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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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エルフの精鋭部隊の一人

結局あれからリンは俺を見つけることができなかった。といってもちょっと遊び半分で見つからないようにうまく隠れていたわけだが。


エルフの里に着くと同時に俺はリンの前に姿を現した。リンは少し泣いていて、さすがに俺も反省した。


「えりく~~~、やっと見つけた~~~!」


そう言ってリンは俺に抱きついてきた。


「悪かったよ、リン。ちょっと遊んでいるうちに本気で隠れちゃったんだよ」

「オ前ガ隠密行動ニ向イテイルトイウコトガヨクワカッタナ」


後ろからヘイゲルが話しかけてきた。どうやらあのヘイゲルですら俺を見つけれなかったらしい。俺の背景力すげぇ……。素直に喜べないのはなぜだろう……。


エルフの里は俺の予想通り自然にありふれているところだった。王都なんかと比べて空気がうまいったらありゃしない! すると、里から何人か耳のとんがった人が出てきた。それはリンと同じもの。つまり彼らがエルフなのだ。


「君たちは何者だ? 見ない顔だが……」


それに対してカタリヌが前へと出て、彼らの問いに答えた。


「私達は冒険者だ。そして私はAランカーだ。貴方たちの力を借りたいと思って今日ここまで来た。『蒼い烏』と言えばわかるだろうか?」

「ふむ……『蒼い烏』については今は聞かないでおくけど、君がAランカー? そんな顔には見えないが……」


そう言うとそのエルフはいきなり殺気を放った。冒険者達が動けなくなると同時にカタリヌに斬りかかった。


カタリヌはそれを躱すと、腰に掛けていた剣の柄を握った。それからすごい速さで一閃するが、エルフは軽い身のこなしでこっちに大きく飛んだ。ヘイゲルは動こうとしたが俺はそれを止めた。


「ふむ。どうやら本当のようだね。悪かったね突然攻撃して」

「いや、こちらこそ素晴らしい身のこなしを見せてもらって感謝したいくらいだ」


お互いに剣を鞘に収め、握手をかわした。お互いの表情はさっきとうって変わって笑っていた。


「ようこそ。歓迎しよう、ここはエルフの里『ペンドラム』だ。詳しい話は中で聞こう」


そう言って、俺達冒険者はエルフの里へと入っていった。


……相変わらず元気だなあいつは。


一連の流れを見ながら俺は呑気にそんなことを考えていた。
















話し合いにはカタリヌと族長の間で行われるそうで他の俺達は自由行動となった。ジンとミーシャとカレンは三人で行動していた。その光景を見ながら俺はイライラしていた。俺の連れはリンとヘイゲルだからだ。しかもリンとヘイゲルの関係を考えるとどこに俺のラブコメ要素があるのだろうか。


「えりく~、あっちに遊び場があるんだよ!」

「そうかそうか。ヘイゲルと一緒に遊んできな~」

「? 貴様ハドウスンダ?」


こいつはなんて鈍いのだろうか……。俺がここまでサポートしてやってんだから気付よ。このトカゲ野郎。


「今、貴様俺ノコトヲトカゲ野郎ト思ッタナ」

「そ、そんな訳ねぇだろ! 俺はちょっと用事だよ」


こいつもまさかミレア同様に俺の考えが読めるというやばい奴か! だとしたら俺は相当やばい状況になっているのではないか!?


「用事トイウノハナンダ?」


ヘイゲルの言葉に俺は一瞬詰まった。そこまで考えていなかったからだ。そんなときに助け船が入った。


「彼は私と話すという用事があるんですよ」


そう言ったのは里に入る前にカタリヌと剣を交わしたエルフだった。


「……ソウカ。ソレハ残念ナコトダ」

「それはどういう意味だよ!?」


なにが残念なんだよ……。俺に知り合いがいたことか? こいつの性根はホントに腐っていると思います。


そう言って俺達は二つに別れた。リンが残念そうな顔をしていたが、なぜかはわからなかった。三人で遊ぶつもりだったのなら何をするつもりなのだろう。「おままごと」だったらお断りだ。


俺とエルフが近くのベンチに座るとエルフの方から口を開いた。


「……」

「……ってホントに口を開くだけかよ!」

「相変わらずいいツッコミをしてくれますね、エリク」


そう言ってエルフの奴は笑った。それに対して俺も呆れながら笑った。


こいつはさっきの戦闘からわかるようにAランカーと同じくらいの実力を持っている。つまりこいつが『蒼い烏』討伐精鋭部隊の一人である。それは今も昔もだ。


「つうかお前も相変わらず元気だな、オルウェン。お前さっきの戦闘でカタリナと戦っているときに俺を見て信じたんだろ?」

「実力があっても、冒険者かどうかはわからないからね。まぁ、彼女の目には偽りはなさそうだったからどっちみち入れてたよ」


オルウェンとは昔の精鋭部隊で同じ班になった奴だった。その時からこいつはなかなか頭も良く、作戦の要になっていた。


「そういえば【双焔】は元気にしているかい?」

「あいつとギルドが同じじゃないから知らん。というか【双焔】の名前ってレギンって言うんだな。最近知ったぞ」

「君は自分の周りしか見ないからね」


いや、お前が名前を言えばいいのに、お前毎回【双焔】って呼んでたじゃねぇか。これに関しては俺悪くねぇよな。


「それよりさっきから気になってたんだけど、あれはもしかしてリンかい?」

「ッ! 知っているのか?」

「彼女、いきなりこの里からいなくなってしまってね。探していたんだよ」


そう言ってオルウェンはリンについて話始めた。



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