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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第一章 ~モブのお仕事~
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モブの戦闘

やっと戦闘が始まります

 俺はいつもどおりに、朝の五時に目を覚ますと目の前には知らない天井があった。



 いや、俺はこの天井を知っている。見慣れていない天井がある、と言うべきか。



 ここはアイシアという赤髪で短髪の女性が生活している教会だ。



 昨日はここに泊めてもらったんだったな。



 それを思い出したところで、さて、普段と同じように起きてしまったが、これからどうしようか。



 この村には冒険者ギルドがない。



 これといってやることが見つからない。



 何をしようか迷った挙げ句。



「とりあえず、一応魔物が出たっていう森にでも行ってみるか。まぁ、あそこのギルドがミスするとは考えられないけど」



 身支度をして教会を出ると、外にはアイシアが洗濯をしている最中だった。



 こんな朝っぱらから洗濯とはよくやるものだ。朝は寒くて、洗濯をするには水は冷たくないだろうか。



「あら? おはようエリク」



 俺が出てきたのに気付くと、アイシアは意外そうな顔をした。



「てっきり寝ていると思ったんだけど、こんな時間にどっかにいくの? この時間に開いている店なんてないわよ?」

「いや、ちょっと森の様子を見ようとしてだな……。というか、アイシアこそ。なんでこんな時間に洗濯を?」



 すると、アイシアは少し考えて



「ん~、特に深い意味はないんだけど。いていうならこの後の散歩のためかな? 散歩の後に洗濯ってのもちょっと気分が乗らないっていうか」



 なるほど。けど、朝に散歩とは若いのにずいぶんと変わった趣味をお持ちのようだ。



 そう言いたい俺の顔を読み取ったのか、アイシアはフッと笑って、



「おじいちゃんがよく朝散歩していて、それに付き合っているうちに、いつの間にか習慣になっちゃったの」



 年寄りみたいでしょ、と恥ずかしそうに笑った。



 別にそこまでは思っていなかったが、確かにそうかもしれない。



「俺は、こんな時間に誰かと会うのはシルヴィだけだったな。そういえば」



 いや、本当。あそこのギルドは少しシルヴィにも休暇をあげるべきだ。



「そのシルヴィってのが誰かは知らないけど、気を付けてね」



 ……その言い方だと、シルヴィに気を付けろ、っていう意味に取れるんだけど、違うよな? 魔物に気を付けろって意味だよな。



「ま、大丈夫だろ」

「本当かしら? 怪しいわね」

「え、本当に何の話をしてる?」



 会話が合っていないような気がするのは俺の間違いか?



 と、まぁ。こんな感じで俺は森へと向かったのだった。














 アイシアと別れて、森へ行く道を歩いていくと、もともとの目的地であった森を見つけた。



 この辺に【ウルフェンロード】が大量発生した、という話らしいが、全然信じられない。



 彼らがこんな森にいる理由は結局わからないままだ。



 城下ギルドが解決したみたいだから、何かしらの情報は今頃ギルドにも届いているはずだが、どうだったのだろう。



 やはり使役されていたのだろうか。



 だとしても、彼らは大量発生・・・・していたことが少し気になる。そんな大量の魔物、ましてや、あの【ウルフェンロード】を使役できるなんて、聞いたことがない。



 ……そういえば昨日の村長の『解決した』という意味は、『討伐した』という意味なのか、それとも『原因を特定した』というどちらの意味だろうか。



 まぁ、結局帰ったらわかることだしな。



 そんなことを考えながら森を歩いていると、ふと、俺は何かを感じた。



 ゾワリと背中を駆け抜ける狂気じみた悪寒。



 なんだこれは? 殺気……? いや、まさか。



「おいおい、おまえここで何してんだ?」



 後ろから声をかけられたので振り返ってみると、そこには剣を持った三人の男達がいた。



 ……まずいな。



 見た目からして、この三人。盗賊と言ったところか。



「おまえ、なかなかいい装備してんじゃねえか。命までは取んねぇからすべて置いていきな」

「ハハッ、まさかここで臨時収入がはいるとは、俺達は本当に付いてるなぁ」



 やっぱりそうか。



「おい、おまえ聞いてんのかぁ」

「出すもん出せって言ってんだよ」



 男達は俺を威圧するように足を一歩、また一歩と近づけるが、俺は動かない。



 ……どうしたもんか。ここは逃げた方が……いや。



「なぁ」



 ここは話し合いで、



「おっ、やっと出す気になったか?」



 と、いきたかったところだが、時間切れだ。話している暇もない。



「今すぐここから離れた方がいいと思うぞ」

「あぁ? 何言ってんだおめぇ……」



 俺の意味不明な忠告に一人の男が首を傾げたその時だった。



「「う、うわぁぁぁぁぁぁ!?」」

「ど、どうしたお前らっ!?」



 男が振り向くと、腰を抜かした二人の周りを例の【ウルフェンロード】が三体取り囲んでいた。



「っな! 何でこんなところにこんなのがいるんだよっ!」



 男は振り向きざまに叫ぶと、仲間二人を置いて遠くに逃げた。



 仲間を捨てるとは、ひどい奴だな。



 すると逃げた方から、



「ぎゃぁぁぁぁぁーーー!!]



 と、先ほどの男の悲鳴が聞こえた。



 どこかを転げ落ちるかのような音がすることから、崖にでも落ちたのだろうか。



 仲間を見捨てた罰だろうな。



「や、やめろ! 来るなっ! あっち行けよっ!」



 他の二人を見てみると、一人は必死に両手を振り回し、もう一人に至っては失神していた。



 失神している奴はさておき、【ウルフェンロード】は腰を抜かしているもう一人の男に襲いかかった。



「まったく!!」



 俺は剣をオレンジ色に光らせ、その両者の間に割って入った。



【ウルフェンロード】に横降りすると【ウルフェンロード】は驚くほどきれいに斬れた。



「三体も残すとか。……やるならちゃんとやってほしいところだぜ」



 独り言を言っている間に【ウルフェンロード】二体が同時に飛びかかる。



 俺は腰を低くすると、右側の【ウルフェンロード】の下を滑り込む。



 それと同時に剣を上へと向けると、頭から尻尾まできれいに分断していく。



 切り口からは血が流れておらず、代わりに焦げたように黒くなっている。



「こんがり狼ステーキのできあがり、ってな」



 俺は火の魔法を使う。



 ただし、今使っているのは火ではなく、火が出る前の段階、熱だが。



 剣を高温にすることで、すべてを焼き斬ることができる。これは下手に火を出すより魔力操作が難しいが、その分攻撃力が高い。



 それに、魔法の節約にもなる。



 最後の【ウルフェンロード】は相手との差を思い知ったのか、背を向けて去ろうとする。



「逃がすかっ」



 回り込んで同じように斬り伏せて、



「……ふぅ」



 と、額の汗を拭った。



 意外とあっけなかったが、実際はこんなもんだ。



 ランク『A』とランク『B』では圧倒的な差がある。



 戦闘を終えると、完全に失神している二人を見た。



「う~ん、まぁ。とりあえずこいつらは縛り上げとくか」



 常備している縄で二人を縛る。



「さて、問題はこいつらだが……なっ!?」



 倒した三体の【ウルフェンロード】を見ると、体が砂のようになって、空気中へと散っていく。



 この現象は見覚えがある。



「使役されていたのではなく召喚されていたってことか?」



 使役は野生の魔物を手懐けるので、魔物を倒したとき死体はそのまま残ることになる。



 しかし、召喚は違う。



 召喚は別の空間からその魔物を出すことではなく、材料をもとに作り出す、つまり創造すること。



 その場合、その死体は材料へと戻るわけで。



 つまり、さっきの砂は材料となるわけだが……。



 風に飛ばされる前に、粉を集めると、森の奥から【ウルフェンロード】らしき雄叫びが聞こえた。



 三匹どころじゃねぇ……。どんだけ狩り忘れてんだよ。



 しっかりしろよ、城下ギルド!



 とりあえず、このことは帰ってから報告することにして、念のために残党狩りにいそしむことにした。



 ついでに、崖の下で伸びている男も回収しておいた。




2018/02/21 改稿

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