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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第二章 ~モブと愉快なお友達~
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本編という名の裏の裏話Ⅰ

「それでは、作戦の概要について説明する」



【紫鮫】こと、カタリヌの声にギルドの中の空気がさらに引き締まる。



 彼女の発言の影響力は良くも悪くも、ギルドを完全に支配しているようだった。



 良い、というのは、彼女という絶対的な指揮役がいることで、冒険者達が一つの団体、いわゆる完全なパーティになっているということ。



 悪い、というのは、逆に彼女の言うことはすべて正しいのであって、それに反対の意を少しでも見せてはいけないと、全員が互いに思ってしまっているという状況だ。



 この状況では、カタリヌがもし間違った発言をしていても、誰もそれを訂正できないということだ。



 しかし、それもランク『A』の彼女はとうに気付いている。だから、



「まぁ、そう固くなるな。緊張していては全力を発揮できないものだ」

「そ、そう言われても……なぁ?」



 ソルドの周りへの共感を誘うような態度にカタリヌはため息をつきそうになるのを堪える。



「カタリヌさんの言うとおりです。緊張するな、とは言いませんが、これはあまりよくない雰囲気のように感じます」



 だが、そんなときにいつも背中を押してくれるのが主人公と呼ばれる人物だ。



「ジン」

「……さすがだな」



 自分の知らない間に成長してしまった子を見たような目をソルドに対して、カタリヌは改めて尊敬の意を込めて笑った。



「このままではもし仮に、作戦が失敗したとき、俺達はすべての責任をカタリヌさんに押しつける形になってしまう。そんな責任感で本気と言えますか?」

「それは……確かに」



 人が本気なるというのは、自分を極限まで追い込むことと同義だ。



 すべての責任を他人に押しつけた時点でそれは本気とは言えない。



「絶対に助けると決めたからここに俺はいるんです」

「今この場に腰抜けはいらない」

「ミーシャ!?」



 さすがにそれは言い過ぎでは!? そう思ったジンだが、それは杞憂に終わった。



 そこまで言われて、考えを改めない冒険者はここにいないのだ。自分達からやりたいと助けたいと言って参加した冒険者達だ。いるわけがない。



「よし。いい目になったようなので、改めて説明させてもらうぞ」



 少し話が逸れてしまったが、おかげで士気が高まった。



「まず、先ほども言ったように今回は大きく二つの班に分ける」

「捕縛班と救出班ですね?」



 ジンの言葉に静かにカタリヌは頷いた。



「それには人手が足りない。だから――」

「あの傭兵ギルドに手を貸す、ってところまではいいんですが」



 カタリヌに重ねるように声を発したのはソルドだった。そのソルドの声色からもわかるように、どこか心配したような目で向かいのギルドを見る。



 だが、カタリヌは「だから心配するな」と安心させるかのように小さく笑う。



「お前達はあの魔物達と話したことはあるか?」

「それは……」



 少し変わった・・・・・・あの魔物達は町を歩いていても、やはり不気味であり、恐怖の対象であった。



 町の人々も彼らに話しかけられないように、近づかないようにしている。



 だがそれは、ここの冒険者達も同じだった。



「私は一人・・だけだが、話したことがある」

「そうなんですか?」



 ジンですらやはり少し抵抗があるのか、話したことはないようだ。



「と言っても、まだ私に心を開いてはくれていないが」



 でも。



「すぐにわかったよ。彼らは周りの私達を、私達以上に恐怖の対象として見ているのにもかかわらず、それでも、少しでも私達に近づこうとしているのが」



 ランク『A』ともなればやはり感情すらも読んでしまうのか、そう思ったジンだが、首を横に振って自分の考えを否定した。



 そして、ミーシャを見た。



「……?」



 ミーシャと会ったとき、ジンが真っ先に感じたのは寂しさだった。



 それを感じたからこそ、ミーシャに話しかけたのだ。



 別にカタリヌがすごいわけではない。誰にでも備わっているものだ。相手の感情を気にして、その感情を読み取ろうとするのは、人間であれば当然のことなのだ。



 だとすれば。



「どっちが人間なのかわからなくなってきましたよ」



 感情を読み取ろうとも思っていなかった自分達は果たして人間と呼べるだろうか。ジンはそう自分に問いかけた。



 その答えはカタリヌが教えてくれた。



「心に応えたいと思うのは人間だけではない、たったそれだけのことだ。犬であっても、猫であっても、な。であれば、魔物もそうであってもおかしくないだろう?」



「彼らにそれを教わるとは私も思っていなかったが」と最後にカタリヌは付け加えた。



「……わかりました。俺も彼らを信じます」

「ジン。お前まで」

「どっちにしろ、人手が足りないのは事実なんです。他に手はありませんよ」

「そ、それを言われてしまえば、何も言えなくなるんだが……まぁ、そうだな」



 ソルドが渋々といった感じに頷くと、続けざまに冒険者達も頷き始めた。



 カタリヌはそれを見守ると「決まったな」とようやく腰を落ち着けた。



「いいか? まず、やはり何と言ってもどのように人員を分けるか、なんだが」



 カタリヌは自分に確認するように僅かの間、目を閉じると頷いた。



「捕縛班を冒険者。救出班を傭兵ギルドに任せよう」

「理由を聞いても?」

「まず第一に、中途半端に混ぜてもメリットはないってことだな」



 冒険者と傭兵の混合班が連携できるかと言われれば、正直難しいところだろう。ましてや、

 冒険者達は傭兵達にあまりにも壁がありすぎるわけで。



「では、なぜ救出班を傭兵ギルドに任せたのかというと、洞窟の中は私達よりも彼らの方が慣れているはずだからだ」

「ちょっと待ってください。ジャックさん達が捕まっているところって洞窟なんですか?」

「そうだった。順番を間違ってしまったようだ」



 カタリヌは自分の懐から一枚を取り出し、全員に見えるように机の中心に置いた。



「首謀者、つまり私達が捕まえるべき相手の名前はラルカという」

「ラルカ?」



 その名前に真っ先に反応したのはソルドだった。



「ソルドさん? 知っているんですか?」

「まさか【無限のラルカ】ですか!?」



 ジンの質問に答えず、ソルドはそう尋ねると、カタリヌはコクリと頷いた。



「マジかよ……」

「ソルドさん?」

「あぁ、すまん。ラルカってのはかなりヤバい相手だ」

「そんなにですか?」

「あぁ、なんて言ったって」



 ――ランク『A』の冒険者だったんだからな。




2018/04/08 割り込み

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