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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第三章 ~招待されたモブ達~
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いざ、王都へ

「……なぁ」

「はい、なんでしょう」


俺の呼びかけに隣にいたミレアは丁寧に応答した。


「この状況はなんだ?」

「なんだと言われても、なにを答えれば良いのでしょう?」


ミレアは困ったように首をかしげた。俺はそれに対して若干怒りがわいてきたが、今はそれどころじゃなかった。


「なにをって……、こんな状況に陥った理由を聞きたいんだよ……。これはお前がやったのだろう?」

「そうですね。この状況を作った原因は私にあります」

「いかにも、自分の誤った選択によりこんな状況になってしまったような返答をするな。お前がこの状況を作り出したに違いないのだから、そう……」


俺とミーシャは今、崩壊した建物の前にいた。そこには昨日巨大な木で作った家があったはずだが今はそれがどこにもなかった。さらに昨日までいた冒険者達の姿もなかった。そこから導けることとは……


「馬車が俺を置いて、帰ってしまったこの状況を……」


その言葉にミレアはとてもうれしそうに


「エリク様だけではありません。私も一緒ですから」


………………………………………………………………………それが一番怖いんだよ
















二時間前、エリク達冒険者は床で寝ていた。互いの魔法を使って布団などを作り、なかなかいい寝心地であった。


そんな中一人だけ動く者がいた。言うまでもなくミレアだった。ミレアは物音を立てずにエリクをお姫様抱っこで抱えて、外に出た。


普通だったらAランカー達が気付くはずだが、ミレアはあり得ないほど気配を消すことがうまかった。それもこれもエリクのために身につけた能力だとエリクは知らない。


そうしてエリクを抱えたまま森の中へ入っていき、木によりかからせるようにエリクを下ろした。そのあとエリクの体の隅々まで触れたあと、魔力を流し込んだ。


ミレアの魔法は【吸収】―――目に見えるものから目に見えないものまで魔力のもつ限り、魔力にそれを溜め込む魔法である。逆に言えばその力をはき出さなければ、その魔力はもう使えないことになる。だからミレアは溜め込んだ力をはき出すことが可能である。


今ミレアが行ったのはそういうことだった。ただし、ダメージをエリクに与えたのではない。与えたのは疲労と睡魔だった。ミレアは昨日から一睡もせず、その力を魔力に溜め込んでいた。さらに昨日冒険者達を治療するとき、睡魔をわずかに吸収させていた。


これにより、今エリクは寝ている最中に疲労と睡魔を増幅させられていた。もうわかったと思うがこうなっては起きるのに相当な時間を要する。つまり、エリクが起きたときには、もう皆が馬車で帰っていることになる。エリクは良くも悪くも影が薄いのでバレることはない。


しかし、ミレアはほんの少しの可能性まで潰す気のようで、馬車に皆が乗るときカタリヌに対してエリクは違う馬車に乗ったと伝えた。


そうしてエリクが目覚めると森の中にいて、イヤな予感がして別荘の方へ行くと、ミレアが一人で佇んでいるという現在の状況になる。
















「ミレアさ……、ミレアは一応王女様―――エリテュカの侍女なのにどうしてここにいるんだ? しかも俺を巻き込んで……」

「それは違いますよ。巻き込んだのではなく、エリク様と一緒になるためにこんなことをしたのですよ。それに昨日、侍女を辞めました。エリク様が午後に寝ている間にエリテュカ様のところに行ったのはそれが理由です」


……もうイヤなんだけど。……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ。どこで俺の人生設計は間違ってしまったのだろうか……。いや、たぶん人生設計をめちゃくちゃにされたんだ……ミレアによって……


「はぁ……、もういいや。うん、覚悟を決めたわ」

「そうですか……。やっと覚悟を決めてくれましたか。ここまでが長かったものです……」

「いや、それは違うな。これからが長いんだ」

「なるほど。たしかにこれからの方が一緒にいられますからね」

「だから、違うと言っているだろう。俺が決めたのはこっから歩いて帰る・・・・・覚悟だ。断じてミレアと一緒になる覚悟ではない。そんな覚悟は全く持ってないし、持つつもりもない」


誰が俺の考えていることがわかる人と一緒になりたいと思う奴がいるのだろか。そんなことより歩いて帰る方が百倍、いや二百倍はましだ。


「相変わらず優柔不断な人ですね」

「どこが!? 俺今結構早く決断したと思うけど!?」


ミレアと話すのは毎度疲れるのでそれ以上は言わず、王都へ歩き出した。ちなみに緊張感としては『蒼い烏』と戦うぐらいあった。


……つうかどうやったらAランカーに気付かれないぐらい隠密に動けるんだよ……。まだ何か魔法持っているとかじゃないだろうな……


「さぁ、どうでしょうか?」

「ッ! だからなんで考えていることがわかるんだよ! 怖いんだよ!」

「妻としては当然ですよ」

「もうやだ……」


王都までこっからは馬車で三時間だが歩いて行くと六時間ぐらいかかる。しかし、ミレアはたぶん俺と長く一緒にいるために何か策を巡らしているに違いない。


「やはりエリク様も私の考えていることがわかるんですね。ますます私達はお似合いの夫婦になると思うのですが……」

「……」


もう、何も言わないよ……。体力が保たないもん……。寝たはずなのに疲れが溜まっているように思えるし……。


「それでは行きましょう、エリク様―――いえ、あなた」

「それだけはマジでやめて!」


俺の戦いは終われなかった・・・・・・・……



まだ終わりません。遠足は帰るまでですからね……。

それと『モブとしての覚悟』でエリクだけが帰ってこないという描写はこれが原因でした。その描写の方は確認してみてください。

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