東雲薫編 11話
01
『バンテレビ!! 朝の星座占い始まるよー!!』
「昨日は疲れたな……」
今日は日曜日、折角体を休められると思っていたのに朝早く起きてしまった。
俺はする事もないので自分の部屋にある小型のテレビで朝のニュースバラエティをぼーっと観ていた。
東雲さんはあの後、先生方に色々と話を聞かれたらしい。多分、他の保護者に説明する言い訳を作る為だろう。
先生方が東雲さんを連れて行った後に三雲が遅れて屋上に来た。
三雲は俺が必ず東雲さんを助けると信じていたのか、俺に労いの言葉をかけてくれた。正直、言われ慣れていない言葉を言われるとすごい恥ずかしかった。
『最下位は蟹座の貴方! 今日は外に出るのはやめた方がいいかもー、ラッキーアイテムは腕時計ですよ!』
「……ま、まぁ当たる訳ないだろ。うん、きっとそうに違いない」
思わず口を開けちゃったけど、基本俺は星座占いなんて信用しない。
なのに今日に限ってはこの蟹座最下位の宣告が当たりそうな気がする。
「取り敢えず飯でも食いに外に出るか……」
父親が振り込んだお金を下ろしに行こう、ついでに近くの飯屋にでも寄るか。朝から高カロリーなんて辞めなさいって叶枝に言われそうだけど。
俺は適当に身支度をして、それなりに清潔を保っているかを確認した後に玄関の扉を開けた。
「おはよう、ハジメちゃん!」
スーパーの袋を二つも持っている叶枝が目の前に立っていた。俺より身長が少し高いので威圧感が凄いっ……!
「叶枝……」
一昨日に謝罪のメールを送ろうと決めたのにすっかり忘れていた。結果として二の次になってしまったのは俺のミスだ。
「叶枝、一昨日はごめん! 折角朝食を作ってくれたのに食べないで行っちゃて」
朝食べなかったせいか、午前中の授業は全く集中が出来なかった。
正直約束の時間に遅れてでも朝ご飯を食べるべきだったな……
「いいのよ、ハジメちゃん。貴方は貴方の考えで生徒会に入る事を決めたんだから別に咎めないよ」
「さ、朝ご飯作るからハジメちゃんは席に座ってて」
「銀行に行かなきゃ行けないんだけど……まあ、後でも大丈夫か」
俺は叶枝の言う通り、朝ご飯を食べる事にした。 叶枝には色々と聞かなければいけない事がある。
そういきこんでいたのだが……
「いくらハジメちゃんにも私の秘密は教えられないよー、いつか教えて上げるけどね」
何度聞いても誑かされるだけで無駄足だった。まるで思考を覗かれている気分になりそうだ。
「ご馳走様でした。久々に叶枝の料理食べれて嬉しいよ」
俺は食器をキッチンまで持っていき、自分で洗った。 いつもの朝食はご飯にお味噌汁、おかずの三種類なのに今日に限っては種類が多かった。
久しぶりだから頑張りすぎたのかな?
「これから私、受験とかで忙しくなるけどハジメちゃんが私を求めれば何があっても来るからね……」
何故か叶枝は俺の腕を握りしめていた。 これから叶枝は受験だから暫くは来れない。 ああ、だから今日は料理に力を入れていたのか。
「私はこれから学校に行かないといけないから帰るから、冷蔵庫に五日分の作り置き作ったからちゃんと食べてね」
叶枝は俺が栄養が偏っている物を食べている事を知ってるから準備がいいな。小さい頃から頼りぱなっしだな俺。
「これから学校? あっ、もしかして東雲さんの件か」
「先生方と今後についての会議をしなきゃいけないから大変よ。生徒会の方にも資料は届けに行くから待っててね」
それじゃあと叶枝は急いで家から出て行った。さて、まだ時間もあるし銀行にも行くか。
出かける準備をした後にインターホンが鳴った。
「叶枝の奴何か忘れ物でもしたのか?」
完全無敵の叶枝が忘れ物をするとは思わないが……
「叶枝ちょっと待ってろよー」
玄関を開けるとそこには目からウロコが出るような人物がいた。
「や、やぁ……工藤」
「し、東雲さん!? 」
02
「どうして俺の住所が分かったの?」
「真梨愛ちゃんに工藤にお礼を言いたいから住所教えてって言ったら喜んで教えてくれたよ」
三雲の奴軽い気持ちで教えちゃダメでしょ!? それより昨日会った時と比べると凄く明るくなってるけど……三日之神の呪いが消えた影響か?
「その言いにくいけど能力は昨日と比べてどう、大丈夫?」
「能力者以外の人は怪物に見える事もあるけど……でもうっすら人の顔が見えるようになってきたから気分が良いよ」
東雲さんの能力がちょっとずつでも弱まっている事が知れて良かった。
俺は考えた、三日之神に願い事した東雲さんは自分の悩みを能力にされた。他の能力者達も三日之神に願い事をして能力を得た可能性が出てきたな。
「それを聞いて俺も安心したよ。東雲さん、さっきお礼をしたいって言ってたけど何をするの?」
「私と一緒に出掛けてくれたら話してあげるね」
俺は何かを感じたのかリビングにある腕時計を取りに行った。 変な事起きないでくれよ絶対に……
ーー
ーーー
俺と東雲さんは近くのショピングモール内にあるカフェへと向かった。
「食べ終わったらでいいからちゃんと話してね」
「うん……準備OKだよ」
普通の女の子なら少し時間がかかりそうなパフェを東雲さんは目にも留まらぬスピードで完食した。
「私ね……真梨愛ちゃんや工藤が助けてくれなきゃ多分だけど死んでいたと思うんだ。スマートフォンで皆の反応観ていたけど一部の人しか私を心配してなかった」
「殆どの人は学校を叩いていて誰も私を心配していない。 工藤が来てくれてから私は死ぬのを思いとどまる事が出来たの」
もし、選択肢を間違っていたら東雲さんが死んでいたと思うと恐ろしい。
「私は二人に救われたから今がある。力になりたいの貴方達の為に」
それってつまり生徒会に入りたいという事か……能力を使わなくても東雲さんは嘘をついていない。
「三雲に生徒会に入りたいって伝えたの?」
「工藤が承認したら正式に生徒会メンバーに登録するって言ってたよ」
俺に承認任せちゃっていいのかよ、三雲。 でも東雲さんの本当の姿を見ると悪い人物ではないし大丈夫だな。
能力を失えばその人の本当の素顔が見れるのは良い事だな。
「同じ生徒会のメンバーになるんだし、固い言葉使いはやめた方がいいかな?」
「私としては固い言葉使いの方が弟ぽっくて可愛いらしいと思うけど工藤はどうしたい?」
まるで俺を弟のごとく扱おうとしているのが目に見えてくる。 東雲さんの素顔はお姉さん気質か……叶枝二人目にならない事を祈ろう。
「そう言われると余計に固い言葉使うのやめたくなるな。 まあこれからよろしく東雲」
「二人の為にせいっぱい頑張るからよろしくね工藤」
俺と東雲はお互いに握手を交わした。 これから付き合いが長くなりそうだ。




