レギンの宣戦布告
「無事で何よりです。エリク様」
ミレアは満面の笑みで俺に笑いかけながらそう言った。
「な、なんで……、ミレアがここに……?」
「なぜとは言われても困ります。私が回復系の魔法が使えるからに決まっているからです」
「そ、そうなの?」
「はい。私の魔法は……」
言いかけながら、ミレアは俺の元へと近寄った。ミレアは俺の体に触ると魔力を流し込んだ。すると俺の体の周りが光り、どこか懐かしい気分になった。
「私の魔法は【吸収】。あらゆるダメージや疲労など、目に見えないものまで私の中に溜める魔法です」
「……それで、ミレアが傷つくとかは……」
「大丈夫ですよ。魔力の中に溜めているような感じですので……」
そう言って、治療を再開した。すると建物の中から大きな音が聞こえた。俺が後ろを見ると、誰かが建物から飛び出した。
遠くでよく見えないが……、あれは間違いなく【死神】―――ボルシュ=ブリューゲル、『蒼い烏』のリーダーだ……。やはり前の奴らがいるのか……。
ブリューゲルは地面にきれいに着地すると、建物全体に聞こえるように叫んだ。
「お前ら! 集まれ!」
その声に続々と他のところで戦っていた『蒼い烏』が集まった。そして全員が集まったとき、Aランカー達もレギンの周りに集まった。それは、『蒼い烏』とAランカーの対決を明確にしたようであった。
「ブリューゲル! お前達は一体何を始めようとしている!?」
レギンは単刀直入に聞いた。一見何も考えていないように思えるが、一週間前のことでもわかるように、レギンはいつも何かを考えている。
「レギン……、相変わらずお前は何も考えていないようで、いつも何かを考えているようだな。……まぁ、いいか、もともと教えるつもりで来たわけだしな」
ブリューゲルはレギンの思惑に気付いていながらそれを隠すようなことはしなかった。どうせバレることだと思っているのだろう。ブリューゲルがその問いに答える前にレギンは口を開いた。
「その前になぜお前達がここにいる? どうやってあそこから出たんだ?」
「おいおい……、一つ目の問いに答える前に二つ目の質問をするんじゃねぇよ。あせんなって、ちゃんと全部答えてやるからよ……」
そう言ってブリューゲルはヘラヘラ笑っていた。
「そうだな……まず二つ目の問いに答えようか。俺達はあの牢獄を協力者によって抜け出すことに成功したんだよ。その協力者の名前は何人かは知っているのではないか? そこにいる【紫鮫】だったけ? お前も知っているはずだ」
そう言ってブリューゲルはカタリヌのほうを向いた。すると一斉に他の冒険者達もカタリヌの方を向いた。
「私が知っている人物だと……。その牢獄の名前は?」
「ヒューロン監獄だ」
ブリューゲルではなくレギンがそう答えるとカタリヌの表情が変わった。何か思いつくことがあるのだろう。
「まさか……ラルカか!」
……ラルカ? どこかでその名前を聞いたことがあるような……
「ラルカっていうのは誰だ、カタリヌ?」
「この前王都で行方不明者が出たときの主犯です。まさか彼女……私達にやられたことによる復讐で……?」
「それは違うよ~【紫鮫】ちゃん。彼女は二年前から俺達の協力者さ。彼女が捕まったのは二年前からの計画」
「「「ッ!!」」」
カタリヌとジン、ソルドの息をのむ音が聞こえた。
ラルカ……行方不明……、……ッ! そうか思い出したぞ! リンを騙した奴か! 確かそいつの魔法は【転移】と【即興魔術】。【転移】の魔法で『蒼い烏』の奴らを脱出させたのか……!!
「それじゃ、最初の問いの答えは……」
「ま、待て! こちらの頭の整理を……」
「【紫鮫】ちゃんよ~、そんなことさせるわけないでしょ。これだから新人は困るんだよ。ちゃんとついてこいよ~」
「ッ!」
「で、その答えだけどね~、俺達はお前らAランカーに喧嘩を売りに来た。テメェらを全滅させた後、ゆっくり二年前の続きを始めようと思っているわけ、理解したかな~?」
その馬鹿にされた口調にAランカー達が戦闘態勢に入ったが、レギンがそれを片手で制した。
「ここで戦えば僕達が勝てるとしても、甚大な被害を出すことになる。ここは落ち着いて」
「は~、さすがにわかってんじゃないの。それじゃ、俺達もまだやられるわけにはいかないからな。ここらで失礼させてもらうぜ」
「ブリューゲル」
レギンにそう呼ばれ、ブリューゲルは振り返った。レギンはブリューゲルを睨みつけながら、一週間前とは反対に宣戦布告をした。
「覚悟しろよ『蒼い烏』ども。今度こそお前らを壊滅させる」
その言葉で俺を含めたAランカー全員が殺気を放った。
「いいぜ、やってみな。俺達も前のようにはいかねえよ」
『蒼い烏』の奴らも殺気を放ち、お互いの殺気がぶつかり周りの冒険者達はなにも言えないどころか一歩も動けなかった。
それから消えるように『蒼い烏』は去った。
「とりあえず危機は去りました。国王様今日はどこかで休みましょう。どこかに休む場所はありませんか?」
レギンがそう言ったがさっきの殺気を見て動ける者は少なかった。そんななか……
「……わたしがなんとかする」
一人の少女がそう呟いた。俺はその声の主を知っていた。
「ミーシャ!? なんとかするってどういうこと!?」
ジンがそう言ったが、ミーシャは答えなかった。その代わり彼女の周りの地面から突然巨大な木が出てきた。すると、その木で先ほどまでの別荘とまではいかないが、巨大な家が作られた。
……便利すぎね? あの能力がある限りシルヴィ達に勝ち目があるとは思えないほどすごすぎだろ。
「ありがとう! 助かるよ、君名前は?」
「……ミーシャ」
「ミーシャか、わかった。それとジン君だったね、エリテュカ様を助けてくれてありがとう」
「い、いえ……」
「ありがとう! ジン! 大好きっ!」
「ファッ!!」
王女様―――エリテュカがジンに抱きつき、王様が口を開けて固まっていたがとりあえず、俺を含めた一部の冒険者達はこう思っていただろう。
アイツ死なねぇかな……
そんな感じで俺達の戦いは幕を閉じた……




