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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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リンとログニカと危険察知

なんだかんだで今日二話目いけました。

俺達は目の前の古代兵器をただ見ていた。そこで最初に口を開いたのは俺だった。


「……それで、この兵器を俺達にどうしろと? まさか今壊せとかいうわけじゃないだろ? そんなことをしたら俺達は多分反逆者扱いされると思うけど?」

「たぶんではなく、間違いなくそうなるでしょうね。だからそんなことは言いません。私が言えるのはただ一つ、気を引き締めてください。それだけでだいぶ変わりますから」


その言葉に俺とヘイゲルは笑った。しかし、心の中では笑いなどなく、覚悟を決めていた。この巨大なものと戦う覚悟を。


俺達はそれから宿に帰ると、だいぶ冒険者達が帰ってきていた。オルウェンは自分の家に帰ると言って俺達と別れた。俺とヘイゲルが部屋に戻ると、リンはぐっすり眠っていた。相当疲れていたんだろう。俺達が入ったことにも気付いていない様子だった。


「アノ兵器ハリンモ巻キ添エニスルノカ?」

「……そうだろうな。……だが、それだけは絶対に防ぐぞ」

「当タリ前ダ」


俺達はリンの寝顔を見ながら呟き、体力を養うために早く寝た。
















いつも通りの時間に目を覚ますとそこにはリンの姿はなかった。一瞬だけ焦ったがすぐリンは帰ってきた。どうやらトイレに行っていたようだった。

……はい、そこ。想像しない。切り刻むぞ。


「おはよう、リン」


リンは俺を見ると、少し考えてから俺に言った。


「……えりく、今からちょっと行きたいところがあるんだけどいい?」

「大丈夫だよ。その代わり俺も行っていいかな?」

「うん!」


リンは子どもらしい元気な返事をした。ヘイゲルはまだ寝ていたが、そっとしておいた。俺の優しさだ。だからヘイゲルの足をわざと蹴ったのも俺の優しさだ。






俺とリンは宿を出るとリンの行きたいところへ行った。リンが前を歩いて行くのを俺は後ろからついて行くだけだったが……。


にしてもあれだな。朝っぱらからシルヴィとアイシアの喧嘩がないとこんなにも幸せな気持ちになるなんて思ってもいなかった。え? ミレア? あいつは俺の不幸の塊だよ。


リンが来たかった場所は公園だった。まだ誰もいなかったが、リンは誰かを見ているようだった。多分昔の光景でも見ているのだろう。そんなとき、後ろから小さな気配がした。振り返るとそこにはリンと同じくらいの少女がいた。


その少女は俺を怖がっていたので、俺は遠くに離れることにした。


……俺ってそんな怖くないと思ってたんだけどな。いや、待て。そうか、ジンだったら怖くないけど俺はモブだ。見知らぬ奴が少女を見てたらそりゃ誰でも怖いよな。つうかなんでこの頃俺ロリコンでもおかしくないような行動ばっかりしているんだ? 俺としてはシルヴィくらいの一歳年下の方が……。なんかますます俺変態ぽいじゃねぇか……。


リンと少女はお互いの顔を見るとお互いに怯えていた。


「どうして……あんたがここにいるの?」

「ご、ごめんなさい……。最後にここだけ見たかったから……。もう来ないから……」


そう言ってリンは立ち去ろうとした。しかし少女はその手を掴んだ。


「ひっ! ごめんなさい! ごめんなさい!」


リンが怯えていたので俺は走って行こうとしたが、後ろから止められた。後ろを見るとオルウェンがいた。オルウェンは「黙って見ろ」と言うかのように二人を見つめた。


「何もしないから! ちょっと待って! お願い、リン! 待って……」

「……! ロ、ログニカ……?」


その少女こそがログニカだった。ログニカはリンを見て泣いていた。いじめているのがリンみたいに見えるくらいだ。


「私がリンにひどいことを言ったからリンはいなくなったんでしょ? 私がリンのこと友達じゃないって……。ごめんね……。ごめんね……、リン……」


俺とオルウェンは二人にしようということで、その場から離れていった。








「お前……いつからつけてきたんだよ……?」

「私の能力の【危険察知】。それを使えばこれぐらい簡単さ」


いやいやいやいや、それはおかしいでしょ!


「あれのどこに【危険察知】できる要素があるんだよ!」

「エリク……」

「な、なんだよ?」

「細かいことは気にしちゃいけないよ」

「細かくねぇよ!」


人の未来を察知しているような能力が定義を外れたら、細かいことに入るわけねぇだろ! 何言ってんだ!?


「貴様達、ここで何をしているんだ?」


そう呼ばれて、俺は走った・・・。なぜかはもう言わなくてもわかるだろう?


「おい! 貴様、どうして毎回逃げるんだ!」


そんなの決まってるだろ!


「ノリだよ!」

「なっ! ん? え、えぇ~~~~…………」







まぁ、軽くカタリヌと鬼ごっこしていると、ヘイゲルもやって来た。


「朝カラ走ッテ疲レナイカ?」

「全くです」

「フッフッフ、お前らわかってないなぁ。ミレアに追いかけ回されるとこんなもんじゃないんだぞ?」

「……なるほど」


ヘイゲルだけが納得していた。いや、まぁ、他の二人はミレアという変態ストーカーという化け物を知らないからしょうがない。ちなみにどんどんミレアの扱いがひどくなってきているのは気のせいだ。むしろ今までがやさしすぎた。


「そういえば貴様ら古代兵器とやらを見たか? あれは素晴らしいものだったぞ」

「……まぁ、一緒に頑張ろうな」

「? どういう意味だ?」


俺はオルウェンを見たが、オルウェンは言わない方がいいと判断したようだ。確かにこいつに言うといろいろ面倒くさいことが起きそうな気がするな……。


「君のジン君に対する応援ですよ」

「! バ、バレてしまったか……。なんか恥ずかしいな////!!」


恥ずかしいって言うけどお前今のところどんだけ進展があったんだよ……。ちなみに俺の予想では進展も何もしていないという予想だ。


「なぁ、オルウェン」

「はい?」


エリクはこの際だから聞いてみることにした。


「このカタリヌを手助けするいい方法って何か思いつくか?」


こいつは頭がいい。それを使って何かいい方法がないか聞いてみたのだ。ヘイゲルもそれに頷いていた。


「ん~、はっきり申し上げますと……」


俺とヘイゲルは次の言葉を期待した。


「私の【危険察知】が反応するほど無理ですね」


………………………………………………………………………………………。















もう諦めてくれねぇかな……。



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