表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第一章 ~モブのお仕事~
9/149

モブの帰還

 ジンと金髪の娘がいなくなったあと、今更感を漂わせてアイシアのもとに向かった。



 すると、



「エリク、私王都の行くことにした!」



 アイシアが嬉しそうな表情を浮かべたのに対して、俺は暗い表情を浮かべて頷いた。



「……ああ、そう」

「? あんまり驚いてないのね?」

「……ああ、まぁ教会がこんな状況になってるからね。大体察しは付くよ」



 それらしいことでも言っとくか。



 教会の方を見ると、教会は巨大な木によって悲惨な状態になっていた。



 その木の一部として十字架のように張り付けにされた男五人。



 その木に縛られていた五人は、たまたま村にいる冒険者が王都まで運ぶということになった。



 ……言うまでもなく俺である。



 ねぇ、なんで俺の知らない場所で仕事を増やそうとするの?



 知らないうちに仕事を減らしたり、増やしたりするのは金輪際やめてもらえません?



 俺がこの場を見ていなかったらどうするつもりだったの?



 俺が森からまっすぐ帰る道を選んだらどうすんの?



「それで、ベクタ達を王都まで運ぶついでに、私も連れて行ってほしいの」

「まあ、それは構わないんだけど、一人で五人も運べないぞ」



 行きは馬車を借りたが、帰りは徒歩で帰る予定だった。



 この村には馬車はないって話だし、城下ギルドの奴らはもともと馬車でここを通ったときに、事件に遭遇したってことだったし。



「う~ん、どこかで馬車でも借りられないかな」



 というわけで村長に事情を話すと、馬を二体ほど借りることに成功した。



 あくまで借りただけなので、あとで返しに来ないと行けない。当然、それも俺。



「教会に忘れ物したとかないか?」

「特に持って行く物はないから大丈夫よ。おじいちゃんの形見はこのペンダントだけだから」



 首元からペンダントを見せると、大事なものであるかを証明するかのように両手で包む。



「んじゃ、行くとしますか」



 ……乗り手もいないので、これも俺がやることになった。



 俺は雑用か何かですかね?
















 王都に着くと、アイシアは孤児院の方にすぐに行きたい、ということで一度別れることにした。



 後で冒険者ギルドに顔を出す、とだけ言っていた。



 俺はというと、五人を憲兵につきだし、一応冒険者ギルドの方に顔を出すことにした。



「あっ! エリクさん!」



 しかし、ギルドに入る前に名前を呼ばれ、後ろを振り向くと、そこには深く帽子をかぶった女性が立っていた。



 目立たないような服を着ているが、俺にはわかる。



 シルヴィだ。



 声でわかった。



「どうしてそんな格好を?」



 そう聞くと、シルヴィは少し顔を赤くした。今日が少し暑いからだろう。



「え、えっと……、自分で言うのもなんですが、私服で歩くと皆から見られてしまって……」

「ああ、なるほど」



 あまり知られていないが、シルヴィは人見知りで、人に見られるのがあまり得意ではないのだ。



 ギルドで働いているときは、かなり頑張っているそうで、シフトを朝に入れてもらって、できるだけ人が多く来る時間を避けているのだという。



 まぁ、でも。冒険者達はシルヴィに会うために、早く来ているようなので、あまりそうした意味がないらしいが。



「すいません、エリクさん」



 シルヴィが突然申し訳なさそうな顔をしてそう言った。



「え? 何が? 俺、何かされたっけ?」

「クエスト終わっていたみたいで」



 あぁ、それのこと。それはシルヴィではなく、城下ギルドのせいにしたから大丈夫だ。気にするな。



 ……まったく。シルヴィにも迷惑かけやがって。



 シルヴィもこれから大変なんだからな。



 ジンが知らないうちに二人もヒロインを作ったおかげで、競争相手が増えたんだからな。



 本当は俺に構ってる場合じゃないんだからな。



 そう言うと、なんか俺も悪い気がしてきた。



「エリクさんが村に向かって、少ししてから連絡が来て。それでここにいれば、エリクさんが来るかなと……」

「ん? それってもしかして昨日も?」

「はい」



 マジか。ますます悪いことをした気分だ。



「う~ん、ならお詫びと言ったらなんだけど……」



 その瞬間シルヴィがこれ以上なく期待の目を輝かせた。



「そ、それならっ!」

「エリク――――!!」



 シルヴィがその先を言う前に声が聞こえた。



 声がした方を見ると、アイシアが手を振って駆け寄ってきた。



 ありゃ、思った以上に早すぎる。



 顔出しはもう済んだのだろうか。



「孤児院の方はもういいのか?」

「うん。明日から来てって言われた」



 そう言うと、アイシアはシルヴィに気付き、シルヴィを見ながら俺に尋ねた。



「エリク、その人は?」

「わ、私も少し気になります」



 ……こういうとき俺はなんて言えばいいのだろうか。



 お互いにライバル関係です、なんて言ったら、この場で修羅場が起きそうだ。



 それだけは勘弁。



 俺は修羅場に巻き込まれたくない。



 かといって嘘をついたところですぐにバレてしまう。



 ここはライバル関係であることを隠しつつ、正直に言っておくか。



「えっと、彼女はアイシアで、【エレスタ】でお世話になった人だ。それで俺のいない場所で、ジンに助けてもらったんだが、そのときアイシアの家でもあった教会が壊れてしまってだな――」

「エリクと一緒に寝ました」

「なっ!?」



 いきなり何言ってんの!? 今、教会が壊れた、っていう話で、それ関係ないよね!?



「関係ない話はやめてくれ」

「大事な話です!」

「お、おう。なんか……ごめん。シルヴィ」

「……ふ~ん、あんたがシルヴィか」



 アイシアはシルヴィの様子から何かを感じ取ったようだ。



 シルヴィという名は俺が言ったが、たぶんジンから何か聞いたのだろう。



 シルヴィを助けたこととか。



 つまり、ジンのライバル相手がどのような人物であるか、今認識したのだろう。



「屋根の下……。二人きりで……エリクさんが」



 ってあれ? 俺の評価下がってね?



 ハッ、まただよ! いつもこうなるんだもんなぁ!



 何で俺がアイツ(睡眠妨害野郎)のために、自分の評価を下げなきゃいけないんだ!



 俺が常人だったら、とっくに狂ってるところだよ!



「ま、とにかく、私負ける気はないから」

「わ、私もです!!」



 ……うん、まあ、もういいや。



 とにかく俺を巻き込まないようにしてくれればそれでいいです。



 そんな願いはきっと届かないだろうなぁ、なんて思いながら……。




2018/02/22 改稿

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ