5話
「・・・・・・このクズ、死んだら許さないって言ったじゃないですか。」
梨乃梓初は怒りを込めてそう言った。
「お兄ちゃん......死んだの?」
「あ~、大丈夫ですよ。どうせ生き返ります」
そう惺ちゃんに伝えて彼女は死体を回収してその場へから離れた。
神速のごとくその場を立ち去ったと思うだろう、普通の人達ならば。
しかし彼女は立ち去ることが出来なかった。
この神幸惺とクズを運んで逃げ切ることは容易だろう、しかし弟子を傷付けられて黙っていられるほど彼女は賢くはなかった。
彼女は風紀委員の妙高の家に一瞬で向かい家の中に惺ちゃんとクズを置いた所で再び、このデパートに戻ってきてしまった。
それが彼女の運命・・・・・いや、彼女達の運命を大きく変えることになっているとは知らずに。
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ピーンポン
惺の心とは裏腹にとても心地よい音を出すインターホン。
兄の死体を目撃した、それだけできついというのに梨乃ちゃんはどっか行っちゃって不安でしょうがなかった。
不安で寂しくて泣きそうだったが泣き出すことは許されなかった。
梨乃ちゃんが言うには生き返ってくるらしい......けど死んだ人が生き返るなんて......
そんな時に玄関が開いた。
そこから小学生くらいだろうか、小さい背の低い男の子が出てきた。
その後ろでは大人っぽい女性の方が、恐らく子供とお母さんと言った所だろう。
この人達がお兄ちゃんを生き返らせるとでも言うのだろうか。
・・・・・・しかしどう見ても普通の人たちにしか見えない・・・・・・とてもお兄ちゃんを生き返らせることなんて.......
「・・・・・・入って、詳しい状況はそこで説明する。」
少年はそう告げる。
とても冷静に判断して、どういう対応をとるべきか彼は察したのだがそんな事に彼女は気が回るほど冷静ではなかった。
あぁ.......また一人になるのか。という言葉で脳内は埋めつくされていた。
「・・・・・すまん、ちょっと用事が出来た。」
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「・・・・・・・さて、ひとまず片付いたかな!」
「いやいや、どう考えてもまだまだいるでしょう妙高さん。」
にこやかに笑う少年とそのにこやかな少年にツッコミを入れるロングボブの女性。
普通の人が見ればその光景は異常だが、彼らにとっては日常だった。
あたり一面気絶した人たちの山、中には顔が明らかに変形しているものまであった。
しかし彼らはけして臆した表情を顔に出さなかった。
それが当たり前で、普通だったからだ。
そう、この風紀委員一堂にとっては!!!!
だがそんな中、これだけの人数がやられているのにまだ戦おうとする敵はたくさんいた。
「・・・・・・・犠牲者は約5000人近く......正直規格外の強さです。」
「あの精鋭達が5000人もやられたのか!?一体何をやっているんだ!!!」
200mは離れているだろうか、そんなに離れているのに誰かが通話している声が聞こえた。
完璧に怒っている声だった、その声に臆す者や悔しさを顔に出す者がいたがそんな事は気にせずに風紀委員御一行は敵をなぎ倒していった。
「・・・・・・・kill you!!!」
ある少年は意気揚々と英単語を発しながら敵の体を掴んで投げ飛ばしていく。
威力が明らかにおかしい、がしかし・・・・・・・・
敵は無傷で意識だけなくなっている、それは少年の能力に秘密があると最初は思っていたが。
それは間違いだったようだ、隣にいた彼女こそがその能力を持っていた。
あの少年の能力はまた別にあるとみていいだろう。
「・・・・・・妙高、多分あの通信機を持っている奴がリーダーだろう。」
長い黒髪の女がそういう報告をする・・・・・が的外れもいいところだった。
むしろ、そうさせるためにこの通信機を持たせたというもの。
「・・・・・・・・・・・いや、違うな。」
少年は10秒くらい周りを見渡してこう告げた。
「あのこっそり会話しているあの日本刀持ちこそ、リーダーだ。」
「・・・・・・・・チッ、生意気なガキどもだ。」
日本刀を持った彼は舌打ちをして抜刀した。
恐らくだが当たっていたのであろう、しかし風紀委員御一行は強敵の出現に胸をドキリとさせるのだった。
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