モブの危険行為
とりあえず俺達はシルヴィの家で夕飯を食べることにし、今はそれまでの暇つぶしをどうするかという『暇つぶし対策会議』を行っていた。
「やはりここはクエストにでも行くか」
「それより私達三人でシルヴィさんのために食材を狩ってくるというのはどうでしょうか?」
「狩リカ……。少シ嫌ナ記憶ヲ思イ出スナ……」
オルウェンは何のことかわからない顔をしたが、俺達は前に欲張ってドラゴンに襲われたことがある。どうもあれを思い出すと狩りに行くのがためらわれる。
「……といっても他にすることもないし、それでいいんじゃないか?」
ということで俺達は前と同じ場所に行って、狩りをしに行くことになった。
着いて早々俺はオルウェンに確認として尋ねた。
「オルウェン、ここにドラゴンが来るとかはないよな?」
「? ええ、まぁ。ドラゴンが来るのですか、ここは?」
「マアナ」
オルウェンの【危険察知】が反応しなかったということはおそらく問題ないだろう。というわけで俺達は早速狩りを始めることにした。
「それより、ここにはいい食材があるのですか?」
オルウェンはここの森に入るのは初めてらしい。といっても俺達もあまりこの森についてはよく知らない。わかっていることといえば……
「この森にはなんと【ホーンラビット】がいる!」
「貴様ハ本当ニソレガ好キダナ……」
当たり前だろ? あれは一度は食わないと損するくらいだ。俺なんかあれを日々探しては狩ろうとしているぞ。最近はそんな暇がなくて困っているが……
「【ホーンラビット】ですか……」
「? 何カアッタノカ?」
俺達が訝しげな目線を送るとオルウェンは遠い目をした。その様子で俺は大体のことが予想できた。
「まさか……、リーランの料理の中にそれを使ったものがあったのか?」
だとしたら、俺はリーランを許さねぇ。【ホーンラビット】をバカにする奴はたとえレギンであっても殺してやる。マジ【ホーンラビット】は神だ。そういえば最近ソルド教の奴を見ねぇな……。死んだかな?
「あのときの味は忘れません。あれ以降美味しい料理は出てこなかったので……」
「それならよかった」
「何が!?」
リーランが【ホーンラビット】をきちんと調理してくれたのなら俺は感無量でございますね。そしていつか俺は【ホーンラビット】の調理に関しては誰よりも上手くなってやる。
「コイツハ【ホーンラビット】ノコトニ関シテハ面倒クサイ奴ナノダ。ドウセ今モリーランヘノ好感度ヲ上ゲタノダロウ」
どうして俺の心の中がわかるんだよ……。ハッ! まさか【ホーンラビット】様が俺達の心を繋げたのか! さすがでございます【ホーンラビット】様!
「コンナ奴ナゾサッサト置イテイッテ何デモイイカラ何カ食材ヲ見ツケルゾ」
「そうですね」
そう言って二人は森の中に入っていき俺は気がつくと二人とはぐれていた。
まったく……、あいつらは本当にダメな奴らだな……。
俺は食材を探すと同時にオルウェン達も探していた。かれこれ一時間ほど探していたが見つからなかった。
う~ん……、やはりやみくもに探しても見つからないか……。……お! いいことを思いついたぞ! やはり俺は頭がいい!
俺は右手を真上に上げると手を中心に炎の竜巻を起こした。そこで……
「貴様ハ何ヤッテンダーーーーーー!!」
「……え?」
ヘイゲルとオルウェンが血相を変えて走ってきた。オルウェンは手を俺の方に向けると俺の手の周りに【絶対障壁】が発生した。
「って、あっつーーーーー!! 熱い熱い熱い熱い!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」
俺の右手があり得ないほど発熱し、俺は自分の魔法を解き二人に叫んだ。
「何しやがんだテメェ!」
「ソレハ俺達ノ台詞ダ!!」
「君はバカですか!? 森で炎を出す人がいますか!?」
「……あっ」
「「『あっ』ジャネェンダヨ!!」」
どうやら二人は俺とはぐれた後、俺と同じく食材を探しながら俺を探していたらしい。そこでオルウェンの【危険察知】が俺の行動を察知したらしく、ここまで慌てて来たということだった。
「それと私達がはぐれたのではなく君がはぐれたのです!」
「……すいません」
俺は森の中で正座をさせられていた。今だったら今朝のアイシアの気持ちがわかるかもしれない。
「マッタク……、タダデサエ今日ハ調子ガ悪イトイウノニ……」
そう言うとヘイゲルは腹を手でさすった。今回は全面的に俺が悪いそうだ。
「どうして、自分が悪いということが気に入らないと言いたそうな顔をしているのですか? 事実でしょう?」
「はい、すいませんでした……」
オルウェンが超怖いです。ミレアがガチギレしたときぐらい怖いです。逆に言えばミレアはそれぐらい怖いです。誰か助けてください。
「貴様~~~、反省シテイナイナ!!」
「す、すいません! 許してください!」
これ以上この二人を敵に回さない方がいいと感じ取った俺はものすごい速さで土下座をした。二人はそれを見た後ため息をついた。
「はぁ、とにかくもう帰りましょう」
「え? でも、食材は……」
もはやそんな体力もないのだろうかと思ったときヘイゲルが何かを背負った。
「【ホーンラビット】。貴様が言うには美味いのだろう?」
「……!」
どうやら二人は【ホーンラビット】を狩っていたらしい。四体ほど調達していたらしい。
「……本当にすいませんでした」
俺が心からそう言うと二人は互いに笑みをこぼした。




