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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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モブの作戦

俺達は話しながら走り回っていた。ヴェルモンドは俺達の会話が聞こえていないようだったが、オルウェンがいる時点で何かあると思っているようで、光線を撃っていた。


ジン達が『ペンドラゴン』の中に突入するために、隙をつくらなければいけないが、まずどうやってあれを止めるかが問題だ。


「どれか一本の足を一時的に止めるのはどうでしょう?」


『ペンドラゴン』には一カ所だけ大きな穴が開いているところがあった。もともとの設計なのか、魔力が切れてきているのかはわからない。とにかくその穴からジン達が侵入する予定である。


「足を行動不能にして、何か意味があるのか?」


足は止めることができても、あの光線を放たれたらジン達はやられるはずだが、どうやらオルウェンはそう考えなかったらしい。 


「足がやられた時点で誰もが一瞬焦るものです。その焦りから生まれた隙を狙うのです」

「ソレジャ、アノ足ヲドウヤッテ止メル?」

「エリク、あなたの能力であの装甲をなんとかして溶かせませんか?」

「やろうと思えばできなくもないが、時間がかかりすぎる。却下だ」


あの装甲は耐熱性があるように思えた。十分くらい時間をかけて熱していけば溶けるだろうがその時間はない。


すると『ペンドラゴン』は大きく足を持ち上げた。光線で仕留められないと悟ったのだろう、さっきと同様に衝撃を飛ばそうとした。


「……! マズイ!」

「いえ、問題ありません!」


オルウェンはそう言うと手を『ペンドラゴン』へとかざした。すると衝撃が来る前に、『ペンドラゴン』の足下の周りに薄い緑の厚さ十五センチほどの透明な壁ができた。


『ペンドラゴン』の放った衝撃は何もなかったかのように壁にふさがれた。


これがオルウェンの魔法【絶対障壁】―――自分が選択したもの以外は通さない障壁を作り出す魔法。ちなみにオルウェンが選択しているものは光である。なぜなら光をふさいでしまうと、中の様子がわからないからだ。中が見えないと奇襲を受けるかもしれないからだ。


「すげぇ……!」


誰かがそう言っていたが、これもいつまでも続くわけではない。早く作戦を明確に決めないとこのままじゃじり貧である。


……さて、マジでどうしようか……。


「……あっ」

「どうやら何か思いついたんですね?」


俺の声にオルウェンは反応した。


「まあな。オルウェン、この魔法を利用させてもらうぞ」

「? 構いませんが、今からやるのでしょう?」

「まぁ、そうなんだけど、今はとにかく火の魔法を使える奴だけを呼んできてくれ。なんだって俺の作戦は―――」

「……なるほど。わかりました。それでいきましょう」


俺の考えた作戦がそのまま採用されオルウェンは叫んだ。


「火の魔法が使えるものは十秒後相手から見て右の前足を直に燃やしてください!」


オルウェンのしようとしていることは俺達以外誰もわからないようだが、それを相手の前で説明するバカはいない。


オルウェンの言葉から十秒後、俺を含めた火を使えるものは『ペンドラゴン』の足から火を出した。それに合わせてオルウェンはその足を囲うように障壁をつくった。すると時間がかかると予想されていたことが短時間で起こった。足が溶け出したのだ。


俺が考えた作戦はオルウェンの魔法の能力を利用している。あの障壁が今通さないようにしているのは、衝撃とである。つまり今あの中は灼熱のような熱さである。


すると、足の一本が溶けたことで身体のバランスが一瞬だけ崩れた。


「今だ! 行け! ジン!」


カタリヌの合図でジン達は飛び出した。


いや、お前何もしてないのになぜいかにもリーダー感出してんだよ……。


ジンは皆を抱えて何かを唱えると穴の中へ入っていった。


「チッ! うぜぇ奴らだ。抵抗しなかったら簡単に死ねるのによ。まぁ、いいか。とりあえず自動モードにでもしておくか……」


ヴェルモンドの声が響くと『ペンドラゴン』の動きが急激に変わった。『ペンドラゴン』の頭から何か飛び出してきた。それは俺やカタリヌに攻撃をした光線だった。上から大量に降ってきてそれは言うなれば『死の雨』だった。


「! オルウェン!」

「わかってます!」


俺の言葉を聞く前にオルウェンは宙に手をかざした。すると里を守るかのように障壁が現れた。


「違う! 光を通すな!」

「……!」


光線はあくまで光だ。今の障壁じゃ里を守れない。それに気付いたオルウェンはすぐさま光を通さないように設定した。間一髪のところで光線を防ぐことができた。


「マズイ! 上ダケジャナイゾ!」


俺とオルウェンが横を向くと突起から光が放出されていた。


「クソッ!」


俺とオルウェンはすぐさま避けた。オルウェンの【危険察知】は魔法を使っているときは発動しないのだ。


しかし、それでも『ペンドラゴン』の動きは止まらない。真正面にある大きな突起のなかで小さな光線が集まり、巨大な光を作り上げていた。


「オルウェン!」

「まだ、上からの攻撃が続いていて解除するわけにはいきません!」

「来ルゾ!」


ヘイゲルの言葉通りその巨大な光は俺達もろとも里を破壊するほどの光線を放ってきた。


……! やべっ……この威力は無理だ……!


俺が思ったその時、四人の姿が俺達の目に映った。するといきなり巨大な光線が上へと飛んでいった。


「なっ……!」

「何ガ起キタノダ……!」


俺とヘイゲルを含む冒険者達はその光景に驚いた。オルウェンは宙の障壁を解くとその四人を見て笑った。


「やっと来ましたか……。これからが私達の本気ですね」


その言葉に四人は振り返ってそれぞれ言った。


「何が本気よ。私がいないとあなたはホントに何もできないのね」

「と言って、一番焦ってたくせに……」

「なっ! ち、違うわよ! 別にオルウェンのことなんか……////」

「そこでオルウェンを出しちゃうところが可愛いよね」

「~~~~!!」

「は~、めんどくさっ。俺もう帰っていい?」

「アンタはもっとやる気出しなさいよ!」


四人はこの状況でやけに軽かった。それを見ながら俺は思わず言ってしまった。


「オルウェンも死ねばいいのに……」

「……君はつくづく最低だね」


うっせ。あのエルフ結構可愛いじゃねぇか。なんで俺の周りの男達はこうも美人ばっかり持っているのかな……。俺に対するあてつけか……?



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