恐怖の破片
いつも通り5時に目覚めた南朱は徐々に明るくなる景色を見てからクローゼットに向かった
「う~ん、今朝は何をしようかな?お弁当を自分で作って持っていこうかな~あっ!でも豪族が通っているところだから作らない方がいっか」
水色のワンピースに着替え髪の毛をポニーテールに結び机につくと今まで習った所から3週間分の予習をあっさりこなした
「う~んー。疲れた~そう言えば昨日のウイルスは誰からだったんだろう?また調べないとね」
背伸びをしていると
「姉さん起きてる?」
あら、大雅にしては早起きじゃない?何かあったのかな
南朱は机の上に置いてある教科書類を棚にさっさと片付けて
「起きているわ。入ってきていいよ」
「じゃあ失礼するよ?」
何で疑問符付けるわけ?まぁ私が起きていることが不思議だったのかな
恐る恐る入ってきた大雅はあかるさまに安心したように一息ついてからソファに座り
「姉さんって早起きだったんだ」
「いつもこの時間にはすでに起きてるよ」
今の時刻は6時30過ぎ で 家を出るのが8時40分。授業開始が9時
「それより、大雅がこの時間に起きているなんて珍しいじゃない。……何かあったの?」
大雅はキョトンとしたが
「あぁ~特に何もなかったよ?えっと……僕が姉さんの部屋に来たのは、中山 の事について調べたSDを持ってきただけだよ」
南朱は大雅をじっと見つめてから違うと判断した。南朱は自分のデスクの引き出しを開け1つのソフトを取り出した
「大雅、これ貴方にあげる。それと今回のお礼は何がいい?大雅専用の家を建てる?それともクルーザーが欲しい?」
確か前回は南の島に別荘を建てたんだっけ。じゃあ今回は、乗り物か生物かな?まぁ自分で働いて貯めたお金だから好き勝手使えるから何だって良いんだけど
「………姉さん」
「うん?何だっていいのよ、したいことでも欲しい物でも」
大雅は意を決したように顔をあげると
「姉さん!姉さんみたいな忍び…じゃなくて影が欲しい!」
「あれは、自分で見つけなさいって言ったはずよ」
まぁ司令塔の一人ぐらいは見繕っても良いけど、後の人選はお父様が勝手にやって連れてくるからそこから大雅は選べば良いんだけどね
「何でもいいって言ったじゃん!」
「はぁ~。どうして今欲しい!って言い出したの?」
「くれないの?」
はぁ~大雅は言い出したら聞かないの忘れるところだったわ
南朱は遠い目をしたが直ぐに現実に戻し
「分かった、でも一人だけだからね。残りの人達は、厳選された中から自分で選ぶのよ」
「うん!分かったよ姉さん」
本当この素直な大雅が可愛いんだけど修正がいつかかるか分からないから怖いんだよね
「明明後日の土曜日に連れてくるからそれまで待っててくれる?」
「うん!勿論だよ姉さん」
大雅は浮かれていたのか扉を閉めて出ていったかと思えば、再び入ってきて
「SD渡すの忘れてた テヘ!」
と言って再び出ていった
どうなしてかな?余計に疲れた気がする最後の テヘ は可愛いんだけどSDの中がえぐいほど細かい個人情報の山だと思うと末恐ろしいわ!
身震いしながらSDをさし込みタブレットを起動させ中身を確認した
ふう~ん 世継争いね何処でもよくあることなのね。朱雀大路家には関係ないことね。それよりも彼には気を付けた方がいいみたいね。結構のやり手だわ
『トントントン』
もうこんな時間ね
「入ってきていいわよ」
「はい、失礼します。お嬢様、お朝食のお時間です。本日はリビングにて御当主様がお待ちです」
お父様が?珍しいこともあるのね
「分かりましたわ」
南朱は、SDを抜きとり履歴まで消してからリビングに向かった
「お父様 おはようございます」
お父様は視線を向け
「あぁ、おはよう」
何かしら?何時もより険しい顔をしているけど
南朱が椅子に座ると次々に料理が運ばれ、従者やメイドも退出していた。リビングに残されたのは、重苦しい空気とお父様と南朱だけだった
「………」
「…………」
「………」
「…………」
お互いに何も話さずに朝食を食べ、食後の紅茶まで飲んだが未だに一言も話さないお父様にしびれを切らした南朱が
「…あの、お父様?何かお話ししたいことがあるのでは?」
全く目を会わさないお父様が南朱の方に視線を向け
「……あぁ、そうだな。黙っていても仕方あるまい 南朱。そろそろ婚約者候補を2人に決めれないか?西雅君はそろそろ結婚してもいい時期だ。これ以上お前の候補では居られまい」
今さらお父様は何をおっしゃっているのかな?私は元から彼らを候補にしたつもりもなければ、縛った覚えも無いのだけど?
南朱は表情を一切変えず
「お父様。私はみなさんの前で言いましたわよね?」
お父様は眉間に皺をよせ
「当時まだ4・5歳だった幼子が言った戯れ言を誰が信じていると言うのだ!」
「では、再度申しましょう。 私は彼等と婚約や結婚をするつもりはありませんわ。そして、好きなお方が出来たならその方と結ばれても構いません。 これは今も昔も変わりませんわ」
『バンッ』
「ヒッ」
お父様が机を叩きつけ
「いい加減にしろ!お前がどこぞの骨ともわからぬ輩と結婚すれば大勢のものに迷惑が掛かるんだぞ!大4家としての自覚をもて」
お父様がリビングを出て行くと今度は大雅が入ってくるなり南朱を後ろから抱きつき
「大丈夫だよ姉さん」
優しい弟の声と温もりで震えがおさまり
「………ありがとう大雅。もう大丈夫よ」
大雅はそのままの体制で
「……なぁ姉さん」
何時もなら離れる大雅が離れないことに動揺しながら
「…なぁに大雅?」
回された大雅の手に力が入るのが分かった。まるで何かを決意したようだった
「姉さんは僕が家督を継いだら何処か俺のためになる人と結婚するのか?」
南朱は大雅 様子に怪訝に思いながらも
「何を言っているの。女性としてこの家に生まれたのだから家の為になる人と結婚するのは大4家では当たり前の事よ」
「僕がこの家から居なくなったら姉さんは好きな人と居られるの?」
今日の大雅はどうしたのかな?
「大雅、どうしたの?何かいつもと違って変よ」
後ろを振り向こうとするが大雅の押さえる力が強くて振り向けなかった
「そんなことどうでもいいから答えて、姉さん」
まるでだなをこねる幼子のように問いかけてくる
「……はぁ、結論から言えばノーよ。貴方が居なくなれば、その分捜索に回さなければいけない。私に渡される仕事も増え、より一層家の為になる人を探しださなせればならない。結局は私の疲労が貯まってしまうだけね」
「じゃあ、父さんがと母さんがいな………「大雅!これ以上は言ってはいけないし考えてもいけない。そんなことをしても答えはノーなのよ」」
無理やり立ちあがり大雅を抱きしめながら諭すように
「私は、貴方が幸せに成れればそれだけで十分だからね?私は、私で最期まで家の為に成ってくれる人を見つけ出すから。貴方は、私の分まで幸せに成ってね」
南朱は泣きつく大雅の背中を擦りながら物語通りの大雅の破片を見た気がして恐ろしく感じた。
大雅が泣き止んでから制服に着替え何時もなら別々のリムジンに乗って登校するが、今日だけは情緒不安定な大雅を南朱のリムジンに乗せ中等部の校舎前まで送った
「姉さん、ありがとう」
頬を微かに赤く染めた大雅は、何時もより早足で校舎内へ入っていった
「あんな顔をする大雅初めてみたわ!何あれ!可愛すぎ抱きしめたくなるわ~」
「あ~お嬢、心の声駄々漏れですよ」
運転席にいる新月を睨みながら
「煩いわね!あんなに恥ずかしがる大雅を見たらそう思っても仕方ないなじゃない!」
「ヘイヘイ」
緩やかな空気から一変して
「新月。月光花と話し合い二人一組で大雅のを見張っていてちょうだい」
「……それは何故?」
「今日の大雅を見ていると胸騒ぎがするのよ。何か危ないことを仕出かすような」
「畏まりました。我が主」
再び緩やかな空気に戻り
「ところで、どうするんです?」
「うん?何が」
「大雅様の影ですよ」
「……彼処に連れていくわ」
「連れていくんですか!?」
「仕方ないわよ。これは好みの問題だしね」
「了解です、連絡を入れておきます」
高等部の校舎につくと新月が敬々しく扉を開け南朱が校舎内へ入っていくまで、頭を下げたままの体制でいた
南朱の姿が完全に消えたことを確認し、車内に戻るとあちこちに電話をかけた。
「はぁ~我が主は弟君に甘過ぎる」




