モブの冒険者としての誇り
「すげぇ! この力があれば俺は無敵だ! 冒険者ども安心しな! 『蒼い烏』なんてこの力があれば余裕で潰せるぜ! その代わりに俺が世界の支配者になってやるよ! ヒャハハハハハハハ!!」
その声に動ける者がいなかった。たった一歩。それだけで人はゴミのように飛び、一瞬にして戦意が失われた。いや、そもそも戦意が備わる前に出鼻をくじかれたのだ。人々はただ、呆然とすることしかできなかった。
ふざけんなよ……! これで、これで……!
「さてと……、まずはこの里から潰してやるよ。光栄に思うんだな。最初の犠牲の町としてお前達は可哀想な目で見られるんだからな! 一回の攻撃がどのくらいか実験でもしようか!」
『ペンドラゴン』の中から声が聞こえると、『ペンドラゴン』の突起から細くて、短い光が飛び出した。
これで……冒険者とか名乗ってんじゃねぇよ! クソ野郎ども!
俺はその光の進む方向の間に入った。俺は直撃の瞬間に炎耐性の魔法を身体にかけ、光線の熱に備えた。
……ッ!!
俺はできる限りの防御をしたが、俺はその威力に耐えきれず、ものすごい速さで飛んでいき家を破壊した。
俺はそのあまりの威力に驚いたが、それより俺は怒りで痛みどころではなかった。
「……ガハッ! 何……やってんだよ……! このまま……何も……しなかったら……俺達……死ぬぞ……! 止める……しかねぇだろ……。いつまで……そうしてんだよ……!」
ふざけんじゃねぇよ……! 俺達は……冒険者だろうが……! 俺達が……何を……今更ビビってんだよ……! 死を……覚悟して……冒険者に……なったんだろうが……!
俺は何も動けなかった冒険者達に腹が立った。今までの俺を否定されたような気がしたのだ。俺はこれまで命を懸けてクエストや敵と戦ってきた。そのときの冒険者達には力がなかった、それはしょうがない。だが……今の奴らは行動をすることをやめていた。それは冒険をやめたと言っても過言ではない。俺はそれが許せない。
俺の言葉に冒険者達はハッとした。そのとき一人の年老いたエルフが出てきた。
「中にいるあやつを―――ヴェルモンドを倒せばきっと止まるはずじゃ。誰かがあの中に入ってくれれば……。あやつ自身も相当強いが、誰かおらんか?」
そう言われて、最初に動き出した三人がいた。ジンとミーシャとエルフ―――エルナだったはずだ、その三人が前に出てきた。
ったりめぇだ。ここでお前が動くのは絶対だっつうの……。
「俺達が行って、ヴェルモンドを倒してきます」
「おじいちゃん、私も行くよ」
ジンとエルナがそう言うと『ペンドラゴン』の中のヴェルモンドが若干イラついた声で言った。
「おいおい。一瞬でも俺のことを忘れてねぇか~!!」
『ペンドラゴン』の突起からまた光線が出て、それはジン達の方向に向かった。
そのとき俺は誰かが走ってくる音が聞こえた。
その足音の主はものすごい速さでその光線の前に出ると、何かの魔法だろう、ものすごい速さで光線を斬り刻んだ。その斬撃で光線を打ち消した。
「すまぬ! 遅くなった! そろそろで増援が来るはずだ!」
「カタリヌさん!」
その間に年老いたエルフは孫だと思われるエルナに言った。
「エルナよ、無理だけはするなよ」
「はい!」
そう言われてジン達は古代兵器に乗り込む準備した。そのときやっとヘイゲルも動き出した。
「カレン、貴様モ行ケ。アノ三人ダケジャ心配ダ。一人デモ多イ方ガイイダロウ」
「シ、シカシ……!」
ヘイゲルの言葉にカレンは戸惑っていた。ヘイゲル達だけにここを任せるわけにはいかないとでも思っているのだろう。そんなカレンにヘイゲルはリーダーとして命令した。
「サッサト行カンカ!」
「ハ、ハイッ!」
なんだよ……。ちゃんとできるじゃねぇか……。それにヘイゲルもしっかりギルマスやってんじゃねぇか……。
「大丈夫か?」
オルウェンも来て、俺はゆっくりと腰をあげた。
「くそっ。めちゃめちゃ痛ぇ。……だが、まだ戦えないほどでもない」
「それならいい。それとあの中に乗り込むといっても、ただ乗り込もうとすればただじゃ済まされないぞ」
「わかってるつうの……。つまり、ジン達四人が乗り込むとき一瞬だけ隙を作ればいいんだろ?」
「そうだ」
つまり、今回もいつも通りに俺達はモブをやればいいんだろう。 こういう役柄こそ俺の出番だろうが……!
オルウェンは作戦が決まると冒険者達に対して叫んだ。
「今から私達はジン君達の援護としてこの兵器の足止めを行う! この場で戦う意志のあるものだけ武器を挙げろ! 弱者はいらない! 今この場で言う弱者とは戦う意志のない者のことだ! どうする!?」
その言葉に逃げる者などいなかった。それは皆戦いたくて逃げなかったわけじゃない。むしろ逃げたいと思っていたはずだ。しかしオルウェンの言葉で逃げられなくなった。今ここで逃げた者はただの恥さらしとなるからだ。
相変わらずいやらしい脅迫だ……。
二年前もそんな空気にして誰一人逃げられない状態に陥れた。だが、そんななか自由に行動した人物が俺だった。それからだった。オルウェンが俺を興味深そうに見始めたのは。
一人が戦う覚悟をつけると、次々と諦めたように武器を挙げた。
「サスガダナ……。俺達モ負ケラレナイ……」
ヘイゲルの言葉に【リザードマン】達傭兵部隊も戦闘態勢に入った。俺はそれを確認して開戦の言葉を言った。
「……必ずこれを止めてやる」
それが俺の仕事だ。
プロローグの答えですがやはりわかりやすかったでしょうか?




