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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第三章 ~招待されたモブ達~
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宣戦布告後の次の朝

「結局その後どうなったの?」


朝、シルヴィとアイシア、それにリンとヘイゲルに昨日のことを話すとアイシアがそう質問してきた。ちなみにいうとリンはヘイゲルから距離を取っていた。


「特になにもなかったな。相手の襲撃は来週だからな。そのときAランカーを中心に『蒼い烏』を殲滅するってな感じで昨日はそのまま解散したよ。まぁ兵士達はだいぶ焦っていたけどね……」

「予告前に襲撃してくることはないの?」

「彼らはそんな真似はしない。それなら予告をせずに襲撃する」

「ヤケニ自信満々ダナ。ソイツラヲ知ッテイルヨウダガ、一体何者ナンダ?」


ヘイゲルの言葉にシルヴィやアイシアも頷いていた。


そういえば、シルヴィがこのギルドに来たのはその事件の一、二ヶ月後だったなぁ……。


「『蒼い烏』ってのは不幸という幸せを運ぶ烏―――つまり鳥という意味だそうでな。さっきも言ったように最凶の犯罪集団だ。今回の奴らがどうかは知らないが、二年前は約三十人ほど……ヘイゲル達と同じぐらいの数がいた」

「? 意外と少ないんですね?」

「そうね。最凶の犯罪集団って言うぐらいだから最低でも百人、いえ、千人ぐらいだと思ったわ」


そんな二人の反応につい笑ってしまった。それは馬鹿にしたのではなく、俺も思ったことだからだ。


「そうだ、俺もそう思ってたんだけどさ……、そのせいで世界がおびやかされたんだ」

「「「?」」」


三人は何のことかわからないようだった。リンは話に飽きちゃったのか俺の膝で眠っていた。超かわいい。


「敵の数が少ないとさ、相手の尻尾がなかなか掴めないんだ。だから情報が入ってこないうちに被害を食らってたんだ」

「でも、たった三十人でそんな大きな被害って……」

「一人一人がとんでもなく強いんだ。それこそただのAランカーが倒せる相手じゃない」


それに対して三人は息をのんだ。


「彼らは一人一人がA級犯罪者だった人達なんだよ。彼らは極悪犯で殺しに関してはとても長けている奴らなんだよ……」

「え、A級犯罪者ってつまり、死刑囚ってことですか!?」

「ソンナ奴ラガ三十人……。確カニ厄介ダナ……」


あれは厄介なんてもんじゃない!と言いたくなったが、必死にこらえた。


「それで、なんでエリクがその『蒼い烏』について詳しいの?」

「ああ、それはな……、俺もその『蒼い烏』の……」

「一員ダッタノカ!?」

「んなわけねぇだろ! 話を最後まで聞けよ!」

「ス、スマン……」


まったくお前のせいでリンが起きちゃったじゃないか。殺すぞ。


俺はヘイゲルにため息を吐いて、話の続きを言った。リンはまた眠ったようだ。


「俺はその『蒼い烏』を殲滅する精鋭部隊にいたんだよ」

「もしかしてそのときからエリクはAランカーだったの?」

「あぁ。俺は三年前からAランカーだよ。ちなみにソルドの奴はその前からいたがな……」

「うわぁ……」


そんな顔をしないでやれよ。俺もあいつはAランカーだと思っていたが……。


「貴様ハ、ソノトキ誰カト戦ッタノカ?」

「ああ、戦ったよ。そのときの相手もだいぶ強かった。強さ的にはほら【アーマーマン】ぐらい」

「【アーマーマン】?」

「えっと……、ほら……、前に言った、【アーマーソルジャー】の百体分の力を得た奴」

「ソウイエバソンナコトヲ言ッテイタナ」

「でもそれってエリク負けたんじゃ……」


うっ! 痛いところを突かれた……。だが、あのときはちゃんとしたわけがあるのだ。


「あのときは、その前に魔力の七割が持っていかれた状態だったんだよ……」

「それならしょうがないですね」


えぇ……。シルヴィもそんなこと考えてたの……。ちょっとショックだよ……。俺あの時が一番頑張っていたのに……。あ、もちろんリンの時も頑張ってたよ。


「まぁ、とにかく俺が知っていることはこのぐらいかな」

「……ふわぁ。えりく、話終わった?」

「ああ、終わったよ。おはようリン、今日もかわいいね」

「////ッ!!」


あっ、つい心の声が出ちゃった。やべ~、これじゃただの変態じゃん。……おい、誰だ今、その通りだろと思った奴。しばき倒すぞ。


「エ、エリクさん! 何を言っているんですか!」

「そうよ! エリク! 何言っているのよ!」

「ふ、二人でそこまで否定しなくても……。だって二人だってリンがかわいいって思っているでしょ……」

「そ、それはそうですけど! でもダメなんです!」


だからなにがだよ……。どうしてそんな怒っているんだ……?


「だ、だってアンタがそんなこというと、もはや犯罪レベルだもん……」


犯罪……? っ! まさか俺がリンを性的な対象で見るってことか!? 

いやいやいやいや! それはさすがにないって! 俺そこまでバカじゃねーよ!?


「エリク……、ソコマデ行ッテシマッタカ……」

「やめろ! そんな目で見るな!」

「ついに……えりくが……」

「ち、違うんだ、リン! そういうのではない! 俺とリンは友達だろ!?」

「えっ、……どういうこと?」


あ、あぁ……。ついに絶交された……。終わった……、俺の人生終わった……。


「えりくは……わたしの……」

「だ、ダメです! リンちゃん、それはダメ~~~!」

「私だって言われたいのに!」


俺はこれからどう生きていけばよいだろうか……。はは……、もう、死んじゃおっかな……。……ぐす。


「フム……、エリク……、結婚デキル歳マデ我慢シロヨ……」

「「「だからやめて(ろ)!!」」」

「へいげるさん……!」


それ以降なぜかリンはヘイゲルに懐くようになった。



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