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わがまま姫様と困った部下たち  作者: となえ
第一章
3/4

不思議の少年と困った部下たち

「どれだけ食べれば、気がすむんだ?」

 ひろった少年の名はシロウというらしい。なぜ、らしいというと、帝都にきた理由がものすごく怪しかったからだ。彼は料理修行の旅をしていて、帝都に立ち寄ったといったが、ソウヤには、彼がすべてのことを喋っているとは、思えなかった。

「シロウ君、今度、貴方の料理を食べさしてくださいね。」

「おう、受けた恩は絶対に返すぜ。」

 などって言って二人はのんきに会話してるし。て、言うか、俺のことは無視されてるし。

 話しを、無視するな。言いたかったが、この二人には、何を言ってもきっと無駄だろう。


(うん、なんだ、あいつら明らかに怪しいぞ。)


 ソウヤの目にあきらかに、怪しい黒いフードをかぶった二人組みが、どれぐらい、怪しいかというと、秘密組織のやつらが暗闇の中で黒いフードをかぶっていて顔を隠すぐらい怪しかった。二人組みが料亭の中に入ってくる。料亭の人々は、彼らが怪しすぎて、目線を合わせないようにしている。だが、ソウヤには、彼らが誰かわかった。ソウヤは、奇抜のファッションセンスを持つ人物を知っていたから。

「ミヤビにガレット、お前ら浮いているのが、わかっているのか?」

 二人はフードを脱ぐと、真っ赤に燃えるような赤毛の青年と無表情で髪が短く背が高く男装が似合う女性の姿が現れた。

「ミヤビ何かあったのか。」

 ソウヤは赤毛の青年に向かって聞く。それを聞くとミヤビと呼ばれた青年は、目にも留まらぬスピードでソウヤに詰め寄った。

「隊長、何があったではないです。かなり、大変です。というか、何でこんな、わからない場所にいるんですか。」

 ミヤビは、さらに詰め寄ってくる。

「それは、成り行きだ。それよりどうしたんだ?」

「至急、城に、戻れだ。隊長。」

 相変わらず無表情のまま、ガッレトは言う。キスできそうな距離にいるミヤビを引き離す。男とそんな距離にいたって楽しくない。気色悪いだけだ。これ以上、刺激するとさらに、近づいてきそうな勢いだ。

「わかった、すぐに戻るから離れろ。」

 俺は立ち上がると、座っているカグラを、抱き上げる。カグラは「きゃ」と少し驚いて声をあげる。

「カグラ様、すみません。少し我慢してもらえますか。」

「まあ、あらあら、いいですよ。」

 カグラは急に抱き上げたにもかかわらず、微笑んでいた。

「というわけだ。少年、俺たちは行くが。ここの勘定の事は気にするな。じゃあな。」

「また、今度ですね。」

と、カグラは手を振る。

 俺は料理亭から出ると、魔力を脚にこめる。

「姫、行きます。かなり揺れますので、しっかりつかまっていてください。」

「あらあら。」

 お姫様抱っこの状態で抱かれているカグラはソウヤに首に腕を巻きつける。

「ガレットにミヤビ、お前たちはついてこれるな?」

 可能だ、勿論です。と二人はそれぞれ返事を返す。

「遅れるなよ。風零壁」

 言い終えると同時にソウヤは、詠唱なしで呪文を発動させ。周りに風の防壁をはる。外からの圧力を防ぎ中の空気を一定に保つことができる。要するに、水の中に入っても普通に息もできるのだ。

 俺は、脚にこめた魔力を発動させる。発動させると一気に屋根に飛び乗り風以上のスピードで駆け抜けていく。

 王宮まで目と鼻の先に迫ったとき、上からの殺気を感じ、俺は後ろへ後退する。そして、さっきまで、ソウヤが進もうとして道に空から道に穴をあけ落ちてきた。まわりに砂埃が舞い上がる。ソウヤは、後からきた二人にカグラを預け、二人に先に行くように命じる。二人は、ソウヤを残して王宮へ向かった。

腰に下げた剣を抜き、砂埃の中の相手を見据えながら、かまえる。

「少年何のつもりだ?恩をあだで返すきか?」

 砂埃が晴れて姿を現したのは、巨大な包丁を持ったシロウだった。

「さっき、料理亭の人たちに聞いたんだ。あんた等、皇族とかかわりがあるんだってな。皇族の人間やかかわりがある人間を俺は許さない。というわけで、あんたの命もらうぜ。」

「皇帝陛下に何の恨みがあるか知らないが、皇家にあだなす者は、たとえ子供でも死んでもらう。」

「やれるもんならやってみな。」

 シロウが上から切りつけるように攻撃を仕掛けてくる。ソウヤは、受け止め、弾き返そうとするが、思ったより重く受け流すのが精一杯だった。ソウヤは手のひらに力をためる。

「風を我にあだなす、敵を切り刻め。風裂。」

 シロウに向かって何本もの鋭い風の刃が襲いかかかる。だが、シロウはそれを剣圧で押しつぶした。

「お兄さん、俺をやるには、もっと強い術じゃないと勝てないよ。」

「安心しろ。小手調べに過ぎない、気にするな。」

 ソウヤはかまえる。シロウも身構える。

二人は構えたまま動かない。二人の間に緊張が走る。

先に動いたのはソウヤだった。ソウヤは術を発動させる。


「風裂。」

「無駄だよ。」

 シロウは、さっきと同じように風の刃を打ち消す。ソウヤは、一瞬だけできた隙を見逃さずに、相手の懐に入りこむ、ソウヤには相手の首筋を捉えていた。

「終わりだ。」

 ソウヤはシロウの首筋に剣を突きつける。

「終わりは、お兄さんのほうだよ。」

 ソウヤは、飛びのく。ソウヤが立っていた場所から火が吹きだす。

「火炎陣か、しかも、時間差で発動させてくるか。」

「お兄さん、すごいなあ。この罠を抜けた人は初めてだ。」

「ふん、今までお前が、相手にしてきたのは、弱い奴等だっただろ。」

「そんなこと言ってると、痛い目にあうよ。」

 シロウが仕掛けってくる。また、激しい斬り合いの攻防が始まる。

(そろそろ、決着をつけないと剣がもたない。遊びすぎたか。)

 今、ソウヤが使っている剣は、一般用に出回っている剣だった。確かに人を切るようはできているが、所詮はお飾りの剣だった。それに比べ相手の武器は殺傷能力が高く、人を切るために在るような剣だった。

「お兄さん、ばてて来たんじゃないないの?力が落ちてきてるよ。そろそろ、終わりにしようよ。」

「そうしようか。」

 ソウヤは、笑いながら答え、剣に魔力をこめる。ソウヤは、相手の剣をはじくと。空高く飛び上がった。

「飛翔爆焔。」

 剣を一刀両断する形で振り下ろす。シロウは何かを悟ったのか、受け止めようとはせずに、後ろに下がる。剣は空振りし、地面に突き刺さると同時に地面が爆発しシロウにむかって、爆発で起こった炎と石に呑み込まれた。

 爆煙がひけた時、シロウの姿はなかった。しばらく、気配を探ってみるが、どこからも感じられず、剣を鞘に納めようとするが、剣は粉々に砕けていた。

「やっぱり、安物はだめだな。」

 無理やり、剣を鞘に納めながらソウヤはつぶやき、まわりを見渡すと、まわり中に大きな穴があいており、とても、人がはいてこられる状態じゃなかった。

(すこし、やりすぎたか。)

 少しどころの状況じゃなかったが、急いでいたことを思い出し、気にしないように、その場を後にした。

 後日談として、役所に苦情の意見が殺到したのは、いうまでもなかった。

         

「遅ればせながら。騎士団団長、ソウヤ・アルベルトただいま参上いたしました。」

 入れとの呼びかけともに、ソウヤは扉を開けると、そこには、宰相閣下を元とし、三師、4軍団の四天王と呼ばれる4人の将軍、そして、残りの3大勢力の各局長官達が、そこにはいた。

(これは、すこし問題ありそうですね・・・・)

「うむ、それでは始めようか。」

 三師の一人で皇帝陛下の意見役を務めるタウンゼット師がソウヤに座るように促し、会議を始める。

「今日、皆に集まってもらったの、帝国の危機がせまっているからじゃ。」

 各局の長官たちから、そんな事はありえないなどの意見が聞こえてくる。四天王の4人は平然と構えている。そこで、ソウヤは一同を代表する形で聞いた。

「それで、どういった、危機なのでしょうか。」

「それは、他の国々が同盟を組んで、帝国に反旗を翻そうとしているのです。」

 穏やかな声でファラ師が言う。ファラ師は宮廷をひいて、魔術学校の理事長をしていたはずだが、ここにきているということは、相当なことらしいな。ソウヤは思っていたら、

「なら、我が玄武東方方面軍が行って、反旗を翻す気も起こらないぐらい叩き潰してきますよ。」猪突猛進的なところがあるタクス将軍が名乗りを上げる。

「そう、短絡的に走るな。タクスよ。潰せばすむというものじゃないのだ。」

 タクスを諌めたのは、最後の三師、元紅龍聖騎士団団長を長いこと務めきた、グレンド師が言う。

「そうじゃ、他の国々が同盟を組んで、帝国と互角の争いができる戦力があるというのに、そこに、強大な力がかかわっているじゃ。」

「闇でうごめくものもありながら、帝国の内部でも、反乱を起こそうとするものがいるのです。」ファラ師が言う

「それに、リンスからの報告だと、神魔具の影もあるというのだ。」

 ソウヤは、話しを聞いていると、だんだん頭が痛くなってきた。というか、なんで、今までその事が出てこなかったのか怒りを覚える。

 神魔具とは、名前のとおり神の力と魔の力を有する力を持っており、槍・剣・杖・ロッ

ド・刀・短剣、斧、大鎌があり。神と魔の戦いのときに使われた伝説の武器である、力は

世界のすべてを破壊できる力持つといわれている。確認できるだけで、9本ある。内5本

は、帝国聖騎士団所属近衛隊が所持している。

「そこまでのことが、ありながら今までわからなかったのですか。」

「暗部なども、動いていたのじゃが、最近まで尻尾も出さなかったじゃ。」

「なら、伺いますが、どうして、今になってつかめたのですか?」

「余がリンスに探るように命じたのじゃが、その情報を最後にリンスとは連絡が取れなくなったのじゃ。」

 ソウヤの疑問に答えたのは、皇帝陛下だった。皇帝陛下が閣議室のドアあけてやってきた。周りには、彼の部下である、3人の近衛隊とここに姿を現していなかった、宮廷魔術師団師団長のレオナ・スノー師団長も一緒やってきた。

 全員が椅子からおり、床に膝をつく。

「陛下、剣聖であるリンス様が連絡をたったとは、どういうことですか。」

ソウヤはありえないと思いながら聞く。リンス・ガルフォード。剣聖と呼ばれるぐらい

強く、グレンド将軍の弟子で、帝国の先の大戦で、一人で、敵対する国の軍隊を壊滅させた。そして、今は少なくなった、種族の一つエルフ族と人間のハーフであり、帝国で唯一、精霊魔術をつかいこなせる人間なのだ。そんな彼女がいきなり消息を絶つとは思えない。

「言葉通り、連絡がとれないのです。これは、緊急事態です。」

 代わりに答えたのは、レオナ師団長だった。

「そこで、皇帝陛下直属部隊、近衛隊で、いえ、神魔具保持者のソウヤ殿、そして部下で保持者のガレット、スバル、ミヤビで、この任務当たってほしいのです。貴方達でなければ勤まらないでしょう。それにこれは・・・・。」

 各局長官からざわめきが起こる。無理もない。近衛隊は皇帝陛下の直属の部隊であると同時に、皇帝陛下をまもるための部隊でもある。皇帝を守りも薄くなる。それに、神魔具保持者の彼らは、一人で1軍団に匹敵する強さを持つ。そんな彼らを、帝国から離すというのだ。最強といわれる、4軍団と1聖騎士団あるのだが、人の心情としては、いてほしいだろう。

困ったレオナは、皇帝陛下を見る。

 皇帝陛下はうなずく。

「うむ、これは、勅命である。拒否は許されない。皆も、いかようにも邪魔することは許されない。邪魔するものは、余に、反逆するものとしてみなす。もう一度言う。これは、勅命である。」

「「「はっ」」」

 全員がひざまずき、頭をさげる。

 ソウヤは頭をあげ、

「謹んで、お受けします。」もう一度頭をさげる。

「そして、これは、危険な任務のため、特別に神魔具の使用を許可する。」

「皇帝陛下のみご心のままに。必ず果たしてみせます。」

 ソウヤはもう一度、頭をさげ、立ち上がる。そして、そのまま、後ろに向き部屋を後にした。部下である、スバル、ミヤビ、ガレットもあとにつづいて、部屋を後にする。

「彼らが行ってしまっては、皇帝陛下の護衛などはどうするのだね。」

 内務局長官から疑問があがる。

 レオナ師団長は少し微笑むと、

「ご心配なく、皇帝陛下の護衛は引き続き残った近衛隊と我ら宮廷魔術師団と四天王の皆さんでさしていただきます。間違っても変な気を起こさないようにしてくださいね。」

「では、騎士団団長の穴はどうするのだ。」

 負けじと内務局長官は食い下がる。

「僕では、不足でしょうか。」

 金髪碧眼で堀の深い顔立ちをした青年が部屋にはいってきた。

 皇帝陛下を除く皆は礼をする。

「皇帝陛下、三師殿達、それに、各局長官殿たちに軍部の皆さん、確かに、僕はソウヤ殿みたいに力はそんなに強くないですが、軍のことは、それなりに知ってるつもりです。やはり不足でしょうか。」

「イグス皇太子殿下、私達は、不足どころかとっても助かりますが・・・皇帝陛下のお言葉をきいてみない事には何もいえません。」

 イグスは祖父である皇帝と三師達の顔をみる。

「うむ、確かに今は帝国に危機が迫っているときだ、イグスよ、そなたの力は祖父として知っているつもりだ、弱音は許さないぞ。そなたに、紅龍聖騎士団の臨時特別騎士団長に任命いたす。」

「ありがとうございます。各局の長官殿よ、これで文句はないですね。」

 各局の長官達はしぶしぶうなずく。

「では、レオナ殿よろしくお願いするよ。」

イグスの微笑みは天使の微笑みあった。レオナはそれに少し見惚れていたが気を取り直す。他の官僚達もそれは同じことだった。

「私達は、連合軍が帝国に攻めてきています。対処に当たるためどうするかで進めて生きたいと思います。」







「ソウヤ殿、調査の結果、剣聖のリンス様と最後に連絡が取れなくなったのが、ローズウッド王国首都ユラウッドです。」

 髪は肩より少し長くみつ編みにしてある。女性がいう。

「て、ミヤビにガレットちゃんと聞いてください。」

 名前を呼ばれたミヤビは少し驚いておどけてる。

「相変わらず、綺麗だなとおもって、なあ、ガレット。」

 ミヤビは笑いながらガレットにふる。ガレットはガレットで無表情で答えた。

「綺麗なもの、素晴らしい。」

 彼女は、頭をおさえながら、言う。

「いいですか、私は、れっきとした男ですから、見惚れてもらっても困ります。」

 そう、彼女は彼だった。しかし、彼は、女の子と間違えるような容姿をしていた。

初めて彼を見る人は十中八九、女の子と間違えるぐらい、美人だった。

「スバル、とりあえず、話の方を進めてくれないか。」

「あっ、すみません。それで、暗部の者や、魔術師団で、使い魔を飛ばしてみたのですが、どちらも連絡が帰ってきません。人々の噂話によるユラウッドは魔物がはびこっているという、話も聞きます。」

「そうか、噂話といえ、ユラウッドはもう、魔物の棲家と化しているだろうな。」

「隊長、俺達だけだと、かなり厳しそうなんですけど。」

 いやそうな顔で言うミヤビ。

「しゃんとしろ、だから、陛下は神魔具を使う許可下さっただろうが。さっさと、出発できるように準備をしてこい」

 言いながら、ソウヤはミヤビの頭をはたく。

「隊長~痛いすっよ、本気でたたくことないでしょう。」

 すこし、涙目になりながらミヤビは、しぶしぶと立ち上がり、部屋をでていった。

「ガレットと、ミヤビを手伝ってやってくれ。」

「承知。」

 返事をすると影のごとく、部屋からいなくなった。

「スバル、君はこの状況をどうみる。」

 考え込むスバル。う~と難しい顔をして答えるスバル。

「とりあえず、負けるということはないでしょう。でも、リンス様と連絡が取れなくなっ

たということは、リンス様より強い強大な敵がいるということは間違いないでしょう。となると魔族が絡んでいると、私は考えます。」

「俺の考えも、ほぼ君と同じなんだが・・・・・・」

 ソウヤの言葉さえぎるようにトントンとドアをたたく音がした。ここは、紅龍聖騎士団団長の執務室である。たずねてくる人間はすくない。ソウヤは、誰だろうと不振に思いながら、入るようにうながす。

 入ってきた人物をみてソウヤは軽く驚いた。

「失礼するよ、ソウヤ。」

 入ってきたのは、イグス皇太子殿下だった。ソウヤ達は、立ち上がり礼をとる。

「話しがあるのだ、すこしいいかな?」

 ソウヤは、スバルに目顔で合図する。スバルはそれを受け部屋から退出する。

「どうしたですか、殿下がこんなところに来ていただけるなんて光栄の極みにございます。」

 イグスは、苦笑いをしながらがやってくる。

「やあ、ソウヤ。気持ち悪いからその、冗談はやめてくれないか。」

「殿下、冗談とは、ひどいでございます。」

 むっと、機嫌が悪くなるイグス。

「君と僕の仲だろう。いつまで、そんないぶいぶしい態度をとるんだったら、カグラに君の女性遍歴を、バラすよ。」

「何のことでしょう。」

 とぼけて、ながそうとする、ソウヤにイグスは続ける。

「昔、僕の家庭・・・ぐっ」

 突然、イグスは喋れなくなった。ソウヤはニコニコと喋れるものなら、喋ってみろといわんばかりに笑っていた。ソウヤに声を出すことを封じる魔術を使われたことを悟るイグス。

 イグスは、しばらく、解けとソウヤに言っていたが、声がでないものだから、ソウヤは涼しい顔でいる。イグスは仕方がなく、手をあげて降参の合図する。

「解。」

「やっと、声がだせる。声が出せないとは、つらいことだな。」

「イグス、よけい事を、言わなければいいだ。」

 ソウヤはイグスを椅子に座るように促し。自分も座る。

「で、なんのようだ。イグス、君もゆっくりはできないだろうが。わざわざ、出発の別れを言いにきたのではあるまいし。」

 冗談めかすソウヤだったが、イグスの顔つきが真剣な顔つきになる。

「ソウヤ、君に頼みたいことがある。」

「できることならするが。どんなことだ?」

「カグラを、君たちと一緒につれていってくれないか。」

「なに、わかっているのか、どれほど危険なのか。」

 鋭い目つきでイグスを睨みつける。イグスは、ソウヤに負けじと睨み返すが、心の中は恐怖でいっぱいだった。ソウヤの気迫を肌で感じとる。体の弱いものなら、心臓も止まっているかもしれない。そんな中、イグスは話を続ける。

「わかっている。だが、ソウヤ、君たちから、離れるほうがもっと危険になるんだ。わかってくれないか。」

 ソウヤは、皇帝陛下もカグラを守ってくれるよう言っていたこと思い出す。

「一つ、聞くが、カグラの命を狙っているものがいるのか?」

 静かにうなずくイグス。

「俺の部下たちじゃどうにもならないの?」

「ああ、たぶん、どうにもならんだろう。」

「何者だ?人間なのか?」

「わからないのだ。ただ、わかるのは、運命が味方をしてないということぐらいかな。だから、もっとも、信用できるソウヤ、君に頼むんだ。」

「そこまで、いうんだから、よほどのことなのだろう。俺が命にかえても守るよ。」

 イグスにおもいっきり、手をつかまれた。

「ありがとう、頼むよ。それから、カグラに、光麗剣を渡しておいたから、問題はないはずだ。」

「光麗剣だと、五本の神魔具を帝国から帝国の防衛は大丈夫なのか?」

「心配するな、神魔具がなくてもなんとでもなる。軍と宮廷魔術師団は健在だし、私も、君の代わりに騎士団団長の任につくしな。帝国のほうは絶対に守ってみせる。だからと言うわけでないが、安心して行ってくれ。」

「裏で糸をひいている奴を引きずりだし、無駄な戦争が起きる前に止めてやるさ。」

「ぜひ、そうしてくれるとありがたいよ。」

 イグスを探す声が聞こえる。どうやら、イグスは会議から抜けだしたらしかった。

「それじゃ、私は行くよ。会議の途中なんだ。後は頼んだ。」

 イグスは笑いながらそれだけ言い残すと部屋をあとにした。

(強大な敵に、運命か、どっちも、俺は勝てるだろうか。どんなことをしてでも、帝国の敵は消し去るし、命を賭けてでもカグラも守ってみせるさ)

 ソウヤ椅子から立ち上がり、呪文を唱え始める。

「すべてを、打ち砕く伝説の力を持ちし大剣よ。我の召喚に答え、我が前に立ち塞がりし者を打ち砕け、竜斬剣。」

 光ともに現れたのは、180cmあるソウヤの身長と同等の長さと大きさを持つ大剣だった。ソウヤは剣を片手で持ち軽く一振りした。

 机と椅子が風圧に巻き込まれて、壁にぶつかり、使い物にならないぐらい砕けた。

「隊長、なんですか。今の大きい音は?」

 三人が飛び込んでやってきて、無残にも壊れた椅子などをみて唖然とする。

「いや、何でもないさ。それより、準備のほうはできたか?」

「あ・・・はい、できました。いつでも、出発できます。」

 部屋の光景をみて、唖然としてミヤビは、はっと我に返り答え。

「そうか、今から、任務を開始だ。」

「「「了解。」」」

 ミヤビとガレットは急げと部屋を出て行く。

「隊長、部屋の壊した家具、装飾などの金額は給料から引いておきますね。」

と言って出て行くスバル。

 少し落ち込むソウヤだった。 




「やれやれ、いかれましたね。陛下」

 グレンド師が寂しそうそうに言う。

 皇の執務室から、ソウヤ達一行の出発を見下ろし、見送る影があった。それは皇帝陛下と三師、宰相、イグス、レオナだった。

「彼が希望の光となるようにですか・・・・」

 窓の外を見ながらイグスが答える。

「いや、希望の光となってもらわなくては困る。なんせ、帝国はじまって以来の、初めての危機なんじゃからな。」

 と、タウンゼット師。

「グレンド先生も寂しそうですね。」

 イグスの問いにグレンドは戸惑いながら答える。

「殿下、わしが目をかけて育てた者は、殿下とソウヤしかいなくなりました。その、ソウヤもいなくなるのです。年のせいもありましょうが、寂しくなるものです。」

 感傷的な気分になりかたる、グレンド師。

「グレンド先生、まだ、彼らは、死ぬと決まったわけでもありません。これからなんです。今は彼らに賭けるしかないのです。生きて帰ってこないことには、帝国は滅んでしまうのですから。」

「そうだな。」

「彼らなら、何があろうと大丈夫ですよ。きっと。」

 ファラ師が言う。 

「そうです。ファラ先生が言うように、きっと希望の光を運んでくれます。」

 ファラ師を弁護するかのように、レオナが言った

「余も、信じて彼らを待とう。そして、余らは余らで、反乱の首謀者を見つけ出し、なんとして、帝国を守るのじゃ。」

 皇帝の言葉に皆がうなずいた。

「首謀者といえば、どこまで、つかんでおるのかな?レオナ君。」

「はい、今のところ、大貴族や官僚などを調べておりますが、奴らは尻尾さえも出さないのでつかみようがありません。申し訳ございません。私の力不足です。」

「いや、それだけ奴らが巧妙で強大だということだ。」

タウンゼット師がレオナの肩をたたきながら言う。

「軍部のほうでも、動いているが何にもでてきませんでした。」

 イグスもレオナを励ますように言う。

「そういえば、一つだけ変わった出来事がありましたね。」

 ファラ師の発言に皆の視線があつまる。

「なんですか、それは、いつ、どこでなんですか?」

 イグスはひとつでも、手がかりがほしいばかりに口調があらくなる。

 ファラ師達は、普段温和な王子が口調をあらたげるなんて、初めてみたので、驚く。

「帝国図書館で、ある本が盗まれたのです。なんでも、貴重な本だったらしいのですが、賊が夜に侵入したらしくなくなったらしいのです。」

「本・・・・・・そういえば、帝国図書館に、闇魔術に関する本が封印されていたのでなかったですか。」

「まっ、帝国最高部隊が行ったんだ何とかしてくれるじゃろ」

 イグスは呆気にとられたが、後は旅立った彼らと妹に任せるしかないのだった。

(すまんソウヤ、後は任せたぞ)























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