卒業式
そしてあっという間に卒業式の日になった
胸元にお揃いのピンク・ローズのコサージュを着け会場となる第1体育館前に向かった。
「南朱~!おはよう」
「おはよう南朱。」
「おはよう。彩、未来。」
「南朱ってお姫様みたいね。」
「そうそう。卒業式の時だけ自由服なんて教師も考えたもんだよね。」
「そんなこと無いよ。未来のほうがよっぽどお姫様ぽいよ。彩は、念願の男装姿で本当に格好いいよ。」
未来は顔を紅くし恥ずかしそうに下を向いた。彩は、胸を張り自慢げにしている。
「離れ離れになるんだね。」
と未来がしみじみしながら言い出した
「……そうだね。そう簡単に会えなくなってしまうのね。とても楽しかったわ、ありがとう未来・彩。」
「…ううん。……こちらこそ、ありがとう。あのとき……二人が、助けて、くれなかったら、ひっく わたし………。本当に、ありがとう。」
と未来は目を真っ赤に腫らしながら言った。彩は涙を堪えながら
「うちこそ、ありがとう。……馬鹿に、しないで、ちゃんと、聞いてくれたり………慰めて、くれたり………。本当に、ありがとう。一生うちらは、親友だからね!」
「「うん。」」
教師の合図で名列で並び音楽と共に足を踏み入れた。
体育館に割れんばかりの拍手に迎い入られなが、一人一人保護者席の前にある段に登り礼をし席の前に向かっていった。
私は、段に登り令嬢としての礼をして顔を上げると 東鵺と目が合いその横にいる二人の男性と家族を見つけた。笑みを浮かべ席の前へ行った。二人とも私の後のためどんな礼をしたかを振り向いて確認することが出来なかった。
校長先生からの挨拶や在校生祝辞等が終わり、一人ずつ名前を呼ばれ舞台に上った。そして私の番
「朱雀大路 南朱。」
「はい。」
校長先生の前に行き礼をした。
「おめでとう。」
「お世話になりました。」
証書を受け取り元の席へ戻った。
全員の証書受け渡しが終わり、校長先生が舞台からおりるはずだけどマイクを握り
「朱雀大路 南朱。その場で起立。」
困惑しながらも立つと
「彼女は、3年間トータルでも常に全学年1位の座を誰にも譲ることなくこの素晴らしい日を迎えることができた。そのため彼女には、卒業代表として言葉を述べてもらう。朱雀大路 舞台に。」
舞台に向かおうとするとタキシード姿の北翔さんが側に来ていた。
「綺麗だね南朱さん。さぁお手をどうぞ。」
驚きを隠すようにしながら手をとり、友達やクラスメイトの前を通り抜けた。そこに待っていたのがスーツ姿の西雅さんがいた。北翔さんから離れ今度は西雅さんの手をとった。
「6年間見ない間に美しくなったね南朱。この日に間に合って良かったよ。南朱の晴れ姿をこの目で見ることが出来て頑張った甲斐があったよ。」
心から微笑みながら
「おかえりなさい西雅さん。お疲れのなか来てくださりありがとうございます。」
彼もいつものように微笑みを返してくれた
「これからは、大変になると思うけど俺達はお前の見方だからな。」
「?えぇ。ありがとうございます。」
階段の手前に東鵺がスーツ姿で立っていた。西雅さんから東鵺の手をとり階段に上った。校長先生の隣に立ち
「卒業生代表として、皆様にお礼を申し上げます。この様な素敵な室内装飾やコサージュをありがとうございます。お世話になった教職員の皆様、保護者の皆様。この様な高い場所からで申し訳ありませんが、常に支え立ち上がる勇気をくださってありがとうございます。本日、私たちはこの学校から旅立ち新たな未来と言う挑戦に向かって歩み続けていきます。なので、これからも応援・支え・御鞭撻のほどよろしくお願い致します。
これにて、卒業生代表としてのお話を終わります。」
一斉に鳴り響く拍手のなかずっと無口な東鵺と一緒に階段を降り西雅さんのもとに着いても手を離さないので、西雅さんは私の左側の手をとり歩き出した。
「上手だったよ南朱。」
「ありがとうございます西雅さん。」
北翔さんがいるところまで来たが二人とも手を離してくれないため、北翔さんが呆れ顔で私の後ろに着いて元の席の場所へ向かった。
こうして無事に卒業式が終わり、彩と未来と一緒に体育館から出た途端に報道カメラに捕まった。
「ご卒業おめでとうございます。朱雀大路 南朱さん。」
彩が咄嗟に私の前に出ようとするとを目で制し変わりに未来を守るように頼んだ。いつもの笑顔ではなく、作り物の外向きの笑みを浮かべ
「ありがとうございますわ。私のためにこの様なところまでお越しくださったのですね。」
「朱雀大路 南朱さん。卒業して今の気持ちをお願いします。」
「今まで私を支え助けてくださった親友たちとの別れは悲しいものですわ。しかし、私たちは悲しみ立ち止まってはいられませんわ。新たな未来へ向けて今、この場所が再スタートの記念すべき一歩目に致しますわ。」
「次に後ろにおられる方は、南朱さんにとってはどんな存在ですかまたお名前もよろしくお願いします」
「お名前はお教えすることは出来ませんわ。彼女たちは私にとって、親友ですわ。」
「では、朱雀大路さんにとって彼女達の存在は?」
この質問は、未来や彩が朱雀大路家に利益をもたらすかどうかってことね。
「そうですわね。これからの行いしだいですわ。」
「それでは最後に、朱雀大路 南朱さんはどの様な殿方とご婚姻されるのですか?今 知っている情報は、
大4家の 青龍寺家・慎玄武家・白虎鳶寺家 のそれぞれの嫡男である。 東鵺さん・西雅さん・北翔さん。
そして各分家である
東條家の嫡男 龍聖さん・慎玄武家当主水沢氏の再従兄弟の分家である 西崎家 嫡男 鴉羅汰さん・北原家嫡男 弥鶴希さん・南崎家次男 晴樹さん。
の7名が上がっていますが、何方か気になる方は居られますか?」
「今のところ居ませんわ。
東鵺さんは、幼馴染みって言うだけですもの。西雅さんと北翔さんは、お兄様的存在ですから。それに、龍聖君・弥鶴希君・晴樹君は弟のようにしか思っておりませんわ。また、鴉羅汰さんとは一度もお会いしたことがございませんがきっと彼も兄のようにしかし思えないと思いますわ。」
「……そ そうですか。ありがとうございました。」
「お疲れ様でした。」
ふぅ~。終わったと思いひと息ついた瞬間
「あっ!そこにおられるのは、西崎家の長女である彩さんではありませんか?」
彩は咄嗟に声のトーンを下げ
「残念ながら違います。」
「……そうですか。」
残念そうに帰って行く記者達を見ながら
「彩・未来 ごめんね。私事に巻き込んでしまって。」
「だ 大丈夫。彩が守ってくれたから。」
「いいや。それよりうちの兄貴が候補に上がってたとはね。」
「彩は知っていると思ってた。」
「残念ながら知らなかったんだよね。それに南朱に7人もの候補者が居るなんてね大変だね。」
苦笑いを浮かべながら
「私も聞いていたのが4人だったから驚いたわ。」
「へぇ~じゃあどの3人の事を聞いていなかったんだ?」
未来も聞きたそうにしていたので
「晴樹君・弥鶴希君・龍聖君 の3人だよ。確か今年で年齢が……14・10・12 だったと思うよ。」
「よく知っているね。」
「さんざん頭に叩き込まれたからね。」
「この話は終わりにして、打ち上げ行く?」
「私は行く。南朱は?」
「どうしよっかな。」
悩んでいたら
「南朱!帰るぞ!!」
「南朱さん。この場から早く離れてください。」
「南朱。車に乗れ」
と東鵺・北翔さん・西雅さん が来るなりいきなり車に押し込まれた
何事かと外を見ると
『西雅様おかえりなさい❗』
『東鵺様仕事を片付けてください。』
『北翔様可愛い☆』
『南朱様ご卒業おめでとうございます‼何処にいても応援してます。』
と言っている人々や看板や垂れ幕を持った人盛りが出来てきていた。
鞄から携帯をとり出し小声でグループ通話を始めた
『彩・未来ごめんね。打ち上げこれじゃ行けない。また今度埋め合わせするからごめんね。』
『いいよ。今度美味しいお店紹介してくれたらいいから。』
『分かった。未来に聞きたいんだけど留学先って何処なの?』
『ロシアよ。』
『……それならまた直ぐに会えるね。』
『どう言うこと?』
『内緒。その時に話すね。』
『『じゃあまたね。』』
『また会う日までご機嫌よ。』
通話を切ると三人とも私を見ていた。
「何か私の顔に着いているかしら?」
「いいや。それより聞きたいことがある。構わないか?」
「どうしたのですか?西雅さん。」
西雅さんは珍しく言葉を詰まられた。
「………あの…その、携帯持ってたのか?」
拍子抜けした質問に
「えぇ。3年前の夏にもらいました。」
「…………南朱さん………僕のこと覚えてる?」
「?白虎鳶寺家の嫡男 北翔さん。幼い頃から西雅さんと一緒にいろいろと教えてくださったよね。」
「……あ うん。」
歯切れの悪い二人を不思議に思っていたら
「お前、俺等の前と西崎家の令嬢との前では態度が違うのはなぜだ?」
と不機嫌そうに聞いてきた。
「それは、女の子同士と異性との違いだけですわ。」
「だからその言葉遣いをやめろって言ってんだ!」
「ヒッ!ご ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
「悪い。ついカッとなった。」
と言いながら震える私を抱き締めてくれた。
不思議だね。これから彼らに嫌われなければいけないのに、この空間で安心しているなんてね。
安堵して意識を離してしまった。