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第六節 ~予知~

 ・・・この人は・・・誰だろう?身長約180cm、体格は大柄で白い装飾、神命門番(ゲートキーパー)か?しかし顔がハッキリ見えないが男だと思う。髪は短くて黒いがぼんやりとしか見えない。・・・隣に誰かいる?あれは、ウチの制服、女子だ、髪は黒で短め・・・千里?千里だ!次の瞬間大柄な神命門番(ゲートキーパー)らしき人は後ろ手に隠していた槍のようなものを取り出し、千里に向かって突き出す。その瞬間俺は目が覚めた。・・・夢か?見慣れた文字が視界に入る。”神の書”のコピー。よかった、俺の部屋だ。変な夢のせいか俺は体中汗だくだった。にしても何であんな夢を見たのだろう?俺は立ち上がりベッドから降りる。時刻は午前六時、いつもの時間だ。顔を洗って歯を磨き、弁当を作るためにキッチンに立とうとした瞬間に右頬の傷が急に痛みだした。「ク、ックソ」右手で頬を押さえながら悶える。これは昨日使者(アポストロフ)にやられた傷であり、すぐに治るようなものだと甘く見ていた。傷の痛みは引かずに目から液体があふれる。泣いているわけではないのに自然と涙が流れているのか、俺は痛みをこらえながら涙を拭う。

そして驚きのあまり一瞬痛みを忘れた。涙などではない。血だ。俺の目から流れていたものは赤い液体、そう血液が目から流れていたのだった。今朝見た謎の悪夢、急な傷の痛み、目から流れ出る血、俺は痛みに苦しみながら必死で蝮の女(エキドナ)を掴む。小さい時に爺さんによく言われた「この蝮の女(エキドナ)は持ち主をあらゆる害から守ってくれる」この言葉を信じてみる。頼む、治ってくれ。すると不思議なことに痛みは治まり、目から流れ出ていた血も止まった。はぁ、助かった。やはりこの蝮の女(エキドナ)には俺の知らない力があるのだろう。とりあえず今はあまり時間がないので急いで朝の支度を済ませる。よし、最後に朝食であるトマトジュースを一杯飲んで「行ってきます。」俺は学校へ向かった。

 「おはよう黒神、今日は結構遅いじゃねーか、まさかもう気が緩んでんじゃねーだろうな?」朝から一之瀬が絡んでくる。「そんなんじゃねーよ。」今朝のことはまだよくわかっていないので簡単に話すわけにはいかない。そもそもホームルームまでまだ十五分はある。別に遅いわけじゃない。

「そんなことより~今日来るプロの講師ってきれいな女の人かなぁ~」と、一之瀬は俺にとってどうでもいいことを言いだす。「別にきれいな人だったとしてもお前に個人レッスンするために来るんじゃないからあんまり関係ないんじゃないか?」

「お前それでも健全な男子か?普通、講師がきれいな人だったら喜ぶもんだろうが。」

俺にとってはどうでもいい、ただ暇だったからくだらん会話に付き合ってやったまでだ。そんなくだらない会話をしていたら我らが担任水無月彩閖(みなづきさゆり)が教室に入ってくる。しかしどう見ても小学生にしか見えない。

「彩閖ちゃん、おはようございます。まだ早いのに何かあったんですか?」

「何を言うか、今日はプロの神命門番(ゲートキーパー)が来て実習があるだろう、そのための準備だ。あとその呼び方はよせ莫迦者、私はお前たちの教師だ。」そう言って俺の頭を持っていた書類の束でコツンと叩く。

「イッテテ、わかりました水無月先生、そういえば気になっていたんですがプロの神命門番(ゲートキーパー)っていうけど先生たちはプロじゃないんですか?」俺は気になっていた疑問を尋ねてみる。

「私たち教師もプロといわれればプロなのだがそうじゃない、学校を卒業後、更なる実戦訓練を受け、各チームに所属して使者(アポストロフ)の討伐をしている人、今日来る人はそんな人だ。私たちと比べて実戦経験が比べ物にならん。もっとも学院長に限っては話が別だがな。」

なるほど、ようするに頭脳派か実戦派かで別れるというだけの話か。と俺は一人で納得していると俺と一之瀬の目の前にそれぞれ書類の束が置かれる。

「お前らどうせ暇なんだから手伝え。それぞれ一人一枚ずつになるように配っておいてくれ。」と言われて今まで黙っていた一之瀬が、

「先生、俺たち勉強してる最中なんですよ~。なので誰かほかの人に」

「暇だろ?頼んだ」

それだけ言って教室から出ていく。全く人使いの荒い小学せ、じゃなくて先生だ。

「黒神、俺トイレに行きたくなったから俺の分もお願いできるか?頼む!」一生のお願いでもするかのような強い思いのこもったお願いをしてくる。そんなにやりたくないのか。俺の答えは決まっている。

「俺たち二人に任された仕事だ。二人でやるぞ。」少し強めに言う。

「はいはいわかったよ。本当に人使いの荒い担任だよなぁ~。」などと文句を言いながらも渡された書類を整えながら一之瀬は配り始める。俺もそれに続いて配り始めた。まさか転校二日目で担任にこき使われるとは思ってもいなかった。配っている最中に次々生徒が登校してきて、全て配り終えるころには全員登校してきていた。それとほぼ同時に再び我らが担任彩閖ちゃんが姿を現す。

「おはよ~、お前ら全員そろってんな。相変わらず優秀だな。今日は一日プロの神命門番(ゲートキーパー)に特別講師として来てもらっている。じゃあ早速始めるからなぁ~。」それを合図にしていたのだろう、教室の戸が開きプロの講師が姿を現す。その姿を見て俺は愕然とした。いや、正しく言うなら俺だけが愕然とした。大柄で白の装飾、短くて黒い髪、背中には大きな槍を備えている。

「本日皆様の特別講師として参りました聖ロンギヌスと言います。今日は一日よろしくお願いします。」そういってさわやかに笑って見せる。接しやすそうな好青年といった印象。だがコイツは・・・

すると聖ロンギヌスは座席表と照らし合わせながらこちらを見て

「えっと、黒神悠斗君かな?何かあったのかな?」と言ってきた。俺が理解できないでいると面倒くさそうな顔をしながら彩閖ちゃんが

「黒神ー、お前どんだけ怖い顔して講師のこと睨んでんだよ。自分よりいい男が来たからってふてくされてんじゃねーぞ。」という。そうか、そんなに怖い顔をしていたのか俺。彩閖ちゃんの言葉を聞いて俺は冷静になった。ありがとう彩閖ちゃん。クラスのみんなは笑っている。俺もそれに合わせてとりあえず笑う。聖ロンギヌス講師も笑っている。だが間違いない、この男は今朝の俺の夢に出てきて千里に槍を突き出したアイツだ。しかし現実で何かしたわけでもなく確証があるわけでもない、が俺の心の声がコイツは危険だと言っている。警戒しておくに越したことはないだろう。そうこう考えているとどうやら時間のようで

「では後のことはお任せします聖ロンギヌス氏。んじゃーみんな、がんばれよ~」彩閖ちゃんが出ていく。

「ではまずは、基本的な戦闘訓練から入っていきたいと思いますので体育館へ移動しましょう。」言われてみんなは移動を始める。俺はすぐに千里を探した。どうやら千里は佐倉と一緒のようだ。俺は一人で安心していると

「よーし黒神、俺たちも早く行こうぜ。」一之瀬が後ろから俺の肩に腕をかけてくる。こういう時はコイツの明るさが心地いい。

「あぁ」そういって歩き出す。

今になって思う。なぜあんな夢を見たのだろうか。あんな夢さえ見なければ今頃もっと気楽にしていただろうに。俺は使者(アポストロフ)にやられた傷を触りながら考える。しかし、この傷の急な痛みと今朝の夢、言葉にできない何かを感じる。だが俺は今朝の夢を信じる。そう決意して俺は体育館へ向かった。



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