暖かな記憶
グラデシオsideでお送りします
彼女と離れてから僕は様々な女性達と誘われるがまま踊り、ふと気がつけば彼女達はすでに居なくなっていた
まさか、もう向かったのか!?
曲が終わり次第群がってくる女性に丁寧にお断りを入れ着替える間も惜しんで、彼女との待ち合わせ場所に向かった
見頃を迎えているライラックが咲き乱れるなか寂しそうにたたずむ彼女を見て、胸を押さえた
近寄った瞬間に
「彼はいったい誰なの?」
あぁ、やっぱり覚えていないのか
落胆しながらもいつもと変わらない平坦な言葉で
「本当に記憶が無いんだね」
わずかに驚き振り返る彼女が可愛く見え内心微笑んだ
「えぇ、幼い頃の記憶が残っていないのですわ」
ああ、それでも君は僕にあの頃と同じ感情を向けてくれるんだね
僕はあの頃と同じように膝を付き
「初めまして、私は《グラデシオ・ディセントラ・ワンズ・サモア》です。薔薇のようなレディにお会いできて光栄です」
彼女との出会いを喜んだあの頃のように右手の手の甲にキスをした
彼女は顔を赤くし恥じらい媚びうることもなくやはりただ微笑んだだけだった
「初めて自己紹介したときの反応と同じだね。他の女性と違って媚を売る事もしないし、僕自信を見てくれる」
「私も自己紹介をした方がよろしいですか?」
この場所が彼女との初めに出会った記念に
「うん。お願い出来るかな?」
彼女は相変わらずの美しい動作で
「お初にお目にかかります。私は大4家の1家 朱雀大路 朱弥 の娘 朱雀大路 南朱 と申します。この度 グラデシオ・ディセントラ・ワンズ・サモア 様にお目にかかることがかないとても恐縮でございます」
これで満足したいけど、僕は欲張りだから
「南朱さんは覚えていないかもしれませんが、合気道の世界大会が10年前に僕の国で開かれたことがあるのです。その時に南朱さんとは会ったことがあるのですよ?そしてこの花畑で会ったのはお互いに3・4歳の頃です」
少しでも思い出してくれる事を祈るよ
「当日、少年少女の部の日本人は貴女一人しか大会に出ていなかった。貴女は、教師や親と一緒ではなく一人でウォーミングアップをしていた」
彼女はどこか懐かしそうな表情を浮かべ
「えぇ、懐かしいわ。本来ならお父様が相手をしてくれるはずだったのに仕事が入り一人で型の確認をしてたわ」
ああ!!ようやく思い出し始めたのか
「貴女の型はとても洗礼されていて綺麗だった。そんな貴女に嫉妬した他の選手が数人でよってたかって貴女に試合と言うなのいじめを始めた。僕は一方的にやられる貴女を助けに行こうと側まで行ったが、貴女は軽々と彼らを投げ飛ばした」
「えぇ、あの時は本当に驚いたわ!言葉がわからないと思っている最年少の女の子に8人ぐらいでいきなり技を仕掛けてくるのだもの!お陰で現状を飲み込むのに苦労したわ」
彼女の声はどこか楽しげだった
「そして貴女は彼らの出身国の言葉とサモア語でおかげで肩慣らしができたわと言うと貴女は僕の方を見て『Faafetai』 と言って会場に戻って行った。だけど僕はなにもしていないのにお礼を言われたのか分からなかった 」
流石の僕も驚いたなぁ
「あの時お礼を言ったのは、あなた様の足音を聞いて現状を飲み込めていなく放心状態でいた私を現実に戻ったからお礼を言ったの」
…………えっ!?近寄れば容赦しない って言う風に見えたけど?まぁいっか
「試合は南朱さんの完全勝利だったそして優勝トロフィーと賞金を渡す父上に貴女は」
視線を彼女に向けると、あの時を再現するかの様に
「この賞金の半分をこの国の貧しい人達に与えてください」
「父上は承諾しなかった。しかし貴女も負けじと」
「……これは私が優勝して手に入れたお金です。それを誰にも使おうとあなた様には関係ございません。国王様が承諾してくれないと申されるのでしたら空からお金を撒きましょうか?」
うわ~~今聞いて立場が僕であっても突っぱねることは出来ないね
彼女の記憶が戻ったことにグラデシオは嬉しくなり再現を続けていると
「今思い出すと我ながら傍若無人に言っていたわね~」
話し方が砕けた彼女がさらに愛おしく思った
「まぁ、そのつぎの日から父上は貧困を減らすために君から貰ったお金を使って今の僕達の国ができたってことだね。父上も民ももちろん僕も君には感謝しているよ」
そのお金があったからこそ今までの金銭の回りが悪かったのがスムーズになったしな
「いいえ、あれだけ少ないお金でそこまで進化をとげたのはあなた方のお力ですよ」
「違うよ!君が……。言ってもきりがなさそうだから話は変わるけど、残り半分は本当に孤児院へ渡したの?」
「ええ、今では多くの子達が高校に通いながら私の仕事を手伝ってくれていますわ」
君はどれだけの人を救っていくんだろうね
グラデシオには彼女が眩しく見えた
アハハッ彼らには成長してもらわないと彼女が一人で全てを背負ってしまうだろうしね
彼は木々に隠れている二人を見ながら
「そろそろ君のナイト2人が業を煮やすだろうから戻ろうか」
彼女は少しだけ驚いた表情を浮かべて
「ええ、そうですね」
南朱とグラデシオは月を背にゆっくりと彼らのもとへ歩いた




