モブvsフラン
「さぁ! どんどん避けろよ! 避けれたらの話だがなぁ!」
「クッ!」
フランが剣を触るたびに斬撃が飛んできていた。さらにこの狭い部屋の中で自由に動き回れるわけもなく、俺の体には傷跡がところどころできていた。
「相変わらず……、面倒くさい魔法だ……。まったくもって羨ましいよ……」
「だが、魔法だけじゃ勝てないことはテメェとの戦いで思い知った。テメェのような普通の能力に負けるとは思ってもいなかったからな。あんときの俺はよ……」
フランはそう言い、俺へと斬撃をすさまじい速度で放ってくる。二年前とは違いすぎる速さだった。
フランの魔法は【無抜刀の斬撃】―――剣に触れただけで刀の斬撃を放つ魔法。一回触れるたびに一回の斬撃。どうやらフランはその能力をうまく使い、指一本で一回の斬撃を飛ばしていた。さらに二刀流にしているので斬撃の量が二倍となっていた。
「クソッ! せめてここじゃなかったら……!」
「そうさせないようにここで戦っているんだよ!」
俺は攻撃する暇もなくひたすら相手の斬撃を弾いていた。部屋の中はひどい有様だったが、俺の状況はもっとひどい。
「……仕方ない。誰もいないことを願うか……」
「ああ?」
フランが怪訝な顔をしたその瞬間……
ドーーーーン!!
「ッ!!」
爆発音と同時に部屋の壁が壊れた。そうして現れたのは部屋であり、部屋がつながって、一つの大部屋となっていた。
「……なるほどな。こうなれば今よりは戦いやすくなるってか……」
「今からの挽回はなかなか骨が折れそうだがな……」
「面倒くせぇがまぁ、想定内だ」
再びフランは剣に触れ、次から次へと斬撃を放ってきたが、俺は広くなった部屋で下がったり、横に飛ぶことで躱せていた。
隙を見て懐へ飛び込み一閃しようとするが、その前に相手の斬撃が目の前に現れ、攻撃することはなかなかできなかった。
「お前の能力はあくまで抜刀だ……。どうして利き手でもない左手でそこまで正確に斬撃が撃てるんだよ?」
「俺が二年間何もしていないわけねぇだろうが……」
「そりゃ、そうだ」
「つうかテメェ、さっきから戦闘の最中に話しやがって……! 舐めてんのか!?」
「まさか、そんなわけないだろ。お前の実力は今身をもって知っているんだから」
そうして俺は自分の体が傷つきながらも致命傷だけは避けるようにしていた。
……くそ、マジできついな。あの斬撃がさっぱり止まらねぇ。戦闘が始まってからもう十五分は経ってんだ。そろそろだと思うんだがな……。
その思いが届いたのか、こちらに向かってくる足音が聞こえた。
「ッ!! テメェ、さっきの爆発は部屋を広くするためだけではなかったのか!」
「だから言っただろ……。こっからの挽回は骨が折れるって……。俺はただの時間稼ぎだ。一人だけ戦闘に参加していない奴を呼び出すには十分な爆発だったろ?」
そう、俺の狙いは外にいるAランカーを呼び出すこと。そうカタリヌを……
「大丈夫か! 助けに来たぞ!」
「「……」」
そこにいたのはソルドだった……。
……なんでお前なんだよ。お前はお呼びじゃないんだけど……。つうかなんで来たんだよ……。Bランカーは来ちゃいけないことぐらいわかっただろ……。
「さて、第二ラウンドといこうか!」
あいつ軽くスルーしたぞ……。いや、確かに因縁の相手との対決の最中に邪魔者が入ってきて、イライラするところにその邪魔者が雑魚だったら無視したくはなるけどさ。もうちょっと構ってやれよ……。
「お前が『蒼い烏』の一人か。その人をやるなら俺を倒してからにしな、相手になってやる。アンタは早く逃げな。大丈夫だ、これでも俺は門前ギルド最強の名を背負っているんだ。そんな簡単にやられはしねぇよ」
「「……」」
俺達二人は敵ながら同じことを思っていただろう。そんな顔を俺達はしていた。
……こいつうぜぇ。×2
こいつ同じギルドなのに俺のこと知らねぇとかひどくね? しかもなんだよ。ギルド最強って……、そんなんで簡単にやられない理由になるわけねぇだろ。つうかそもそもギルド最強俺だし……。
「お、おう……」
「? なんだ腰が抜けて動けねぇのか?」
うん、まぁ、お前が現れたおかげで緊張感は抜けたかな……。
「チッ、興が冷めたな。こんな中戦闘なんてする気が起きねぇよ。お前、命拾いをしたな」
フランは俺にそう言い残して去って行った。あいつなかなかノリがいいのではないだろうか……。
「興が冷めただと……! あいつ人の命をなんだと思っているんだ! 遊びじゃないんだぞ!」
そうだよ、遊びじゃないはずなのに、お前のせいで全部台無しだよ……。
「あ、あんた……」
「すまん……。俺は他の人達を助けに行こうと思っている。アンタも冒険者だろ、一人で帰れないか?」
「だ、大丈夫だが……」
「そうか。それじゃ!」
そう言ってソルドはどこかに行ってしまった。
……結果的に助かったけど何か釈然としねぇ。しかも俺はまたモブ扱いされていたし……。
俺はゆっくり腰を上げ、崩れ落ちている建物の中を歩き、玄関にたどり着いた。
カタリヌは俺を見ると
「大丈夫か! ひどい傷だ! 今すぐ手当てをしなければ!」
そう言って俺は回復の魔法を覚えている人のところまで運ばれることになった。その場所に行くまでにカタリヌは小声で話しかけてきた。
「(相当すごい戦いだったのだろう、こちらまで聞こえていたぞ)」
「(だったら助けに来てくれよ……)」
「(この場を離れることはできないんだよ。レギンさんに言われたからな)」
俺はその言葉に呆れ、ため息をつこうとしたが、その前に驚いてつくことができなかった。なぜなら連れて来られた場所に……
「無事で何よりです。エリク様」
ミレアがいた。満面の笑みで……




