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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第一章 ~モブのお仕事~
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モブの苦労

だんだん長くしていこうと思います。


2018/02/21 改稿しているうちに、長くなっていました(笑

「昨日は本当に申し訳ございませんでした!!」



 朝六時、そんな時間に冒険者ギルドのカウンターの前で土下座をする人物がいた。



 もちろん、俺である。



 昨日は、シルヴィと一緒に昼を共にするという約束を忘れてしまったのだ。



 いくら機嫌が悪かったと言えど、約束を反故にするなんて最低の極みだ。



「本当にすみませんでした!」



 再度頭を下げると、シルヴィが胸の前でわたわたと手を振った。



「い、いえっ! こちらこそ睡眠を妨害したようなことをしてしまって……」



 そういうとシルヴィも申し訳なさそうに頭を下げた。



 あぁ、このはなんて優しいのだろうか。



 シルヴィに想われる(予定)の誰だかわからない奴。マジで死ねばいいのに……。



「そ、それより! 今日は緊急クエストが入っていますよ!」



 土下座をやめない俺をなんとかさせようと、シルヴィが話題を変える。



 ごめんな。こんなクズを相手にごめんな?



 立ち上がってシルヴィからクエストの紙を受け取った。



 緊急クエストとは実力と信頼を兼ね備えた人だけが受けられる急を要するクエストのことで、実力としては、ランク『B』以上が必要になる。



 信頼はギルドの判断によるわけだが、きっと昨日のこともあって、俺のギルドの信頼は暴落しているだろう。



 アイツらマジで許さん!



 しかし、緊急クエストを任されることから、まだ少しの信頼はあると見ていいのだろうか。



 それにしても、また緊急クエストか。



 ここの緊急クエストのほとんどは、俺が朝イチに引き受けるので、他の人からすれば、一ヶ月に一回程度としか思っていないことだろう。



 と、本当にそう思っているならふざけんな。



 緊急を要している分、金が弾むので引き受けるのは別にいいが、その分の苦労は普通クエストとは比にならない。



 ただクエストをこなすだけでなく、早さも大事になっていることの大変さを、アイツらはきっと知らないだろう。



 それを一ヶ月に五回は受けている俺をねぎらってくれても誰も文句は言わねぇからな?



 ぐちぐちと心の中だけで、文句を言ってると、シルヴィは緊急クエストの内容ついて話し始めた。



「どうやら最近、この付近の村で魔物が大量発生しているそうなんです」

「大量発生?」



 魔物の大量発生など、よくあることではないが、とりたてて緊急クエストにするものでもない。



 魔物を大量に狩れることから、冒険者達は楽しみにしていて、普通クエストにしても、あっという間に解決してくれるはずだ。



「それなら普通のクエストで解決出来ると思うんだが」



 むしろ、人手の多さを考慮して、そっちの方が断然いいはず。



 にもかかわらず、緊急とした理由は別にあるはず。



 そう、例えば。その大量発生した魔物が強すぎるみたいな……。



「それがどうやらその魔物が【ウルフェンロード】だそうで」



【ウルフェンロード】!?



「【ウルフェンロード】っていったら、推定ランクがランク『B』じゃなかったか!?」



 ランク『B』の冒険者でやっと倒せる魔物の大量発生など普通じゃない。



 強い魔物になればなるほど、もっと過酷な環境にいるはずだ。



 それが、いるはずもない森に、ましてや大量発生。



 なるほど。



 ギルドが緊急クエストとした理由はそういうことか。



【ウルフェンロード】の討伐もそうだが、その原因を調べてきてほしいというところか。



 よく見れば、紙にもランク『A』の人しか受けられない、推定ランク『A』と書いてある。



 当然だろうな。



【ウルフェンロード】相手ではランク『B』のパーティも下手すれば壊滅の恐れがある。



「その【ウルフェンロード】達がどうやら使役されているのではないかという噂がありまして」



 あの【ウルフェンロード】を手懐けることができるのかは、甚だ疑問だが、可能性はないとは言えない。



 むしろ、いないはずの場所にいるのなら、それ以外考えられないくらいだ。



「つまり、その調査をしてほしいってことで?」

「その元凶を倒してもらっても構いません」



 倒す、なんて言うが、実際のところ捕まえる方が難しい。



 この場合の『倒す』という意味は『殺す』という意味だ。



「わかった。それじゃ場所を教えてくれないか?」



 そう尋ねると、シルヴィは地図を渡してくれて、目的地に赤丸をつけてくれた。



「ここの【エレスタ】という小さな村の近くにある森です」



 そこなら何度か行ったことがある。



 確か、自然てありふれていて、自給自足の生活を行っている特徴的な村だったはずだ。

















 というわけで【エレスタ】まで来たのだが、思ったより危険を感じているようには見えない。



 むしろ、これ以上なく安心しきった顔だ。



 一体どういうことだ?



 そう思い、村長の家に行って、話を聞いてみると。



「ありゃ? その件は昨日解決したはずじゃが?」

「え?」



 詳しく話を聞くと、もう一つの冒険者ギルドがやってくれたのだという。



 王都には冒険者ギルドが二つあり、一つは俺が所属しているギルド。



 王都の門の近くにあることから門前ギルドと呼ばれている。



 もう一つは、城近くにある冒険者ギルド。城下ギルドと呼ばれているところだ。



 その城下ギルドのランク『A』のパーティが、たまたまこの村を通り、話を聞き、ついでにと解決していったらしい。



 その彼らはちょうど今朝方帰ったそうで、俺とすれ違いになったらしい。



 そう言われてみると、ここに来る前に馬車とすれ違ったような気がする。



 というか、ついでで、俺の仕事を取るなよ!! なんか、すごい恥ずかしいじゃん!!



 ほら~、この村長俺をなんかすごい可哀想な目で見てきたんだけど。優しげな視線が余計に辛い!



 こういうときってどんな顔をすればいいの? 誰か教えてくれません?



 このまま帰るのも何かもったいない気がした俺は、この村を観光することにした。



 そういえば、昨日から俺、何もしないうちに話が終わっているよな。



 ブラブラと村の中を散歩していると、大きな教会らしき建物を発見した。



 暇潰しにと、中を覗いてみると、やはりここは教会で間違いなさそうだ。



 だいぶ古いが、ステンドグラスに大きな十字架もある



 立派なものだな、と教会の中を眺めるように見ていると、



「あなたっ! そこで何をしているのっ!」



 と、声をかけられ後ろを向くと、そこには怖い顔をした、赤い髪の女性が立っていた。




2018/02/21 改稿

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