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あなたに捧げる『───』

作者: わんこう

昔々、あるところにそれは愚かな王様がいました。

王様は自分の快楽のために生きてたくさんのモノを壊してしまいました。

そのために王様は魔王と呼ばれ始めました。

そんな王様の元に、ある日勇者がやって来て言いました。


「なぜ、こんなことをするのだ!」


王様はそれに答えませんでした。

そして勇者は魔王を倒して世界は平和になりました。




王様は、本当は何をしたかったのでしょう?

この物語は聖女様のために作られた勇者の輝かしいお話

の裏に隠された一人寂しく過ごしていた愚者のお話






●▽▽▽●▽▽▽●▽▽▽●






近くの森にある廃墟のお城、それが村の人たちからあぶれていた私の遊び場だった。いつ廃墟になったかはわからないほどあちこちが壊れていて危ないけれど。

廃墟のお城は村のみんな怖がってここまで来る人なんていなくて、ここにいる間は私の体を傷つける人と会わなくていいから一番落ち着ける場所になるのは必然だった。

魔力がなくて人でもない私をいじめる人は来ない、それだけで安心できる。




いつの間に寝ていたのだろう?

日は沈んでいて良い子は帰らなきゃいけない時間。

私は悪い子だけど帰らなきゃいけない、ご飯がなくても生きていけるから。



「───守らなきゃ」



私は守らないといけない、それが寂しがりやな王様に望まれたことだから。

まずは掃除から始めないと、私がいない間にかなり汚れてしまったお城を綺麗にしないと王様に文句を言われてしまう。

それもそれでいいけれどやはり従者としては主には完璧を見て欲しい。

それにあの人は私の恩人だ、からかいすぎるのも悪い。

そんなこと考えながら魔法空間(アイテムボックス)から取り出した掃除用具を使って綺麗にしていく。

あの人ためにどうすればいいのか。

あの人の居場所を守る方法。

あの人が戻ったら何をしようか。

そんなことを考えながら。





















●▽▽▽●▽▽▽●▽▽▽●






「この城か?」



地図から顔をあげると古く大きな城が見えた。

主がいなくなって100年ほどたっている城には到底見えなかった。

だからあの話にも信憑性が出てきた、何も出てこないことが一番いいんだが。

確か依頼の内容は…………………………









『この依頼受けませんか?』


『調査依頼か・・・?急にどうしたんだ?』


『いえ、この依頼の場所の近くの村の蜂蜜酒が美味しいのでいかれてはどうかと思いまして。ついでにこの依頼も達成して欲しいので声をかけたのですが』


『つまり不人気な依頼を処理してくれってことか?まぁ、確かに今あいつら旅行に行ってるし、時間はあるけど『そうですか受けてくれますか!』いや、受けるとは言って『では紹介状を書きますので少しお待ちください』…………………いや、だから受けr 紹介状!?』


『そうですよ!今回の依頼は貴族様ですからね!』


『なんで重要なことを後に言うんだよ!』


『だって言ったら受けないでしょうあんた』


『受けねぇよ!俺は貴族苦手なんだから!つーか口調素になってんぞ、この猫かぶりが』


『やだ、猫のように可愛いなんてあんたも言うようになったね』


『おい、いつ俺がそう言った。その若作りをやめてから言え!』


『言ったわね!妖怪若作りBBAって言ったわね!私はまだ15歳なんだからね!』


『そこまでは言ってねぇよ!』


『酷いわ!彼にもそんなこと言われたことないのに!』


『お前の夫、お前より年上だろうが!』


『そこがいいのよ♪』


『のろけてんじゃねぇ!』


『パーティー唯一の独身さん(笑)』


『笑ってんじゃねぇよ!』









………………………………はぁ、嫌なこと思いだしちまったな。

まじでなんであんなやつが受付嬢ランキング殿堂入りしているんだ?

ま、そこはいい。重要なのは依頼の内容だよ。

確かお偉いさんがこう言ってたよな?









『綺麗になっている?』


『ああ、そうなんだ』


『誰かが城を綺麗にしているってことでしょうか?』


『多分ね。ただ近くの村の村人に聞いてもそんなの見たことないと言っててこちらも一回兵士を送ったんだけどね』


『魔物に教われて死んでいたと』


『しかも、争った様子もない』


『なるほど、確かに不可解ですね』


『だろう?だから万が一を考えて君を指名させてもらったのだよ』


『………わかりました』









確かにこれは人が住んでいるとしか思えない。

だが、どうしてこんな不便なところに住んでいるんだ?

領主様が言うに2年ほど前から異変はおき始めていたって言ってたが二年もこんなところでどう暮らすのかは疑問だ。



「…………はぁ、考えても仕方ね。とりあえず入ってみるしかないか」



結局は城の中のやつに聞くしか正確な理由はわからないし、そもそも入らないことには何も進まない。

どうやら門はしっかり開いていて、侵入を拒む様子はない。





城はとても綺麗だった。

それこそ、埃一つ落ちていない。

しかし、窓ガラスがない場所があったり、酷いところでは壁や天井すらなかった。

そして最終的にたどり着いたのは



「謁見の間か?」



一番綺麗に掃除されていた部屋。

そして唯一()()()()部屋だ。

部屋の中にいたのは獣人族の少女だった、幼くまだ保護されるべき年齢に見える。



「やっと来ましたか侵入者(敵さん)



しかし、口から発せられる言葉は冷たい。

なぜこんな幼い少女が、とも思ったがそれ以上考える時間はくれないようだ。



「主様の城に不法侵入した罪は重いです、報いを受けなさい(死になさい)



主?と思ったが少女が剣を持って襲ってくるからどうにもできない。

俺より強いわけじゃない。ただ、こいつは憑かれているだけだから攻撃するのがためらわれる。

しかも、半端に強いから押さえつけることもできない。

こりゃ、スタミナ切れるの待つしかねぇな。






どのくらい避け続けていたかはわからねぇが、少女のスタミナも切れて息も切れ切れになっている。

これなら決められるな。

そう近づいて



「あ」



焦ったのか罠を踏んで矢が飛んで少女を貫こうとする。

体が動いたのはほぼ反射的だ。

何も考えずに少女を突飛ばす。



「!?────!」



どうやら矢には毒が塗ってあったようで、遠退く意識のなかでパーティーメンバーのことを思い出していた。






●▽▽▽●▽▽▽●▽▽▽●




「主様!主様!死なないでください!あなたが死んだら私は何を頼りに生きればいいんですか!」



少女は倒れた少年に涙を流しながらそんなことを言っていた。

少年は胸に剣が刺さっており長くないのは確実だろう。



「──、僕はもう駄目みたいだ・・・・」


「そんなこと言わないでください!」


「最後に・・・一つ頼みがある・・・・この場所を・・守ってくれないか?・・・みんなで過ごした・・・・・・この場所を・・・・・・」



そう言って力尽きた少年の手を握ったまま少女はひたすら叫んでいた



「死なないで────!」




●▽▽▽●▽▽▽●▽▽▽●




目が覚めた時には時刻は夕暮れになっていた。

あの少女が俺が寝ていたベッドの隣で座って寝ていた。

よく、見ればかわいいな………………ん?俺は何考えてんだ?

腹の傷は治ってるな。



「ふぁ…………あ、目が覚めたんですね?」



なんて言って俺の包帯を変え始めた少女に俺は疑問を持ちながらもしばらく休んでいた。

包帯を変え終わった時に俺は話しかけた。



「名前は?」


「名前ですか?」


「そうだ、ないのか?」


「……………………はい」



名前がないことは何もおかしいことではない、実際俺自身名前を持ってないやつを見たことは少なくない。



「…………ソラ、私のことはそう呼んでください」


「わかった」



自分に憑いていたものの名前を使うのは驚いたが本人がそう望むならそう呼ぼうと思った。


しばらくそんな風な会話をしながら少女について聞いていった。

どうやら少女は三年前から憑かれていたようだ。

元々は近くの村で忌み子として嫌われていた、確かに獣の耳と尻尾を持った人間がごく普通の人間の両親から生まれると忌み子と呼ばれることがある。

そこで城を遊び場にしているところで憑かれたらしい。

そして居場所がないと



「ソラ、お前うちこないか?」






●▽▽▽●▽▽▽●▽▽▽●




そう言ったのは運命か偶然か。

彼女は凄い勢いで首を立てに振ってくれた。

今は俺のパーティーの拠点でメイドみたいなことをやっている。

戦闘はからっきしなソラだが家事スキルは高くて今まで俺一人でやっていたことが格段と楽になった。

そして



「どうしたんですか?」


「いやな、ソラが来るまでのことを思い出してな」


「あー、あの事ですね」



俺は拠点の近くにある公園にソラと出掛けていた。

ここから見る星空は綺麗だったからソラに見せたいと思ったのだ。



「…………………ちょっと歌ってもいいですか?」


「ん?いいぞ?」



そう言うと彼女は歌い始めた。

それはとても美しい歌声で懐かしい歌だった、しかしこの国の公共の言葉ではない。



「───────!───────!……………………ふぅ」



言葉が出なかった。

彼女の歌っていた時の顔にみとれていたのもあるが、もう一つ驚く理由があった。



「その歌」

『へー綺麗な歌ですね?』


「えへへ、私の好きな歌なんです」

『ああ、僕の好きな歌なんだ』


「名前は」

『なんていう名前なんですか?』


「────というんです、その………………………いえ、この言葉の意味は自分で調べてくださいね?宿題です」

『────という歌でね。意味は宿題にしよう、わかったらご褒美をあげるよ、ソラ』


「そうか」

『わかりました、主様!』


「ただ、一つだけ言っておきます」

『一つだけ君に言っておくね』









「この歌は私がガロウさんに送った歌ですから!」

『この歌は僕がソラに送った歌だからね』



「…………………」


「ガロウさん?」


「いや、なんでもない」



顔を真っ赤にしながらそう言った少女を見ながら考えていた。

ほっとしてとても嬉しいような感情、きっと今の俺の顔はたるんでいることだろう。

それは仕方ない



(ソラに伝わってたんだな、俺の思い。)



わからなかったことがわかってとても嬉しいのだから。



(知ってるに決まってる。だって────────































─────俺がお前に捧げた『愛の唄』なんだから)











https://ncode.syosetu.com/n3693ed/

ガロウの出てくるお話

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