モブとリンの故郷
「エリク! おはようって……どうしたのその格好?」
あれから約一時間半後アイシアとリンが来た。二人は俺のいつもの格好ではないことに疑問を感じているそうだった。
「ああ、これね。ちょっと朝っぱらから家を飛び出してきてな……、理由はまぁ……あれだよ……」
俺はそう言って、ミレアの方を向いた。リンは何のことかわかっていない様子だったが、アイシアはすぐに何を言っているかを理解したらしい。顔を真っ青にしていた。
「エリク! あんた大丈夫だったの!? 何かされてない!?」
「まぁ、恐怖を植え付けられたと言えばいいのかな? って、うわぁ! 大丈夫! もうそのことについてはシルヴィのおかげで話はついたから!」
アイシアがミレアに掴みかかっていたところを俺は必死に抑えた。そしてその話の内容をアイシアとリンに伝えた。
「……ふぅん、でも実際それで話が今だけはついたとしても今後はどうなるかわからないじゃない」
「まぁそう言われるとそうだな……」
そうだよな……。ミレアのことだからまた再開しそうな気はするな……。あれ? おかしいな、また震えが止まらなくなってきたぞ……
「えりく……大丈夫……?」
「あ、あぁ。大丈夫だよ……心配してくれてありがとう、リン」
「どういたしまして!」
おおぅ……。何これ、こんなかわいい生物ほかにはいないぞ。お持ち帰りしたいが、それをしたらミレアと同類だ。絶対そこまでいきたくない……。
「そんなに私と同じ扱いを受けたくないのですか?」
「当たり前だ! そこまで堕ちる気は毛頭ない!」
そんなことを言い合っていると他の三人が何事かと俺達二人を見ていた。三人にとってはいきなり二人が言い合ったように見えているのだろう。そこで俺が今の理由を話した。
「ミレアはなぜかわからんが俺の顔を見るだけで俺の考えていることがわかるんだよ……。前からやめろと言っているんだがな……」
「そ、それって、だいぶ重度じゃないですか!」
「だからそう言ってるじゃん。早く俺を解放してほしいです」
三人はやっと事態の深刻さに気付いたようだった。だが、ミレアはその程度で終わる女ではないと忠告しておこう。
「は、話が変わっちゃったけど、とにかく今のままではエリクの命に関わりそうだし、これからどうするかホントに考えないとね……」
「ソレナラ、護衛ヲ付ケルノハドウダ?」
「うおっ! ヘイゲル、いきなり出てくるなよ! ビックリしたじゃないか! 俺はもう後ろに誰かがいると思うと気が気でなくなるんだよ!」
「ム、ムゥ、ソウカソレハスマナイ……」
まったく……ミレアが来てから俺の平穏が壊されるわ、トラウマが増えるわで大変だな……。アイシアの料理もトラウマだけど……
「でも、ヘイゲルが言った護衛は悪くないかもな……。俺も安心して寝たいし……」
「それなら、わ、私が一緒の家に……」
「ダメよシルヴィ! それより私が……!」
「リンが~~!」
「それなら私はどうでしょう?」
「お前が来ないための護衛だよ!」
何言ってんの……。 お前が来ないようにお前を雇う奴がどこにいる。意味わかんねぇよ……。
「護衛ト言ウカラニハカナリノ実力ガナケレバナラナイカラ無理ダナ……」
「それに皆の睡眠を邪魔したくもないしな……」
そういうわけで護衛の案は却下だ。というかヘイゲル、お前自分の案を自分で却下するなよ。それならそもそもその案を出すなよ……
「やっぱり根本的な解決策としてミレアさんをどうにかするしかないのではないのでしょうか?」
やはりシルヴィはきちんとしたことを言うな……。さすがだな……
するとシルヴィと目が合ったがシルヴィは顔を真っ赤にして目を逸らした。……俺ついに嫌われたのかな、毎度毎度迷惑かけちゃってるし……。ホントにすいません……。
「ミレアをなんとかするって言ってもここまでなっちゃうと難しくないか?」
「それでもなんとかしない限りは、一生このままよそれでもいいの?」
「確かに、そう言われると困るな……」
というわけで俺達はミレアを普通にまで戻そう―――いや、もともとそこを飛ばしたわけだから下げると行った方がいいか。まぁ、とにかくそういう方針に決定した。ミレアはイヤそうな顔をしていたがこれは決定事項だ。
そのとき、シルヴィが何かを思い出したように俺を見た。
「そういえばエリクさん、言い忘れていましたが、緊急クエストが入っていますよ」
「あ、そうなの? その内容は?」
「はい。これから本格的に『蒼い烏』との対決が始まります。それにともなって二年前と同じく精鋭部隊を作るそうです。そしてその精鋭部隊の一員としてエリクさんが入りました」
「ん? 待て、入った? いかにも俺が選ばれたみたいな感じだな。俺のことを知っている奴なんていたか?」
「はい。エリクさんを精鋭部隊に推薦したのはレギンという人なんですけど……。さらになぜか秘密裏に推薦したようなんです」
…………つまり俺があまり目立たないようにしたってことか? 俺がモブとして生きていることを知っているのか、レギンは?
「どうやら、あの方にはバレてしまっていたようですね、エリク様」
「……だから俺の心を読まないでくれる?」
「すいません、つい癖で……」
癖って……、マジ大丈夫かよ……。これを普通に下げるとか最高難易度のゲームだぞこれ……。
シルヴィはわざとらしい咳払いをすると話を続けた。……ホントすいません……。
「その精鋭部隊の中に五人ほどエルフが入っています。その人達に連絡するために明後日ここの冒険者様達と少しエルフの里まで行ってほしいのです」
「二年前は秘匿にして動いていたけどいいのか? 他の冒険者を巻き込んで?」
「もう『蒼い烏』を知ってしまった以上隠す理由もないと言うことです」
ま、そりゃそうだ。それにしてもエルフの里か……。
俺はリンの方を見た。リンは悲しそうな顔で下を向いていて、何を考えているかは大体予想はできた。しかし念のために聞いといた。
「リンはどうする? 俺に付いてくるか?」
「わたしはあまり行きたくない……。でも……」
リンは顔を上げてまっすぐ俺を見た。その顔で何を言いたいのかはわかったがリンのためだと思って、その言葉を待った。
「えりくが守ってくれるならわたしも行く!」
そうして俺とリンの初めての旅となった。
…………そう言うとなんかいけないことをするような感じがするな……
なかなか話が進まずすみません……




