ライラックの花畑
南朱は制服から私服に着替えると廊下で待っている東鵺と北翔さんを連れて、あの時彼が言った『あの花畑』に向かった
東鵺と北翔さんは近くの木に隠れ、南朱は今が見所真っ盛りの4色のライラックが咲き誇る花畑に足を踏入れた
ピンクや紫・ホワイト・ブルー系が個々でほぼ一ヶ所に集まって咲いているなか南朱は物語通り紫やブルー系・ホワイトの方には行かず一本道を通り迷わずにピンクのライラックが咲き誇っている場所へ着いた
はぁ~さっき会った人物語にすら描かれていなかったけど攻略対象の一人なの?内容を思い出してもここでおこるシーンなんて無かったはずなんだけど?
南朱はしばらく空を見上げ春風にあたりながら過去を思い出そうとするが結局霧がかかったように思い出せなかった
「彼はいったい誰なの?」
「本当に記憶が無いんだね」
えっ?彼の足音してたっけ!?
南朱は少しテンパったがそれをおくにもださず
「えぇ、幼い頃の記憶が残っていないのですわ」
彼は悲しそうに微笑むと南朱の右手を優しく掬い上げると膝をつき
「初めまして、私は《グラデシオ・ディセントラ・ワンズ・サモア》です。薔薇のようなレディにお会いできて光栄です」
彼は南朱の右手の甲にそっと口づけをした
南朱は相変わらず微笑んだ状態で
イケメンがこれをやると様になるわ~~!じゃなくて!!ワンズ・サモアってどこかで………ワンズ・サモア?グラデシオ・ディセントラ……あっ!!最近急成長してきた国の王太子!?嘘!?いつ出会ったの?というか彼を忘れている時点で不敬にならないかな??
脳内はすでにパニック状態になっていた。そんな彼女をよそに彼は
「初めて自己紹介したときの反応と同じだね。他の女性と違って媚を売る事もしないし、僕自信を見てくれる」
彼の優しい声に落ち着きを戻した南朱は
「私も自己紹介をした方がよろしいですか?」
彼は、少し考えた素振りをしたが
「うん。お願い出来るかな?」
南朱は、離された手を制服のスカートの裾を少し持ち上げ
「お初にお目にかかります。私は大4家の1家 朱雀大路 朱弥 の娘 朱雀大路 南朱 と申します。この度 グラデシオ・ディセントラ・ワンズ・サモア 様にお目にかかることがかないとても恐縮でございます」
「お顔を上げてください」
南朱はゆっくりと顔を上げると彼は
「南朱さんは覚えていないかもしれませんが、合気道の世界大会が10年前に僕の国で開かれたことがあるのです。その時に南朱さんとは会ったことがあるのですよ?そしてこの花畑で会ったのはお互いに3・4歳の頃です」
3・4歳の頃なら思い出せない過去の記憶の一つってことね。それに10年前に会ったことがあるって言うけど………合気道の世界大会……ねぇ
「当日、少年少女の部の日本人は貴女一人しか大会に出ていなかった。貴女は、教師や親と一緒ではなく一人でウォーミングアップをしていた」
「えぇ、懐かしいわ。本来ならお父様が相手をしてくれるはずだったのに仕事が入り一人で型の確認をしてたわ」
彼はうなずき
「貴女の型はとても洗礼されていて綺麗だった。そんな貴女に嫉妬した他の選手が数人でよってたかって貴女に試合と言うなのいじめを始めた。僕は一方的にやられる貴女を助けに行こうと側まで行ったが、貴女は軽々と彼らを投げ飛ばした」
「えぇ、あの時は本当に驚いたわ!言葉がわからないと思っている最年少の女の子に8人ぐらいでいきなり技を仕掛けてくるのだもの!お陰で現状を飲み込むのに苦労したわ」
「そして貴女は彼らの出身国の言葉とサモア語でおかげで肩慣らしができたわと言うと貴女は僕の方を見て『Faafetai』 と言って会場に戻って行った。だけど僕はなにもしていないのにお礼を言われたのか分からなかった 」
「あの時お礼を言ったのは、あなた様の足音を聞いて現状を飲み込めていなく放心状態でいた私を現実に戻ったからお礼を言ったの」
そう、あのままだと試合に出れなかったか彼らを無意識に再起不能に追いたてたかのどちらかだったから……
「試合は南朱さんの完全勝利だったそして優勝トロフィーと賞金を渡す父上に貴女は」
「この賞金の半分をこの国の貧しい人達に与えてください」
「父上は承諾しなかった。しかし貴女も負けじと」
……えっとなんだったっけ
「……これは私が優勝して手に入れたお金です。それを誰にも使おうとあなた様には関係ございません。国王様が承諾してくれないと申されるのでしたら空からお金を撒きましょうか?」
「と貴女は国王でさえも負けることなくハッキリと言いきった。そして承諾した父上は、『残り半分は自分のために有効活用してくれることを願う』と言ったが」
「それなら将来、私の企業を立ち上げたさいに手伝ってくれる子ども達を育てるため孤児院に寄付しましょう」
「と言う流石に会場の人達も響動めき、父上さえ顔が引き攣っていたね」
南朱は遠目をしながら
「今思い出すと我ながら傍若無人に言っていたわね~」
彼は苦笑いをすると
「まぁ、そのつぎの日から父上は貧困を減らすために君から貰ったお金を使って今の僕達の国ができたってことだね。父上も民ももちろん僕も君には感謝しているよ」
「いいえ、あれだけ少ないお金でそこまで進化をとげたのはあなた方のお力ですよ」
「違うよ!君が……。言ってもきりがなさそうだから話は変わるけど、残り半分は本当に孤児院へ渡したの?」
「ええ、今では多くの子達が高校に通いながら私の仕事を手伝ってくれていますわ」
彼は太陽のように微笑むと東鵺と北翔さんがいる方に視線を向け
「そろそろ君のナイト2人が業を煮やすだろうから戻ろうか」
あっもう夕方になってる!まだ肌寒い中待たせ過ぎちゃった!これはなにかお礼をしないと
「ええ、そうですね」
南朱とグラデシオ二人の背中を夕陽が暖かく照らした。それは、南朱の心にも暖かく懐かしい思いでと共に浸透していった
しばらく不定期でお送りします




