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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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『ペンドラゴン』の最後

俺達は全員で『ペンドラゴン』へと襲いかかった。『ペンドラゴン』はまだ機能していて身体から光線を飛ばしていたが、ただ躱す程度のことならヘイゲルにもできた。


「アアアアアァァァァァーーーーーー!!」


突然中から声が響いた。その声は数十分前までは中から偉そうに話していた奴の声だった。


「たしか……ゲロボンドだったけ……?」

「いや、この声はヘッドバンドだな」

「あぁ! そうそう! それだ!」

「いや、違うから! ヴェルモンドよ!」


あれ、そんなかっこいい名前だったっけ? 戦っている内にそんな奴よりこいつの方が強かったしな……。ってあれ?


「こいつ……止まってないか?」

「今更だねエリク」

「貴様ハ相変ワラズ適当ダナ」


中のゲロ……ヴェルモンドが動力源だったのか、『ペンドラゴン』は完全に機能を失っていた。そうなるとこれはただのよくわからない素材の塊ということになる。


「ん~♪ 終わった終わった! さてと、これどうすんの?」


エルフの一人がそう言うと中から機械音が聞こえた。


「自己破壊まで残り三十秒」

「「「ッ!!」」」


な! ふざけんな! 残り三十秒だと!


ジン達が脱出するには残り何秒かかるのだろうか。それより俺達も十分に危険だった。巨大なものが爆発したときの衝撃は計り知れないからだ。俺達は各自慌てて逃げ出した。


「オルウェン!」

「ダメです! ジン達がいるでしょう!」

「……! クソッ!」


そんなとき後方から大きな音がした。振り返るとジンが中から穴を開けて出てきた。それを見たオルウェンはすぐに『ペンドラゴン』のまわりに障壁を張った。


「あっ! あいつ!」


障壁を張り終えた後、一人の男が『ペンドラゴン』の中で倒れているのが見えた。間違いなくあいつがヴェルモンドだろう。


「ヘイゲル!」

「……!」


爆発まで五秒を切っていた。ヘイゲルは俺の呼びかけの意味に気付いて、すぐに実行に移した。


「何を―――」


俺の視界はがらりと変わった。そして俺のところで大爆発が起きた。






























俺は気がつくと見知らぬ天井が見えた。


「―――!」


誰かが何かを言った。俺は顔を動かすこともできず、頭で何かを考えることもできなくなっていた。


――――――。


俺の顔に影が降りてきた。その影が何を言っているかわからなかった。それでもその影は一生懸命何かを叫んでいた。


「―――! ―――!」


―――? ―――を―――いる?


俺の頭はだんだん覚醒してきたが、頭の中は真っ白だった。すると今度はもう一つの影が来て俺の頭の上で何かを叫んでいた。


「―――リ―――! ―――リ―――!」


―――なんだ? ―――リ?


「―――リk―――!」


俺の頭はある程度回復してきた。そのおかげで相手が何を言っているのかがわかった。


……そう……か。これは……俺の……名前だ……。そう俺の名前はエ……


「ロリコン!」

「ふざっけんなぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」


俺はその言葉をはっきり聞いて飛び上がった。その瞬間目の前の奴と思い切りぶつかったがそれどころじゃなかった。


「テメェ! 殺すぞ! このトカゲ野郎!」

「ナンダト!? 貴様! セッカク人ガ心配シテヤッタトイウノニソノ扱イハナンダ!? 最低ダナ!!」

「どの口が言ってやがる! 頭が働いていない奴にロリコンと叫ぶ奴がどこにいる!? それとテメェは人じゃねぇ! 魔物だ! 人間であるための定義はほ乳類であることと……あと……あとは知らん!」

「えりく! よかった!」


ヘイゲルと喧嘩している最中にかわいらしい子どもの声が聞こえた。ヘイゲルの後ろにリンがいた。どうやら最初に呼びかけていたのはリンであったようだ。


「やっと起きましたか……」


ため息をつきながら来たのはオルウェンだった。


「君も無理をしましたね……」

「俺はこの中だったら一番火の耐性に強くできる。実際意識は失っても身体は失ってなかっただろ」

「それでも死ぬことは考えなかったんですか?」

「フッフッフ、俺は一度死亡フラグを折った奴だぜ。この程度で死ぬとは考えなかったな。まぁ、実際死にかけてたけど……」


その言葉にオルウェンはため息を再度ついて呆れた顔で笑った。


俺は周りを見ると俺の他に何人も気を失っている奴らがいた。たぶんあの光線の被害者だろう。というか、それ以上のケガをしたはずなのになんで俺が一番最初に目覚めてんだよ……。


「よっこいしょっと。意外と身体が動くことにビックリだよ」

「君の身体の回復が一番疲れました」


俺はそんな言葉を軽く無視しながら隣の部屋に行った。そこではジン達が眠っていた。俺は起こさないように外に出た。


外に出ると夕方になっており、里が赤く輝いていた。


「お! 目覚めるのが早いね! さすがオルウェンが目をつけた相手だな!」


エルフの一人がそう言うと他のエルフ達もこちらを向いた。そこでオルウェンが口を開いた。


「私が目をつけたのは違うことだったんだけどね……。まぁ、この戦いで君のしぶとさにも感服していたところだ」

「モブはなかなか死なないもんだ。まぁ、死ぬときは死ぬけどな……」


どうやら俺が目を覚めたことで皆の宴を一時的に止めてしまったらしい。皆は酒やらなにやら持っていたから宴で間違いないだろう。


「さてと、俺も宴に混ぜてくれ。それとリン」

「?」

「看病してくれてありがとうな」


俺はそう言ってリンの頭を撫でた。


「////」


そこである奴がまた邪魔してきた。


「ジンが目覚めた後私はなんと声をかければいいと思う?」


……知らねぇよ。とりあえずリンみたいに看病やらなにやらしろよ……。お前はまず行動することを知れ……。こいつとミレアを足して二、いや三で割ればちょうどいいと俺は思うのだがどう思いますか? ヘイゲルさん。


「? 何ダ?」

「チッ、使えない奴だな」

「ダカラ何ヲダ!?」



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