第三節 ~決着~
「はあぁぁぁぁぁっ」まずは敵の右腕を落とすため右肩めがけて一閃。使者の右腕は地面に落ち、大量の鮮血が宙を舞う。意外と簡単に切れる使者の体はまるではんぺんのような感触だった。決していいとは言えない不気味な手応えである。腕を落とされた使者は「ギィィェェェァァァァー」と吠えだした。すると突然コウモリの羽を広げて残った左腕の鉤爪をこちらに向けてものすごい速さで飛んできた。咄嗟に身構え防御の姿勢をとったものの使者のほうが速く、大きな鉤爪は俺の顔に向かって伸びてくる。俺は反射的に首を動かして鉤爪を掻い潜る。が、使者の鉤爪は俺の右頬をかすめた。咄嗟に後ろに下がり再び距離をとる。が、使者はそれを許さない。赤を不気味に輝かせた尾を勢いよく前へ突き出し再びこちらに飛んでくる。俺は体を右に半回転させて尾を避けてそのまま勢いに乗って使者の右翼から背中に向けて深く切り裂く。見事にコウモリの翼は切り落とされ、背中からは大量の鮮血が流れる。「ギィィェェェァァァァー」再びの咆哮。これで残るは左腕と左翼、赤い不気味な尾だけだ。俺はそのまま左足を素早く前へ踏み出し右に半回転して使者の背後をとり、回転の勢いで左翼、左腕を切り落とす。使者はバランスを崩しその場に倒れる。残っているのは尾だけなので大したことはない、俺はゆっくり歩み寄りとどめを刺すために使者の首に”蝮の女、”を突き立てる。ゆっくりと、が左腕が動かない。
・・・油断した。
気が付けば俺の左腕に不気味な赤い尾がしっかり巻き付いている。解こうとしてもすごい力で締め付けられていて解けない。”蝮の女、”は敵の首に突き立てているため放すわけにはいかない。ならば「天地に集う刃の誇り、無力、苦悶、決裂、不運、宵闇の焔消されんとする。」詠唱後、俺の体から黒炎が舞い左腕に絡みついていた使者の尾が焼け腕から離れる。これは俺が得意とする闇属性魔法の中でも初歩的な”宵の舞”という魔法の詠唱で、体に黒炎を纏い身体強化する魔法である。
”宵の舞”の黒炎に中てられた使者は黒炎に焼かれ動かなくなった。今のうちにとどめを刺す。俺は”蝮の女、”を両手に持ち直し肩の高さくらいで構える。「”宵の舞、十六夜斬り”」使者の首は黒炎と共に落ちていった。