エルフ達の自己紹介
宴が続いていると他の冒険者達も続々と目が覚め、宴に参加していった。一番最後に来たジン達を見るとオルウェン達『蒼い烏』討伐部隊が自己紹介ということになった。
「それじゃ、まず私からだね。まぁ、最初にカタリヌさんに斬りかかっているから印象はかなり強いと思うけどね。改めて、私の名はキュルトス=オルウェン。魔法はもう何回か見ていると思うけど言っておくよ。私の魔法は【危険察知】と【絶対障壁】。実を言うともう一つ魔法を持っているんだけどそれは秘密ということで」
……あいつ、相変わらず話が長いんだよ。もっと短くできないのか……。
オルウェンの次はやけにテンションが高い女のエルフだった。
「それじゃ、次は私だね♪ 私はゼルフォム=ミリアーナ☆ 魔法は二つ持っているけど君たちには教えないよ♪ 信頼している相手にしか話さないと決めているからね!」
そう言うとそのエルフは酒を飲んで至福の時を味わっていた。どうやらあまり酔わないタイプらしい。
にしてもあのミリアーナって奴いかにも男ウケしそうなキャラだな……。あざといのがさらにウケそうな感じだ……。
「まったく……。ミリアーナはどうしてこんな能天気なのかしらね。えっと、私の名前はカルフェル=リーラン。まぁ、ほとんどの人はリーラって呼んでいるからそれでも構わないわ。魔法はとりあえず一個だけ教えるわ。その魔法は【分身】と言ったところね。はい次」
次は俺と気が合いそうなエルフだった。今だってだいぶ面倒くさそうな顔をしている。そいつは俺と目が合うとため息をついて前に出た。
「俺はトルステン=ベルンハルド。以上だ」
おぉ……、さすがだ……。これも自己紹介の一つだもんな。周りの奴らはいろいろ言っていたけど面倒くさがりやにとってこういうのは一番やりたくないことなんだよ……。なんでわかんないかな……。
「やれやれ……、ベルンは相変わらずの自己紹介だね……。それじゃ最後は僕の紹介といっちゃおうか! 僕はガウスト=ベルクシュトレーム。名前がとても長いから皆はベルクとかシュトレーとか呼んでいるよ。 魔法は【固態化】! 能力は光とか水とかを掴めるっていう能力だ!」
全員の自己紹介が終わるとまた俺達は宴を始めていた。俺達の自己紹介はしなくてもいいのかと思ったがこんなに人が多いわけだし、結局そのまま俺は酒を飲んでいた。
俺はあまり酒が強くない。酒を飲むと俺は泣き上戸であるらしく、愚痴って最後に泣くことになるらしい。はいそこ、もともと泣き虫だろとか言うなよ。泣くから。
俺は酔わないように少しずつ酒を飲んでいると、肩を誰かに叩かれた。俺が振り返るとそこにはリンとログニカがいた。
「あの……えりく……ちょっといい?」
俺はその言葉に頷き、二人の後をついて行った。二人が案内したのは朝の公園だった。
「えりく……ログニカがえりくにお礼を言いたいって……」
「あなたがリンを助けてくれたんでしょ? だから……ありがとう」
俺はその言葉に思わず笑ってしまった。
「な、何を……!」
ログニカは顔を真っ赤にして俺を睨みつけていたが、俺にそれは通じない。なぜならリンの方が破壊力が高いからだ。それにその睨みじゃ俺はビビらない。ミレアでいつも鍛えられているからな。
「俺は助けていない。リンを助けたのはジンっていう勇者っぽい奴だ。ほら、あそこにいる奴がジンだ。ってことで俺はもう行く」
「あっ、ちょっと!」
二人から遠ざかっているとエルフの五人が俺を向いていて、ミリアーナが手を振っていた。俺はあまり目立たないようにそこへ走った。
「エリク、ちょっといいかな?」
「いや、よくない。面倒くさい。もう疲れた」
「そうか、こっちだ」
こいつ……! 俺の許可を確認する意味ねぇじゃねぇか……!
俺達は皆から離れた場所に行くと、そこには先にカタリヌがいた。さすがにこのメンバーが揃うと何の話をしようとしているのかはわかる。間違いなく『蒼い烏』についてだろう。
「来てもらって申し訳ない。もうわかっていると思うが『蒼い烏』について聞きたいのだ。私は二年前Aランカーではなかったからな」
どうやらカタリヌがオルウェン達を集めたようだった。そういえばカタリヌが『蒼い烏』の標的に入っていなかったことを俺は思い出した。
「私も『蒼い烏』について知りたいんだ。どうやって彼らが監獄から抜け出したのかとかね……」
「う……、そ、それは……」
カタリヌが何か言いづらそうな顔をした。そこで俺がため息をついて『蒼い烏』について知っていることをすべて話した。具体的には監獄を抜けた方法、そして『蒼い烏』の標的のこと。
「……なるほど。つまり彼らは私達を狙ってくるわけだ」
「となると僕の相手は彼になるのか……」
「うわぁ……、なんでまたあいつと……。めんどくせぇ」
俺も同感だ。フランの奴まだ隠し球とか持っていそうだしな……。しかもそれを使う前に俺はもう死にかけたぞ……。俺もう勝てる気がしねぇよ……。
「一体『蒼い烏』とは何者なんだ?」
カタリヌが言葉に答えたのはオルウェンだった。
「彼らが犯罪者だってのは知っているよね?」
カタリヌは黙って頷く。
「彼らは簡単に言えば恐ろしく強い軍団ってこと。そうだね、二年前は全員がボロボロになってやっと勝てたぐらいだ」
「あのときは死を覚悟したわね……」
カタリヌはやっと相手の強さがわかってきたのだろう、話の続きを促し、もっと情報を集めようとした。相手の魔法やその能力など。
「悪いけどそれはあてにならないと思うよ。二年前のまんまでもないはずだし、下手に情報をいれて裏目に出るのが一番危ないからね」
オルウェンがそう言うとカタリヌは残念そうに肩を落とした。話が一通り終わると各自で帰った。帰り道カタリヌは俺に何かを言いたそうにしていたので、思い切ったわけでもなく普通に聞いた。
「どうしたんだよ? 怖じ気づいたのか?」
その言葉にカタリヌは焦ったように声を荒げた。
「結局今日はジンと話さなかったではないか!」
「……」
俺は黙って帰った。やはりカタリヌは面倒くさい……。




