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第四節 ~もう一つの呼び名~

 ワアァァァァ、すげー、ありがとー、あいつ何者だ、強ぇー。大歓声と温かい視線が俺を迎えてくれた。

みんなの前で使者(アポストロフ)を倒したのだ。転校初日からいきなり目立ってしまってもおかしくはない。しかし、大歓声の中、俺は自分の中の負の感情に押し負けてしまい、急にしゃがみ込み「・・・ダメだ、敵の攻撃を受けて、一撃で仕留めきれず、魔法まで使って、あぁ・・・」と言う。始まった。俺、黒神悠斗は何かを引き金にネガティヴモードになってしまう。戦闘が終了するといつもこうなる。自分ではわかっているがなぜか激しい後悔が襲い掛かり、一定の間極端にネガティヴになるのだ。周囲の反応はもちろん「何あれ?」「急にどうしたんだ?」「うつなのか?」「何?なんか怖いんだけど」こうなってしまった。いつもなら幼馴染の秋堂梨華(あきどうりんか)がフォローしてくれていた。

「悠ちゃん。悠ちゃんはすごかったよ、みんなもちゃんと分かってくれているから。ほら、立って。」そうして手を差し伸べてくれる。そう、こんな風に・・・え?俺は自分の目を疑いもう一度目の前の人物を見た。

オレンジに染まったサラサラヘア、赤いカチューシャに碧い瞳。間違いない彼女はそう「梨・・・華?」俺は確認するかのようにゆっくり名前を呼ぶ。「うん、私も今日からこの守護者の学院サンクティエールがくいんに転入することになったんだ。だからこれからも悠ちゃんと一緒にいられるよ。」驚いたが、正直嬉しかった。普段の俺ならともかく、ネガティヴモードの俺になってしまうと周りとどう接すればいいのか分からない。けど梨華が居てくれれば上手くフォローしてくれるし、俺の心も少しは安心する。俺はそんな幼馴染の手を取る。「ありがとう梨華。これからもよろしく頼む。」

「私の方こそ、これからも一緒に頑張ろうね。」

梨華にそう言われて、気が付けばいつもの俺に戻っていた。それを待っていたかのように「いやぁ~お見事。流石は”黒剣の使い手”」と学院長が話し始める。「いま君以外の生徒はみな武器を所持していなかった。君のおかげでけが人が出なくて済んだ。本当に感謝しているよ。ありがとう。”救済不能の神命門番きゅうさいふのうのゲートキーパー”」それを聞いた生徒たちは「救済不能ってやっぱ心理的な意味で?」「やっぱりうつなのか?」「何かと危なそうなやつだな」なんていう反応を見せる。学院長、余計なあだ名つけやがって。けれど余計なあだ名をつけた当の本人は全く悪びれた様子もなく「けどあの短時間で使者(アポストロフ)を倒したんだ、実力は認めよう。よって君にゲートランク”X”を与える」そう学院長が言い終えたとたんにまたもや生徒たちは「すげぇー」「いきなりゲートランクXかよ!」「あのうつ病やるな」さっきまでとは一転して驚いている。忙しい連中だ全く。あとうつ病じゃない!!ワァーっと騒ぐ生徒たちを一蹴するように学院長は「ではこれにて始業式を終わります」と言って一礼する。みんなも急いで姿勢を正し頭を下げる。そんな感じで無理矢理閉じられた感のある始業式が終わったとき学院長が俺の方を見て小さな笑みを浮かべたのを俺は見逃さなかった。生徒たちはみんな体育館から出て自分の教室へと向かう。俺も出ようとしたところで「じゃあね悠ちゃん。私悠ちゃんみたいに優秀じゃないから2組なんだ。また後でね。」と言ってきた。そうか、それはちょっと残念だが「あぁ、また後でな」と言ってそれぞれ自分の教室へ向かう。にしても鮮烈デビューになってしまったなぁなどと考えながら使者(アポストロフ)の鉤爪にやられた右頬をさすりながら歩く。この時はまだ、この傷がどんなものなのか知る(よし)もなかった。



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