モブの日常
「エリクさん、今年もあれ、やるそうですよ」
「あれ? ……あぁ、あれか」
「? あれって何、エリク?」
いつも通りの朝に俺とシルヴィとアイシアは話をしていた。今日は珍しく喧嘩していないのだが、その理由はというと……
「えりくっ! あれって何?」
俺の膝にはついこの間友達になったリンがいた。さすがに子どもの前では喧嘩はしないことに俺は安心感を覚えた。たまに二人がリンをじっと見つめるのはよくわからないが……、まぁ愛でているのだろう。
「「(いいなぁ……)」」
「?」
二人が小声で話していることは聞こえているのだがどういう意味だろうか……。そんなにリンを抱きたいのかな……。
「えりく?」
「あ、あぁ……。えっとなんだっけ……、ああそうだ、あれについてだな」
俺はリンを一度持ち上げると自分の姿勢を正し、また自分の膝にリンを乗せた。
リンの顔が赤かったが、くすぐったかっただろうか。
「あれっていうのはな……、王様の誕生日会のことだよ」
「誕生日会?」
アイシアが言うことに俺は頷いた。
「ここの王様はやけに子どもっぽくてな……。冒険とか勇者、英雄とかの話が好きなんだよ。それで毎回自分の誕生日に二つのギルドの冒険者達を全員集めるんだ」
「わたしにも王子様いるよ……////」
「そ、そうか……。その王子様と結ばれればいいな……」
ジンの野郎……。この子を泣かしたらマジで許さねぇ。カタリヌは……まぁどうでもいっか。そもそも俺、ジンと話したこと一回もないし……。
「……エリクさん。話を続けてください」
……なんでシルヴィが怒ってんの? はっ! まさかこんな子どもにまでやきもちを妬いているのか!? どんだけジンのこと好きなんだよ……。
「えっと……まぁ、それで皆で王様の誕生日を祝いましょうってところかな……」
「へぇ~、それってどこでやっているの?」
「城だと兵士達が邪魔だとかで毎年別荘で開催しているんだよ」
「別荘って?」
「ほら……、こっから馬車で大体三時間ぐらいで着く『フロンゲイル』っていうところだよ」
「それで、各自準備のために一週間前、つまり今日冒険者の皆様が打ち合わせとしてお呼ばれされるんですよ」
俺の後に続いてシルヴィがそう言った。するとリンが不安そうな顔をして……
「えりくも行くの?」
そんな顔しないでくれ……。そんな顔されると行きづらいじゃないか……。
「リンちゃん、ダメだよ……。邪魔しちゃ……」
シルヴィがリンに言い聞かせていると……
「わたしも行く!」
「だ~め! リンちゃんは私とお留守番!」
「え~!?」
シルヴィとアイシアはリンの説得に試みていたが、リンはそれを断固として認めようとしなかった。そこで俺が助け船を出した。
「それなら、一週間も猶予はあるから、そのうちのどっかに俺と遊びに行こうか」
「「「ッ!!」」」
まぁ、リンはまだ子どもだし、俺という『一人の友達』と遊びたいんだろうと俺は考えた。リンは友達がまだ少ないから俺と遊べるのがうれしいはずだ。……ジンではないところが残念だが。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「待ってください、エリクさん!」
シルヴィとアイシアが身体を乗り出してきて、俺は二つの胸を直視するような感じになってしまい、思わず目を逸らしてしまった。
「ど、どうしたの? 二人とも。お、落ち着いて……あ、あとちょっと離れて……」
「わ、私も、ふ、二人で買い物を……」
「私だって、ちょっと二人でそこら辺を散歩して……」
そう言って二人はいつも通り睨み合った。
……だからなんでこの二人は俺で勝負するの? 目的間違えていない? 君たちの本来の相手はジンでしょ……。
「マッタク……朝カラ騒ガシイゾ……」
後ろから声が聞こえ振り返ってみるとそこには厳つい顔の【リザードマン】がいた。
「ヘイゲル……、起きてたのか?」
「マアナ……」
「えりく……、この人……怖い……」
「ッ!!」
ブッ! こ、怖いって……! ク、クク……。やべっ、笑いが止まらねぇ! だってこいつリンに操られているとき、めっちゃ真剣だったのに……っ! そ、それなのに……こ、怖いって……!
「貴様! 笑ッタナ!」
「い、いや……、だって……!」
「えりく~、この人いやだ……」
「ッ!!」
「ク、クク……! イヤって……っ!」
「貴様、ダカラ笑ウナ-!」
「アハハハハハハハハハハ!!」
ギルドの中の声は誰も聞いていなかったが、ギルドの中は二人の女の喧嘩の声と俺の笑い声が響いていた。
ギルドを出て、俺は早速家に帰って城に行く準備をした。実際城では王様の誕生日会の打ち合わせぐらいしか行わないが、たまにどっかの国のスパイとかが入ってきているときがあり、それを倒すための準備をしなければならない。
コンコン
誰かが戸を叩く音がしたので俺は……
窓から逃げた。
なぜって? そりゃ……
「むっ!! 貴様待て!」
「待てと言われて待つ奴を俺は一度も見たことがないね!」
「なら待つな!」
「はなからそのつもりだっ!」
「貴様~~~!!」
「で? 何? またアドバイス?」
「そ、そうだ……」
俺の前には肩を落としたAランカー、【紫鮫】と呼ばれる女性がいた。
「だから、俺は恋愛とか詳しくないと言っているのに……」
「何でもいいのだ! 何かないか! 男がうれしいと思うこととか!」
……そう言われてもな、全く思い浮かばない……。
「貴様はなにか……こういうことをされてドキッとしたことはないのか?」
「ドキッとしたことねぇ……。……あっ」
「ッ! 何かあるのか!」
「いや、あるにはあるんだけど……」
カタリヌには難しいというより、その前の段階なんだよな……
「私にできないものはない! ジンを我が物にするためだ! 覚悟はできている!」
いや、覚悟とかの問題じゃないんだけどな……。はぁ……、言うだけ言ってみるか。
「む、胸を強調されると……、ド、ドキッとするかな……」
「……」
カタリヌは自分の身体を見て、胸のあたりを触ると……
「~~~~!!」
泣きながらどっかに行ってしまった。
……だから言ったのに。……いや、言ってはなかったかな。
そう思って俺は家へと帰り今度こそ出発の準備をした。
このタイトルはできるだけ使いたくなかった……。
なぜならこのタイトルほとんどのものに当てはまっちゃうから……。




