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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第六章 ~モブの出番が少ないです~
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モブ、笑われる

俺達が集まると大広間へ着くと同時に、さっきまで点いていた照明が消えた。


……! まさか、ここで仕掛けてきたか……!


俺達『蒼い烏』討伐部隊は無言で戦闘態勢に入ったが、その瞬間すぐに明かりが点いた。


「来るぞ!」


俺のかけ声に皆が気を引き締めたそのとき……


「ハッハッハ! いや~すまんすまん。少々お遊びが過ぎてしまった。てへぺろ♪」

「「「「「……」」」」」


あのクソ国王が六十すぎとは思えないほど軽やかに大広間に現れた。あまりにも俺達は緊張していた所為で、一瞬国王に攻撃するところだった。というか俺は攻撃したいのだがいいよね? 燃やしていいよね?


「クク……、ククク……!!」

「……っ。 ふふふっ……ふふふふふふ」


隣でヘイゲルとオルウェンが笑いをなぜかこらえていた。遠くではレギンも俺を見て、そっぽを向いていた。肩が揺れていることから明らかに俺を笑っていた。


「なんだよ、お前ら……。気持ち悪いぞ……」


俺の言葉にヘイゲル達は驚いたような顔をしてから、また笑った。


「コイツ……ッ。気付イテイナイ……ッ!」

「ダメですよヘイゲルさんっ。こういうのは教えちゃいけませんよ……っ。ふふふっ」


マジこいつらなんだよ……。気持ち悪いんだけど……。


「コイツ……ッ。「来るぞ」ッテ……っ!」

「ダ、ダメですって……! 笑いが止まらない……っ!」


ヘイゲルが漏らした言葉に、俺は怒りと恥ずかしさがこみ上げてきて顔を真っ赤にした。さっきから俺を見て笑っているのはそういうことだったらしい。


こいつら……! 潰す! 絶対殺す!


「エリク様、落ち着いてください」


ミレアが俺を抑えるために腕を恋人のように絡ませた。いつもの俺ならそのことに対して、注意するところだがそんなことより俺はこの二人+レギンを殺したい。レギンには炎がきかないので、切り刻んでやりたい。


「いや~、皆の様子を見たいがために少し遊ばせてもらったが、想像以上にいい反応をしてくれてうれしく思う」

「クククククッ!!」

「いい反応……っ!」


黙れ、クソ国王! テメェ、ぶっ殺す! 今すぐ殺してやらぁ! 覚悟しろ、この野郎!


俺が国王に殺気を向けたところで、さすがに止めるべきだと判断したヘイゲルとオルウェンは俺を二人がかりで止めた。それでも止まらない俺に、ついにオルウェンは【絶対障壁】を俺の体を包むように展開することで俺は動けなくなった。


「―――! ―――、―――! ―――!」

「声を塞ぎました。これで静かに会議をできます」

「ニシテモ、コイツ、ホントニバカダナ……ッ!」


ヘイゲルが俺をまた笑ったので、俺はどんどんヘイゲルを殺したくなってきた。


「オルウェン様、私もあの壁の中に入れてください」

「え……。それはちょっと……」

「入レタ方ガコイツハ落チ着クノデハナイカ?」

「それもそうですね」

「ありがとうございます」

「―――! ―――、―――! ―――! ―――! ―――!」


俺はミレアの提案に実行される前に落ち着いた。そして必死に謝っていたが、オルウェン達は気付いていない。


お願い! それだけはやめてください! 何でもしますから! オルウェン様!


俺の必死のアピールに気付かないオルウェンはまさにミレアと俺の障壁を繋げようとしたときだった。俺はオルウェンを睨んで思った。


ミレアを入れてみろ。テメェに地獄を見せてやる。さて、リーランになんて言おうかな~。そうだ、オルウェンがカタリヌを口説きおとしたことにして、あとは……


そこで、オルウェンの【危険察知】が反応した。オルウェンは顔を真っ青にすると俺を解放した。


「さて、余興はここまでにして、本題に入ろうか」


全部テメェの所為だよ、と思ったがさすがにもう国王を攻撃する気はなかった。


「今回の祭り、間違いなく『蒼い烏』が動き出すであろう」

「国王様、どうして祭りを開催したのですか? 開催するにしても、どうしてもっと早く私達に報告しないのですか」


レギンの言うことに、ここに集まった皆は頷いていた。言い忘れていた、では話にならない。即刻国王の座を降りるべきだ。


「私もそのつもりだったのだが、こちらでトラブルが起きたのだよ」

「トラブルとは?」


今回の件はただ事ではない。隠すということは俺達の信頼をなくすも同義である。

国王もそれを知っているようで隠す気はないようだ。


「実は『蒼い烏』から手紙が届いた」

「「「「「!!」」」」」

「その手紙の内容がこれだ」


フォンスレッド=バルゴ様

国王という立場がある以上お疲れのことだと思います。しかし、申し訳ございません。今回私達はあなたのご息女を誘拐いたしました。もう一度申しますが、申し訳ございません。これも私達の計画の一つですかので。返してほしければ、山を越えた国、門の前にいる商人の警護をしてください。警護終了後、その商人がすべて教えてくれますよ。そうそう、王国誕生祭の警護の会議はそれが終わるまでダメですよ。約束破ったら、あなたには幸せが訪れるでしょう。。


そう手紙に書かれている内容を見て、ジン達以外が驚いた。ジン達はどうやら知っていたようだ。


にしても、これの最後の部分。おかしいな、身に覚えがあるクエストにそっくりだぞ。いや、むしろそのクエストそのもののように思えるのだが。


「先日、そこにいるジン君達が秘密に行ったクエストで、昨日を救出した」


うん、間違いなくあれだわ。そっか~、俺が大変なときにジンも苦労してたんだな。お疲れ様です。


「わかりました。そういうことでしたらしょうがありません。いえ、噂では国王様がふざけていらっしゃるなどと言われていたので」

「それは、おぬし達にバレないように私が流したのだ」

「なるほど。それでは、早く会議を始めましょう。時間がもうありません。オルウェン」

「わかってます」


レギンに呼ばれるとオルウェンは皆の前に出てきて、自分の作戦を伝えた。


あいつ、話を聞きながら作戦立ててたのか……。いや~、そこだけは本当に感心するな。


そして、俺達は三日後の王国誕生祭に向けての準備を行っていくのだった。




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