



「真梨愛を救うって一体どういう事ですか?」



「……あの子には自由が無いんです。三雲家という巨大な財閥の跡取りとして産まれた彼女は小さい頃からずっと習い事ばかりでした」



「同年代の子達は外で遊んでいるのに真梨愛は屋敷で眺めているだけ。悲しそうな眼差しは今でも忘れません」



「私は真梨愛の為なら何でもしますが、一人では限界があります。三雲家に縛られていない貴方なら真梨愛に……」


「夢を見させてあげられると思います。どうか力を貸してください」


 竜宮寺さんは俺に対して頭を下げてきた。

 小日向アクアマリンでおかしな事を言っていた事に納得した。

 今の言動からだとまだ、真梨愛は習い事をしているようだ。

 漫画の主人公なら真梨愛を三雲家から自由にさせる事は出来る、だけど所詮は漫画。

 俺が出来るのは習い事が無い時に外に連れ出すぐらいしか出来ない。

 でも頭を下げられたら、頑張るしかないか。



「自分で良ければ力になります」


 俺が真梨愛のストレスを解消するんだ。

 学校でも家でも本当に笑っている真梨愛を見たい。


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