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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第五章 ~モブの危機~
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次の料理人は……

「あの~……、大丈夫ですか、皆さん?」


昨日から一夜、俺達はいつものようにギルドに集まっていた。そんな中三人ほどいつもの調子を取り戻せていない人達がいた。その三人の体調をシルヴィは心配していたが、その三人はそれどころではない。


「き、昨日の記憶が途中からなくなっているのですがどういうことですか……。確かに私は唐揚げを食べたはず……」

「身体ノ調子ガオカシイ……。重イ感ジガスルノダガ……」

「重いぐらいだろ……? 俺なんか朝動けなかったぞ……。初めてミレアに感謝しちまった……。もう死にたい……」


俺達三人は顔が真っ青どころか死んだように真っ白になっていた。ヘイゲルの顔なんてもはや魔物以上に怖い顔をしている。最近仲良くなっているリンがヘイゲルを避けているぐらいだ。


ミレアが俺の心配をしに来てなかったら俺は今頃ベットから降りることができなかった。というかどうやら昨日俺の家まで運んだのはミレアだったらしい。その間に何かされたとしても俺は文句が言えないのが嫌なところだ。


「大丈夫です。エリク様の体内から尋常ではない臭気を発していたので、接吻することはさすがの私でもできませんでした」


……素直に喜べないのはなぜだろうか。助かったのはよかったが、そもそもあんな料理さえ食べなかったらこんな目に遭うこともなかったのに……。


料理のことを思い出すとまた具合が悪くなってきたので俺はすぐにトイレへと駆け込んだ。口から何も出ないのがさらに気持ち悪い。


ちなみに俺が今動けるのはシルヴィのおかげだった。シルヴィの【調合】で作った薬は本当によく効く。現在の苦しみなんか起きたときの十分の一ぐらいだ。つまり起きたときの苦しみはこの十倍はあったわけだが。


「う、うえぇ……。とにかく……リン達が……おうぇっ……。無事で……よかっ……た……おうぇ」

「なかなか苦しそうですね、エリク様」


なんでここにいるのかと本来は言うところなのであるが、今の俺にそんなことに割く余裕はなかった。俺がミレアの方に手を向けると俺の手に冷たい円柱のようなものを感じた。見なくてもわかる、水である。


「ゴク……ゴク……お~うぇ!!」


飲んだ水を吐き出すことで少しだが楽になった。はき出すことがこんなにも気持ちいいと思ったのはこれが初めてである。


それから俺達は皆のところに戻ると、アイシアが正座させられていた。どうもさっきから正座されていたらしいが、俺達はそれどころではなく気付いていなかった。


「エリクさん、これさっきの薬です。ご飯を食べる前にお飲みください」

「しばらく料理自体にトラウマを覚えて、食べられないかもしれないけどな」


その言葉にオルウェン達は大きく頷いていた。


……どうして俺の周りには変人しかいないのだろうか。唯一まともなのがシルヴィとリンしかいないではないか……。


「私も変人ですか? おかしいですね……」

「おかしいのはお前の頭だ。それと朝からの分をまとめて言うがな、俺の心を読むな」


やっと俺本来の調子が出てきたところでアイシアに言った。


「アイシア……、俺はもうお前の料理は絶対に食わないと誓った。……いいか、リン。絶対に食べるなよ」

「……うん」

「そ、そんな!!」


何が『そんな!!』だよ……。ここまで被害を受けてまだ食べる奴はただのアホだろ。お前に料理は絶対に作らせない。


「オルウェン……、今日は私が何か美味しいもの作ってあげるから……」

「どうして追い討ちをかけるのですか……」


どうやらリーランの料理もマズイそうだ。今ならほとんどの料理が美味しく感じられるかもしれない。


「貴様、料理ガ得意ダロ。オ前ガ今日ハ作ッテクレ」


ヘイゲルが俺の肩を叩き言ってきたが、俺の体力はそこまで回復していない。ここはやはり誰かに作ってもらうしかないだろう。


「私が作ってあげましょう、エリク様」

「却下」

「ここは名誉挽回で……!」

「それならまず料理の名誉を返してください」


となると他に残っているのは一人しかいないか……。リンには悪いが今日は料理を教えるのは無理だ。


俺達三人はカウンターにいる女性を見た。俺はその女性の肩を両手で掴み言った。


「シルヴィ……、もう君しかいないんだ。君なしでは俺達は生きていくことはできない」

「は、はい////!!」


何か告白じみたことをしたような気がするが、『俺達』とつけていたから問題ないだろう。オルウェン達も最後の希望かと言うほど期待の眼差しで見つめていた。


「いいか、シルヴィ。俺達のために料理を作ってほしい。そのためにだったら俺は君のいいなりになってもかまわない」

「ふぇ!? ほ、ホントですか!?」

「ああ、本当だ」


俺の命が関わっているんだ。この際どうでもいい。なんだってしてやろう。ジンをオとすために全力を尽くしてやろう。カタリヌなんかにかまっている暇なんてないのだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ! それはさすがに……!」

「そうです、エリク様。考え直してください」

「オルウェン! 私が作ってあげるって……!」


あぁん? それなら……それなら……







「「「それならまずおソレナラマズオ前達(あなた達)()いを(イオ)()()(してください)!!」」」


俺達をこんな目に遭わせているのはお前達の所為だって言ってるだろ!



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