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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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モブが悪役になる

ギルドを出ても、まだ時刻は六時半を回ったところだった。朝起きるのが早かった分時間が遅く感じてしまう。


「エリク」


後ろから名前を呼ばれて、振り向くとアイシアとリンがいた。


「どうせ暇なら孤児院にまた来ない?」


まぁ、暇であるのは間違いないんだけど、人に言われるとどうしてこう腹立つのだろうな……。別にその人が嫌いな訳でもないのにな……不思議だ……。


「構わないよ。その代わりあのゲームはもうやらないからな」

「アノゲームトハ何ノコトダ?」


アイシアとリンの後ろから出てきたのはヘイゲルだった。


「へいげるさん、前にえりくとゲームしてねその時のゲームのことだよ」

「ッ! エリク! 貴様マサカ! ナンテコトサセテイルンダ!」


こいつにあのゲームのこと教えたっけ? 教えたような教えていないような……

うん、やっぱり教えてないな。こいつは何の話をしているんだ?


「リン、ソノゲームハエリクノ最低ナ一面ヲ見ルゲームダ。モウ絶対スルナ」

「最低な一面? はっ! まさかエリク本当に……!?」


アイシアは言葉には出さなかったが口の動きは「ロ・リ・コ・ン」を表していた。


「ちょちょちょっと待て! 違う! よくわからないが違う! 何の話をしているんだ、ヘイゲルは!?」

「ム? 貴様ノヤッテイタゲームトイエバアレノコトダロウ?」


ヘイゲルは俺のもとへやって来て、俺にしか聞こえない声で言った。


「(男女ノカップルヲツケ回ス最低ナゲームダ)」

「ッ! んなわけねぇだろ! あれは俺からお前に処理を頼んだじゃねぇか!

そこまでした俺がなんでまたやるんだよ!」


こいつはバカかよ! そんなこと考えればわかることだろ! なんでこいつはいらんところで勘違いばっかりするんだよ!


「……たくっ、俺が前にやったゲームっていうのは【人生おままごとゲーム】だ」

「ナンダソノ子ドモニ教エルベキデハナサソウナゲームハ?」


……まったくだよ。慰謝料とか書いているんだぜ。まぁ、そこまで行く前に俺が現実の方で(社会的に)死んだんだけどな。


俺は前にそのゲームで起きたことを包み隠さず話した。ヘイゲルは途中から俺のことを可哀想な目で見てきて俺は泣きそうになった。相変わらず俺のメンタルは弱い。


「へいげるさんも一緒に遊ばない?」


その言葉にヘイゲルではなく俺が反応した。もちろんヘイゲルにも同じ苦しみを味わってもらうためだ。ストレス解消にはもってこいの獲物だ。ヘイゲルの不幸は蜜の味~♪


というわけでヘイゲルが断れる雰囲気を俺は作らないようにして、俺はヘイゲルを地獄へと堕とそうと動き出した。
















孤児院に着いて、俺はヘイゲルがなんと言われるかが気になった。いきなり目の前に怖い顔をした奴が出てくるんだ。最初の時のリンと同じく怖がるに違いない。


「すげー! あんたかっこいいな! 魔物なのにしゃべれるのか!? もしかして最近できた傭兵ってあんた達のことなのか!?」


あ、あれ~~~? おかしいぞ? こんな予定じゃないはずなのに……。いやいや、もしかしたらあのやんちゃな男の子だけかもしれないしな!


「か、かっこいい~ッ!!」


バ、バカな! あの気の弱そうな女の子が恍惚な表情でヘイゲルを見ているだと!

いや、あの毒舌の奴なら……!


「また来たんですか? このロリコンさん。残念でしたね、ビアンカを狙っていたんでしょうけど、あの人に取られちゃいましたね、ロ・リ・コ・ンさん。」


………………………………………………………………………………………ぐすん。


「って、ちょ、ちょっと! どこに行くの、エリク!? 待ちなさいって速っ! さすがAランカーね、って言っている場合じゃない! エリク~~~!」


……もうこの孤児院には絶対来ない。








「貴様イキナリ逃ゲルトハドウイウツモリダ? 貴様ガ誘ッタノニソレハナイダロ?」

「……俺がいない方がみんな楽しめるだろ」

「貴様ハナゼスネテイルノダ? マァ、大方俺ガ恐ガラレルト思ッタノニソウナラズニ、貴様ガヒドイコトヲ言ワレタノデアロウ? コノロリコン」


俺はまた全速力で逃げたが、ヘイゲルの能力でアイシアと俺を交換され、捕まった。相変わらずうぜぇ魔法だな。


「もういいよ、ロリコンで。なら俺がここにいたら危ないので俺は帰ります、さようなら」

「開キ直ルナ。ソレト、モシソウダトシタラ余計ニオ前ハココニイナケレバナラナイゾ」

「何言ってんの!?」


お前こそどうした!? なぜ俺がロリコンであるならここに残らなければいけないんだよ!? ハッ! お前まさか俺の弱みを握るために!? クソッ! ますますここにいては危ない! 俺が!


「えりく、ロリコン?」

「違う! 俺は普通だ! リンみたいな子で欲情しないから!」

「う……うぇ~~~~ん!!」

「なぜだ~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

なにがダメだった!? 意味わかんねぇよ! もうイヤだ!


「どうしたんですか?」


そう聞こえて後ろを振り向くとそこにはジンとミーシャがいた。二人がたまにここに顔を出していることはアイシアから聞いていたが、このタイミングは非常にまずい。端から見ると子どもを泣かした最低の人物。モブから悪役へとなる。


「ご、ごめん! それじゃ俺はここで!」

「ッテ、オイ! 貴様!」


ヘイゲル……その言い方だと俺が余計に悪役になっちゃったじゃないか……。いや、たぶんあっちは俺の顔を覚えていないか……。俺よく人から忘れられるし……。

昔友達だった奴と挨拶したとき俺こう言われたしな。


「お! 元気にしてたか? 一年ぶりだろ?」

「え……もしかしてトール?」

「何言ってんだよ! エリクだよ。名前を間違えるなよ!」

「いや……マジで誰? 顔も名前も知らないんだけど……」

「……本当に言ってる? 本当だったら俺泣くけど?」

「そんなこと言われても……」


あんときは目の前で泣いたなぁ……。結局あっちは俺のことを思い出してくれなかった。言っとくけど俺が間違えてはいない。あのときちゃんと確認した。そのときホモストーカーなんて呼ばれたよ……。


俺は家に帰り、家の鍵をちゃんと閉めて布団の中で泣きじゃくった。イヤな気分の時にイヤなことを思い出すともう泣くしかないよね。


俺は結局それから家を出ず、昼も夜も食べず泣いていた。明日は珍しくギルドに行かないことにした。人に会う気力がまったく出てこない。ひきこもりの気持ちがわかったような気がした。



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