帰国
鳥の鳴き声で目が覚めると、南朱の肩に毛布が掛かっていた。
…いつの間にか寝てしまったようね。きっと婆やが毛布をかけてくれたのね。
大雅の寝顔を覗きながら
顔色も良くなったようね。これなら今日1日安静にしていたら、明日は観光しながら帰れるわね。はぁ~。それにしても戻ったら課題を行わないと、提出が遅れてしまうわね。
…………?あれ私、何か忘れていないかしら?そもそも、北翔さんは兎も角何故 東鵺までこの旅行に付いて来ているのかしら?よく考えれば、私があの物語同様に数日旅行に行っているのにどうして、東鵺はついて来ているの?確か 0・0,5話の二作品では、私について来ていなかったはずよ。なのにどうして?
『コンコン』
「お嬢様、入ってもよろしいでしょうか?」
婆やの声で考えを中断し寝室から続き扉になっている洋室へ行き
「ええ、いいわよ。」
「おはようございます、お嬢様。」
「おはよう、婆や。」
婆やは、挨拶を済ますと大雅が寝ている寝室の方に視線を送り
「大雅坊ちゃんのご様子はどうでしょうか?」
「まだ寝ているけれど、大分熱も下がったようだわ。今日1日安静にしていれば、明日は観光しながら変えれるわ。」
「それは、ようございました。こちらには、原月を来させますのでお嬢様はお着替えに戻りましょう。」
新月は、無事に他の仕事も終えて戻っていたみたいね。……それにしても、新月じゃなくて北翔さんの方が私にとっても安心できるんだけど。
「…そう。北翔さんや東鵺はどうしているのかしら?」
「北翔様は、早朝からお出掛けになられました。なにやら、昨日の舞踏会で契約にこぎつけられたようです。東鵺様は珍しく木刀を振っておりました。」
えっ……東鵺が木刀を振るっている?あらたに習い始めていたのかな。でもその様な情報は聞いていないし、ただたんに何かを忘れたくてやっているって可能性の方が高いわね。
「婆や。着替えは自分で行うから東鵺に言付けを頼むわ。」
婆やは、少し眉間を動かしたが直ぐに
「畏まりました。それで、何をお伝えすればよろしいでしょうか?」
「『昼食後、訓練室で待っています。木刀で試合を行いませんか?』と伝えて。」
「……空手ではなく、木刀で ですか?」
「ええ そうよ。」
「しかしながら、お嬢様も東鵺様も習得なされていないはずでは?」
「私も、東鵺も大雅の相手を何度も行った事があるから大丈夫よ。」
「……畏まりました。」
婆やが渋々出ていくのと入れ替えに原月が入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。大雅様の|監視に参りました。」
大雅が起きているかもしれないため、新月は畏まった言い方をしていた。
「えぇ。私が戻ってくる間頼みましたよ。」
「はい。お嬢様。」
◆◆◆◆◆
新月に大雅を任せ、動きやすい服装に着替えて朝食をいただいた。
その後、南朱は別荘の裏山に入って行ったら。
朝だというのに鬱蒼と生い茂る木々のせいで辺りは、夜のように真っ暗だった。その様な状態にも関わらず、南朱は光があるかのように躓いたり引っかける事なく悠々と木と木の間をすり抜けていった。
その先には、小さな池があった。そこで南朱は止まると
『明日までは、休暇のはずなのに呼び出してしまってごめんなさいね。今度からは、交代制の長期休暇をどこかに入れるわね。』
南朱が語りかけると 目の前に真っ黒の服装で各袖にうすく淡い青緑色をした青白磁の線が入った5人が片膝をつき頭を下げた状態で、
『いえ。お気になさらないでください。我々は、主の命に従えることのみが誉。何なりとお申しつけください。どの様なことでも遂行して見せます。』
『ありがとう。それで、何か動きは有ったかしら?』
『いいえ。暫くは身を潜めるようです。』
『そう。もし動きがあれば教えて頂戴。』
『はっ。』
膝を着いたままいる月光花を見ると
『……他に何かあるのかしら?』
『はい。あちらに残してきた仲間から あの王子が主と同じ学園に通うことになったそうです。』
たま、物語がおかしくなったようね。
『分かったわ。お話は終わりかしら?』
『はい。』
『では、各自持ち場に戻りなさい。』
『『『『『はっ。』』』』』
彼らが消えた後
「バグの可能性があるね。」
呟いてから行きと同じように鬱蒼と生い茂る森の中にへ戻っていった。
◇◇◇◇◇
別荘に戻ると、婆やが珍しく血相を変えて
「お嬢様大変です!!青龍寺 家当主 誠也様がお倒れになられて、急遽 東鵺様が帰国なされます。」
こんな物語知らない!過労だと良いのだけど。
「私は、大雅を連れて明日の早朝便に乗って戻ります。行きしなに乗って来た自家用ジェットに東鵺を乗せて、婆やも帰国しなさい。東鵺の事を頼みましたよ。」
「……畏まりました。」
南朱は自室に戻ると、黒のポーチから便箋を取り出し一筆書いて東鵺のいる部屋へと向かった。
「東鵺。入るわよ」
「あぁ。」
東鵺は、荷造りを止めようとしたが
「そのまま続けて良いわ。」
「悪い。」
彼は荷造りをしながら
「婆やから聞いたんだろう?」
「えぇ。」
南朱は彼に近づくと有無を言わせないように
「ついでに、婆やを連れて帰国してちょうだい。それと、この手紙をパイロットに渡しなさい。そうすれば、すぐに着くわ。空港までは、車で送ってもらえるから安心してちょうだい。」
「はあ!?それじゃお前はどうするんだよ!」
「私達は、明日の早朝公共の飛行機に乗って帰るわ。」
「それじゃ、間に合わないだろう!それにお前の身が危ないだろう!?俺が公共の飛行機に乗って帰る!」
「今から手配しても、明日の早朝しか手に入らないわ。それに誠也様がお倒れになられたのよ。息子である貴方が早く戻らなくてどうするの!早く行きなさい。」
荷造りを終えた東鵺を部屋から押し出し別荘管理の従者に彼の荷物を預けた。そして、玄関先で先程書いた手紙を押し付け見送った。
◆◆◆◆◆
翌朝、北翔さんと大雅・新月を連れ空港へ着くと そこにはいるはずもない人がいた。
その人は、南朱達に気づくと
「南朱さん。北翔・大雅。こちらです。」
三人は困惑しながら自家用ジェットの置き場へ向い乗り込んだ。
「どうして、おられるのですか?」
「東鵺に頼まれたのでね。『大4家の集に遅刻させないように迎に行ってくれ』ってね。あんなに頼み込む東鵺を初めてみたよ。」
「西雅さん。留学されていたはずでは?」
「集まりがあるから戻ってきていたんだよ。」
「ですが、西雅さんは候補から外れたのでは?ですので、今回は不参加だと思っておりましたが?」
「何処でその様な噂を耳にしたのかは知りませんが、私は下りたつもりはありませんよ。」
と微笑まれた。




