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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第四章 ~モブの扱いがひどくなっています~
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モブの恐怖の朝

この俺―――シノイ=エリクは早起きである。毎朝五時に起き、六時にはギルドに行って、シルヴィとたわいない話をするそんな毎日だった。


しかし、最近はどうだろう。ギルドに行くとシルヴィとアイシアの喧嘩に巻き込まれる。今度はヘイゲルとバカなことをして、せっかく友達になったはずのリンからは「私とえりくは友達じゃないもん!」と言われる始末である。ヘイゲルがそのたびに残念そうな顔で見てくる。まぁ、そこまでは百歩譲って我慢できた。


だが、ホントのつい最近になってから、俺の平穏は完全に壊された。想像してみてください。鍵をかけたはずの部屋に天井裏をつたって入ってきて、俺が目を覚ますと森の中にいる状況を。そして今俺が目を覚ますと俺の体の上で四つん這いになっているメイドを見て、あなたはどう思いますか? ちなみに現在の時刻は四時です。


「………………………………おやすみ」

「いえ、おはようございます、エリク様」


俺が寝ようとすると目の前のメイドは俺の体に触り、魔法を使ってきた。すると俺の眠気がすっきりとなくなっていく。


「俺の眠気を吸収しないでもらえる? 俺は寝たいんだけど」

「眠気がなくなったのに寝たいのですか? おかしな話ですね」

「そうだよ! 眠気はなくなっても睡眠欲はなくなってないんだよ! それに人は寝ないと体に悪いんだよ! あと何回も言っているが俺の家に入ってくるな!」


怖いんだよ! 真っ白な髪と肌だから一瞬幽霊かと思っちまうんだよ! というかこの家にどうやって侵入してんだよ!


「それを言ってしまったら対策されてしまうじゃないですか」

「だから俺はその対策をしたいんだよ! あと心を読むな!」


このメイド―――ミレアは王女の侍女を辞めてから俺のギルドの受付嬢となり、シルヴィと同じく朝の五時から十二時まで働いている。なので仕事の一時間前に俺を毎回起こしに来ている。ぜひともやめてほしいのですがやめてくれません。ミレアが言うには俺のためだとか言ってはいるけれど世界一周しても俺のためには行動していません。


……マジで今からジンに惚れて俺の前からいなくならないかな。


「ジン様などエリク様と比べれば『ピー』のような存在でしかなく、あれはただの『バキュゥン!』ですね。あれに惚れるぐらいならエリク様の『ウ~~~!』を見ているだけの方が九万五千倍はいいですね」


世界のルールなのだろうか……、途中で効果音が流れてきたんだけど……。それとも俺の脳内が拒否反応を起こしたんだろうか? どちらにしても俺の震えは止まらない。


「……よし。ミレア、俺と結婚するには条件がある。その条件がクリアした時点で俺はお前と結婚しよう。もちろん浮気もしない。どうだ」

「そうですか。言ってみてください。私はどんなことでもしましょう」

「うん、それはな……そこまで難しいことじゃない。ただ俺に関わらないでほしいと言うことだ。視界に入らない。触らない。話さない。俺を見ない。俺の話を誰かにしない。あと他には……まぁいいや。それを結婚するまでしないのなら構わない。おっと! これだと婚姻届に俺が記入できない! 実に残念だ!」


これでどうだ! だから俺の前からいなくなってください!


「エリク様、それは残念ながらできません……」

「……は?」

「それで結婚ができないのであれば、私は結婚を諦めましょう。その代わりエリク様の妻になる人は誰も作らず、今まで以上にエリク様を愛しましょう」


誰かマジで助けて……。俺がたった数十分で『マジで』なんて言葉を言うのはものすごく異常であることを知っていますか?


「それでは、エリク様目覚ましのキスを……」


俺は全速力で家から出た。寝間着であったがそんなことを気にしている場合ではない。俺の人生の瀬戸際だ。


……………………俺の平穏は崩れていく。

これでモブというところが不思議でたまらないほどに。
















ギルドで震えていると後ろから肩を触られた。


「ひっ!」

「す、すいません! エリクさん!」

「あ、あぁ~。なんだシルヴィだったか……」


俺の肩を触ったのはシルヴィだった。俺はどんどんビビりになっていく。


「大丈夫ですか? エリクさん……」

「ううん、全然大丈夫じゃない……。もうイヤだ……ぐすん」


シルヴィの前ではあまり泣かないようにしていたが、もう怖くて怖くてそんなのを構っている余裕がなかった。


「エリクさん……、私が話を聞きますよ……」


そう言って、シルヴィは俺の隣に座り、腕で包み込んだ。俺はまるであやされている子どものようだった。俺は心の声を知らずに声に出してしまった。


「俺がシルヴィをもらいたい……」

「////ッ!!」


俺は自分のことで精一杯だったので、何も考えれなかったがシルヴィの顔は真っ赤だった。そこで……


「そこにいましたか、エリク様」

「ひっ!」


ミレアの声に俺は悲鳴をあげた。


無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ッッッ!!


「さっきの件はやりすぎました。今度からはもうちょっと抑えるようにします」

「ミレアさん! あなた、エリクさんの気持ちも考えて行動してください!」


シルヴィがそう言うとさすがのミレアも自覚があるのか、悲しそうな顔をした。その顔を見て俺もわずかながらの妥協をした。


「朝起こしに来るのも、俺のあとをつけてくるのもこれからはやめてくれ……。それさえしなければ、俺も普通に接してやるから……さ」


腰をひきながら話す俺を見てミレアも今度こそ反省の意を示した。シルヴィを見ると顔が少し赤かったがそれぐらい怒っていたのだろうと俺は結論付けた。



ミレアの行動もヤンデレですか?

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