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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第六章 ~モブの出番が少ないです~
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モブ達は再度無視する

王国誕生祭が残り三日と迫っていたので、大半の人々はその準備に取りかかっていた。そんな中、俺とオルウェン、そしてヘイゲルを加えた三人は午後になると城へ呼び出された。


「まぁ、さすがにあの国王も警備のために俺達を動かすよな」

「イヤ、ムシロ遅スギダロ。三日デ警備ヲ何トカシロトハイクラ何デモ無理ガアルダロ」

「ですが、その無理を私達は可能にしなければならないんですよ」


まったく……、無理というのは可能にするのができないから無理って言うんだよ? あの国王はいつも無理ばっか押し通そうとするんだ……。それを結局俺達が何とかするんだよな……。


「エリク様」


俺の横からミレアが話しかけてきた。後ろから話すな、という約束は守ってくれて嬉しいよ。それ以外の約束も守ってほしいです。


「……。って、なんで!? なんでここにミレアがいるんだよ!?」

「城への抜け道を知るのは、元メイドとして当然のことですよ」

「あっ、そうなの。って、だからそうじゃなくて!」

「エリク……、少し静かにしてください。ここは一応一国の主の城ですよ」


いや、お前、俺を注意しているけど今の発言もかなりきわどいぞ。その主に向かって一応って……。


「エリク様、大丈夫です。私の魔法が張らさっていますので」

「魔法? ミレアの魔法って【吸収】じゃないの?」


たしか、俺の知っている限りではミレアの魔法は【吸収】だったはず。それで、前に皆を癒やしたり、反対に俺に疲労を植え付けていたはず。


そういえば、あのとき性欲は与えられなかったな。なぜだ? 料理に媚薬効果を入れるようなミレアがそんなヘマをするとは思えないのだが……。


「戦闘の最中に性欲を持つ冒険者はいなかったからですよ。あのときは、思わず発狂しそうになりました。どちらかというと、それを吸収するために医療係をやったのですが」


皆、ありがとう! 戦闘の最中に性欲を持たないでくれてありがとう! いや、普通それが当たり前なんだけど、とにかくありがとう!


「ソレデ、二人デ盛リ上ガッテイルトコロ悪イガ、貴様ノ魔法ハ【吸収】ト聞イテイタガ、違ウノカ?」


おっと、そうだった。本来はそっちの話がメインだった。


「君はすぐにものを忘れてしまうからね」

「え、何? もしかしてお前も俺の心を読める的な?」

「今の顔だったら、誰でもわかりますよ」


俺ってそんなに顔に出やすいか? 自分の普段の顔は見れないからな~。


俺が自分の顔を気にしていると、ミレアは自分の魔法について話始めた。


「私の魔法は【吸収】だけではありませんよ。私のもう一つの魔法は【結界】です」


【結界】というのはそこまで珍しくない魔法だった。この魔法は自分から人によって違う距離までに不思議な加護的なものを張り、人を近寄らせなくする魔法だ。だが、その魔法がかけられているとわかってしまえば、誰でも通り抜けられるものでもある。


「ミレアが魔法を二つ持っていたことにも、驚きだがそれよりも、以外と普通の魔法だったことの方が驚きだな」

「……いえ、エリク。この人がその程度で終わるとは思えないのですが」

「?」


そんなことを言っても、オルウェンの【危険察知】のように、異常な能力を見せられるような魔法ではないはずだ。だが、どうやらオルウェンのその【危険察知】はどうやら何かを察知したようだ。


「私の結界はただの結界ではありません。私の結界に気付いたところで中には入れないのですから」

「……」


もう、それは理論を超えたと言っても過言じゃないぞ……。なんだよ、その結界、無敵じゃねぇか。もう、ミレアも『青い烏』討伐部隊に入ってもいいんじゃないか? むしろ、入れよ……。


「その時はエリク様に守られながら、エリク様の背中を堪能させていただきますね。そしていつかは……既成事実」


絶対入るな。入ったら俺が許さない。誰も許可を出すなよ。最後の方なんか既成事実とか言っちゃってたしよ……。


「さっきから、話がずれてきていますが、結局ミレアさんはここに何をしに来たんですか?」


オルウェンが言っているのはミレアの目的だろう。いくら何でも俺に会うためだけに城の中に入ってくるとは思えない。何か俺達に報告したいことがあるのだろう。そういえば、さっきからヘイゲルが喋らないな。


「私がここに来た理由ですか?」

「ソノ疑問系ハナンダ」


あっ、やっと喋った。まったく……、ときどき喋らないと忘れ去られるぞ、トカゲ野郎♪


「貴様! 覚悟シロ!」

「ど、どうしたんですか、いきなり!?」


ヘイゲルが俺に飛びかかろうとしているのを、オルウェンが必死に止めていた。


「貴様……! アトデ覚エテイロヨ……!」

「はぁ、どうせエリクがヘイゲルさんに対して禁句を言ったのでしょう? どうして、この状況でそんなことを考えるのですか……」

「いや~、ヘイゲルの影が薄いからさ~」

「余計ナオ世話ダ!」

「……話を続けてもいいですか?」


ミレアがそう言うと、さすがの俺も気を引き締めた。このトーンから察するに重大なことを言うに違いないと思ったからだ。


「私がここに来た理由はですね……」


俺達三人は息を飲んだ。


「ただ単にエリク様に会いたいからという理由以外ありませんよ」

「「「……」」」


それから俺達は前を向いて、ミレアを無視するように歩いた。ミレアは最近無視されることにでもハマっているのかよ……。



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