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15話

第2のヒロイン編を書いてるので、少し投稿が遅れます。すいません。

  01


「何をやっているんだ! 時間ギリギリではないか!!」


「す、すいません!」


 開会式が始まる前には何とか間に合う事が出来たが、やはり先生に怒られるのは必然だった。


「三雲さんが謝る事ではないですよ。副会長が三雲さんを困らせていたという事は聞いていたので」


「え?」


 後ろを振り向くと、そこには俺の姿をした三雲がいた。三雲は地球温暖化で枯れた大地みたいな頭をした先生にこうべを垂れていた。


「申し訳ございません。僕のミスで会長の手を煩わせてしまい、貴重なお時間を無駄にしてしまいました」


「……三雲家に恥をかかせるな。何を言われるかたまったもんじゃない」


 先生はそう言い残して、どこかへ消えた。


「三雲、どうしてわざわざ自分が怒られるようなまねをするんだ?」


「元はと言えば私のせいだし、怒られて当然よ」


 言い分は分かったが、俺が怒られている姿を見るのは複雑だ。


「工藤ー、真梨愛ちゃーん!!」


 俺と三雲が話をしていると遅れて東雲がやってきた。 東雲は何を思ったのか、三雲の姿をした俺に抱きつく。


「良かったぁ……心配したんだよ真梨愛ちゃん」


「お、おい。東雲、早く離してくれるとありがたいんだけど」


 東雲の上半身にある何ともいえない強力な武器と三雲のものが触れ合っていて、俺は心が苦しくなる。

 くそ……めっちゃエロいな!!


「真梨愛ちゃん? 工藤みたいな喋り方しているけどどうしたの? 」


「実はね……薫ちゃん。これには訳があって」


 三雲は俺の代わりに俺と三雲の能力について話をした。 東雲は最初、俺達の能力に驚いていた。

 しかし、直ぐに理解したようだ。


「二人の能力っててっきり漫画に出てくるような能力かと思っていたけど、全然違うんだね!」


 分かったのか、分かっていないのか。東雲はしばらくすると何故か顔を俺から逸らした。

 まあ……取り敢えず時間はないから開会式のスピーチ原稿を三雲に貰うか。


「工藤君、スピーチ原稿なら私のブレザーのポケットにあるわよ」


「お、本当だ。サンキュー、三雲」


 俺の考えを先に読んでいたのか、三雲は俺に気を使ってくれた。せっかく入れ替わったのだから、ちゃんと生徒会長の役目を真っ当しないとな。


「もう時間だから頑張ってね、工藤君」


 気がつけば既に開始時間の一分前になっていた。壇上裏から体育館の方を見ると数えきれない生徒が待ち構えており、俺は緊張で足が震える。

 今は能力が半分しか使えないから、自分に嘘をついて緊張を無くす事は出来ない。仕方ない、古典的な方法を使うか。

 手のひらに人の字を書き、それを飲み込む。 簡易的だが、しないよりはマシだ。


「工藤、このスピーチが終わったら話があるの……いいかな?」


 後ろから肩を叩かれたので、振り返えると少し俯いた東雲がいた。


「別に大丈夫だけど……」


「よ、用件はそれだけだから。頑張ってね!」


 スイッチが切り替わったのか、急に元気な東雲に戻った。体調悪そうに見えたけど、大丈夫かな。

 俺は東雲の事が気になったが、今の開会式の方に集中する事にした。

 重い足取りで壇上裏から出る。


「うわぁ……」


 思わず俺は声を漏らしてしまった。俺が出てきた瞬間、騒音のようにうるさい全校生徒達が一斉に黙った。

 余りにも露骨すぎて、それ以上の言葉が出ない。

 俺を見る生徒達の視線は人を見る様なものではなかった。まるで、化け物を見るかのような怯えた目付きだった。


 三雲はいつも、こんな視線に耐えていたのか。俺は集会や開会式の時はめんどくさいから遅刻をしていたけど、もしこの場にいたら俺も同じような視線を三雲に向けていたのだろうか。


 俺は手元に持った原稿を壇上に置かれた演台に置く。中を見ると、一生懸命に書いた事がわかるぐらいに文章がビッシリ並んでいた。

 今からこれを読むのか……


「えー、スポーツ大会は我が校が開校してから半世紀も行われています。先生方は一、二年生の方々が親睦を深められる為にスポーツ大会を始めました。 ですが、今その目的は薄れてきています。 私はこのような事からスポーツ大会は無くした方がいいと考えました」


「理由としては、運動部の自己中なプレーが原因です。順位制度があるせいで、運動部の生徒はクラスの人達との親睦を忘れて良い成績を残す事しか考えていません。 自分達のプレーに合わない生徒には罵詈雑言を浴びさせる、親睦の為のスポーツ大会はどこにいったのでしょう」


 生徒達や先生はざわめき始めた。あの三雲がスポーツ大会に対して文句を言うとは思っていなかったのだろう。

 ちゃんと原稿通りに読んでいるのに……


「サッカー、バスケ、野球、バレーというスポーツはチームプレイです。 自己中心的なプレイを一部の生徒が行えば、そのスポーツの意義が消えてしまいます。 今回のスポーツ大会は例年通り行いますが、来年以降は続けられるかわかりません。 もし、続けたい場合は各クラスでチームプレイを行う事。 それで良い成績が出れば、続投するか検討します。以上です」



 明らかに生徒や先生達の動揺が目に見える。 桜ヶ丘高校は毎年スポーツ大会がある時は運動部に所属している生徒達が王様プレーをしている。自分のプレーが上手くいかないと、クラスのせいにしたりする。

 そのせいで、いつもスポーツ大会は乱闘が起きかねない状況下にある。

 運動部に所属していない生徒は正直、スポーツ大会に恐怖を抱いているのだ。


 俺は自分自身、緊張している中でよく読めたなと思った。


「お疲れ様、工藤君」



 壇上裏に戻ると三雲が出迎えてくれた。



「私のワガママに付き合わせてごめんなさい」


「どういう事だ?」



「本来のスポーツ大会は年に数回しかやらなかったんだけど、私が生徒達の親睦を深める為に毎年やった方がいいって提案したのよ」


「ここの高校は県内トップに落ちてしまった人達が来る高校だから、凄く雰囲気がギスギスしていたのよ。それを改善する為に提案したのだけどね……」


 三雲は生徒達の事を誰よりも思っていた。俺はその事を知れて良かった。

 自分だけが、三雲の本当の気持ちを知れる。


「俺は一年生の頃からスポーツ大会が改善されないかなって思ってたからちょうど良い機会だったよ」


「私のクラスの試合まではまだ時間があるから、少し休んできなよ。 私は少し先生に呼ばれちゃったから行かなきゃ」


 今更だが、俺の姿をした三雲が先生に怒られるという光景は違和感あるな……

 確かに入れ替わりしていなきゃ、先生に怒られていたのは俺なんだけど。三雲に対して先生は怒れないし、必然的に副会長の俺が怒られる。

 考えてて、頭が痛くなるな。


「真梨愛ちゃんとの話は終わった?」


「東雲! いつの間に……」



「なんか真梨愛ちゃんと工藤が仲睦まじく話してたから入りにくくて、遠目で見てたよ」



 何で東雲は遠慮なんかするんだろう。声をかければ、話はやめるのに。


「東雲、それで話って何だ?」



「ここじゃアレだから場所変えない?」



  02



「わざわざ体育倉庫裏に来なくても……」



「他の人に聞かれたら恥ずかしいじゃない」


 俺達以外の生徒達は体操服に着替えているので、校庭は静かだった。

 何故だか、俺の心臓はさっきのスピーチより高鳴っていた。別に告白されるわけではないのに……


「工藤はさ、何で私や真梨愛ちゃんの為に力を貸してくれるの?」


「それは……」

 東雲は少し間を置いてから、本題に切り出してきた。俺はどう答えればいいのだろう。 本当は誰かが目の前で苦しむのが嫌だから出来る限り、助力しているけどこれを言ったら東雲はどう反応するのかが気になる。

 ドン引きされたら、嫌だ。


「私は工藤の事をもっと知りたい」


 嘘を見抜ける能力がない以上は東雲が何を考えているのかがわからない。

 俺がどういう人間か確かめているのか?



「俺が東雲や三雲を助けてる? 俺は生徒会の仕事としてやっているだけだよ。 生徒の力になれない生徒会はいらない」



「嘘……工藤、目が泳いでいるよ。少しぐらい素直になればいいのに」


 スポーツ大会が始まるまで、何とも言えない雰囲気になった。東雲、お前は俺にどういう感情を抱いているんだ。

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