ビオラの間
家の前には無数のリムジンが止まっていた。
あら、そんな話聞いていないのだけど?仕方ないけど、裏口から入りましょう。
「悪いのだけど、裏口に向かってちょうだい。地下駐車場の私が使用する所は、空いているはずだからそこに停めておいて。」
『畏まりました。』
「珍しいな。こんなに集まるなんな。」
「ここに集まっているのは、全て朱雀大路家の分家ですわ。」
「分家に捜索依頼を出したってことだな。」
「………ええ。」
お父様がこの様な行動を取るなんて、予想外出しかないけど。それなら、連絡が来るはずだよね。
「……南朱さん。朱弥さんから連絡は?」
「いいえ。有りませんわ。」
『お着きいたしました。』
運転手が扉を開けると、北翔さん・東鵺の順で降り
「行くぞ。」
「ええ。」
東鵺が差し出した手を取り車内から降り裏門から入った。
「裏は、薔薇のアーチか。」
「……色とりどりですね。」
「ここは、姿を隠すことが出来るので一番落ち着くのですわ。」
扉の前には、二人の男性が立っていた。
東鵺と北翔さんが南朱を護るように立つが、その前に出た。
「どなた様でしょうか?」
「私は、朱雀大路 南朱 ですわ。後ろのお二人は、慎玄武 北翔 様 と青龍寺 東鵺 様ですわ。通してくださいな。」
「お止めしてしまい申し訳ありません。どうぞお通り下さい。」
二人の男性が勢いよく頭を下げた
「いいえ。見張りご苦労様です。」
「「はっ!」」
扉を開けてもらい室内に足を踏み入れた。
「南朱お嬢様!!お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
「えぇ。ただいま、心配をかけましたね。」
「北翔様・東鵺様。ようこそお出でくださいました。いつものお部屋でお待ちくださいませ。」
「ばぁや、お父様はどちらにおられるかしら?」
「当主様なら会議室にて、大雅坊っちゃんの捜索会議をしておられます。」
「ありがとう、ばぁや。着替えが終わり次第、そちらに向かうことをお伝えしてもらえる?」
「もちろんです。南朱お嬢様。」
「助かるわ。」
一礼してばぁやが駆けていった
「じゃあ俺達は、いつもの部屋にいるからな。」
「南朱さん。出来ることが有ったら教えて。」
「二人もとありがとうございます。必ず、大雅を連れ戻してきますわ。」
東鵺達とは違う衣装部屋に入り
どの色が良いかな?淡い黄色何てどうかな?白でも良いけど。今回は、分家も来ているんだから淡い赤が良いかな。
淡い赤色のドレスを着るとその横の部屋に向かった。
「お嬢様。お化粧を致しますのでこちらに。」
「ええ。お願い。」
ドレッサーの前に座ると後ろから
「そのドレスならば、こちらのイヤリングやネックレスが合いますね。」
「いえいえ、こちらの方が美しく引き立てますわ。」
また、始まった。いつもこうなるからドレスを着たくないんだよね。
「お嬢様。終わりました。」
「お疲れ様。 」
軽く結ばれた髪型を見て、侍女達が持っている装飾品を手に取り
「二人とも中々見立てが良いわね。今日は、この 薄い水色系のシーブルーカルセドニーのネックレスとローズクォーツのイヤリングにするわ。」
「畏まりました。」
二人の侍女により飾られ、会議室に歩み始めた。
◇◇◇◇◇
会議室には、3つ種類がある
大4家が話し合う 百合の間
大きな仕事で使う ガーベラの間
今回のように分家との話し合いは ビオラの間
この3つの間は華やかさも変わってくる。
百合の間は 派手すぎず、威厳を表す様に作られている。
ガーベラの間は、緊迫感を感じさせない落ち着いた色合いで作られている。
ビオラ間は、優しい色合いに本家としての華やかさを醸し出している。
南朱が向かったのは、ビオラの間である。
◆◆◆◆◆
扉の前には、ばぁやが待っていた。
「南朱お嬢様。よろしいですかな?」
「えぇ。開けてちょうだい。」
ばぁやは、うなずくと
「本家 朱雀大路家 長女 南朱 様のご到着です。」
開かれる扉を見ながらゆっくりと、お父様の隣にある空席に足を運んだ。
そして、席の前に立ちドレスの裾を摘み軽く膝を曲げ 淑女の礼をした。
「皆様お久しぶりでございます。事後処理を行っていたため、足を運ぶのが遅くなりました。申し訳ありませんわ。」
「南朱。席に」
「はい。」
後ろで椅子を引いてくれた男性に礼を告げてから、お父様から渡された今までの会話文を読みながら話を聞いた。
「捜索手段を拡げるべきです。もしもの事があれば、本家の跡継ぎが女性に成ってしまう。それは、今まで有り得ないことです!」
「本家の威厳が潰れるよりかましですな。南朱嬢が家督を継ぎ、入婿をすれば宜しいでしょう。」
どこの分家も大雅の居場所を把握出来ていないと。ふ~ん大雅のGPSが途中で切れたから中断……ね
「なっ!その男にいい様に扱われるだけでは有りませんか!」
防犯カメラにも映っていない。争った痕跡もなし……か。
「何も他所から入婿を選ぶとは、言っておりませんぞ。我ら分家から差し出せばいい。」
「そうだそうだ!大4家や他家の分家出はなく、我々の所から出せばいい。」
丁度読み終わったときに
「口論している場合か!」
お父様の声で辺りは静まり返った。
「南朱。お前は、どう思う。」
皆の視線が南朱に向いた。
私は、少し考えてから
「そうですね。……一番早く収拾するのには、協力者を増やし捜索エリアを拡大することだと思います。」
「やはりそうしよう!それが一番だろう。今すぐ、他家に依頼してきます。では、当主失礼します。」
立ち上がった男性に
「ただ、本当に居場所が特定されていない場合のみですけどね。」
立ち上がった男性は南朱に
「どう言うことですか 南朱嬢。」
私は、相手を見定めるように見ながら
「貴方様は、まともに捜索されていませんよね。この記録を見ると『この街の全ての監視カメラに、大雅様は映っていなかった。』とおっしゃった様ですね。」
「確かに申しましたが、何かおかしな点でも?」
南朱は微笑みながら
「私が確認したところ、大雅を乗せた車が映っていました。」
『では、本家を乗っ取るつもりで?』
『そうかも知れないな。彼奴ならあり得る。』
「それは、南朱嬢の見間違えでしょう。」
『ああ。大切な弟が居なくなって、見間違えたのか。』
『だが、とても落ち着いておられるぞ。』
「では、この写真はどうご説明してくださいますか?」
南朱は、小型バックからSDを取りだしスクリーンに写し出した
『こ これは!まさしく大雅坊っちゃんだ。』
『間違いない。』
男性は小さく舌打ちをした
「……チッ。」
「お父様にお聞きします。」
「何だ?」
「分家に捜索依頼を出したのは何日の何時でしたか?」
「確か、今朝の5時だ。」
「そうですか。では、次の写真をお見せ致します。」
『誰だこの女性は。』
『アフリカ系か?』
『この時間は、丁度通達が来たときだな。』
「どうですか?何か言い訳は、有りますか?」
「………そうだ。一切捜索はしていない。この女との密会は、…………お前らを殺すためだ!!こいつらを皆殺しにしろ!」
男性は、叫ぶが誰一人入っては来なかった
「どう言う事だ!?早く殺れよ!」
従者も誰一人動くことがなかった。
静まり返る部屋に笑い声が響いた。皆の視線が再び一ヶ所に集まった。
「ウフフ~~。あ~面白いわ。」
「てめぇ!何を笑ってる!」
「仕方ないでしょう?こんな茶番劇初めてだもの。」
男性が南朱に近づいてくるがそれを無視したまま。
「貴方のお仲間さんは、素でに押さえてあるわ。それに………貴方が持っていたナイフ類もこの通り、私が回収させて貰いましたわ。」
南朱は、バックを逆さまにし小型ナイフや拳銃を机に落とした。
「舐めんじゃね!!」
南朱が立ち上がると男性は、何処からか取り出した小型ナイフを構え近づいてきた。
「あら?まだあったのね」
「はぁ。南朱 余り煽るなといつも言っているだろう。」
南朱はお父様の隣に立ち
「ごめんなさい。この頃暇で仕方がないのですもの」
「死ねぇ!!」
勢いよく刃物を握り向かってくる男性を
「えい!」
『ドタン』
軽々と地面に倒し押さえつけた。
「くっ!」
「たわいもないですわね。私に刃物を向けるなら、もっと鍛えてくださいませ。こんなのでは、生きていけませんわよ。」
「南朱。これが普通だからな?お前が強すぎるだけだからな。」
皆がうなずくのを見て
「うう。お父様が、習わせたのでしょう!ふん。もう知りませんわ。2・3日旅行へ行かせて貰いますわ。」
南朱は、椅子に男性を括りつけ扉の前で
「あっ!そうでしたわ。大雅も私も大4家の集まりまでには帰ってきますわ。では、皆様ご機嫌よ。」
「南朱!?」
扉が閉まると
「ばぁや!直ぐに旅行の準備をして。」
「何処に行かれるのですか?」
「アイランド国よ。」
「……また、遠いところに。」
「あっ!東鵺と北翔さんにも聞いといてね。着いてくるか来ないか。来るなら明日の早朝出発すると伝えておいて。」
「……はぁ。畏まりました。」
南朱は自室に戻るなり
「新月。予定変更よ」
「心変わりか?」
「ええ。私もそちらへ行くわ。」
「では、ホテルは二人っきりで!」
「サァ~てと私は寝るわ。明日の早朝」
「諾」




