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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第二章 ~モブと愉快なお友達~
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モブとリザードマンの経緯

【人間】の俺と【リザードマン】のヘイゲルは二人で仲良く寝そべっていた。



 おっと。



 そう言ってしまうと、腐った女性陣の誤解を受けてしまうか。



 ……違うからな? 俺は受けでも攻めでもないからな。



 今はそんな話をしている場合ではないのだ。



「……なぁ、ヘイゲル」

「……ナンダ?」



 俺の呟くような小さな声に、ヘイゲルは返事をした。



「俺達……ってさ。狩りに来たんだよな?」



 俺のための狩りではなく、ヘイゲル達のための食料集めだ。



 できたばかりということと、魔物のギルドということもあり、仕事がそうそうに入って来ないヘイゲル達は狩りをするしかない。



 それの手伝いに駆り出されたのが俺だ。



 ギルドへの報告を忘れたことへの贖罪と思えば別に何ともないが。



「目的ヲ忘レルトハ冒険者失格ダゾ」



 俺の問いに少し苛立ちながら答えたヘイゲルを横目で見る。



「別に忘れたわけじゃないから安心しろ。が、そんなことよりもだ」

「ソンナコトダト? 貴様今ソンナコトト言ッタノカッ!」



 俺が思っている以上に彼らの食糧問題は深刻なのかもしれないが、俺の考えは変わらない。



 そんなことよりもだ。



「あまり大きな声は出すなよ……。それで、実際どうすんの? 俺達、獲物を狩るどころか王都に帰れないかもしれないんだけど?」

「ヤハリ、欲張ッテハイケナカッタヨウダナ」

「……そうだなぁ」



 上に目線をずらすが、そこに映るのは満天の青空でもなければ、厚い雲に覆われた空でもない。



 そもそも空でもない。



 あるのは真っ黒な石の天井。



「困ったなぁ」

「困ッタナ」



 そう言って、俺達二人は今から三時間前までのことを順に思い出していった。
















 今から三時間前。



 森の中を俺とヘイゲルは二人で話しながら歩いていた。



「エリク、オ前ノ趣味ニツイテトヤカク言ウツモリハナイガ、実際ノトコロ、アッチノ趣味ハドウナンダ?」

「あっちの趣味?」



 趣味に二種類もあっただろうか?



 そう思って尋ねてみると、ヘイゲルは直球で聞いてきた。



「アノ二人ノドッチガ好キナンダ?」



 なるほど。趣味ってそういうこと。



「シルヴィとアイシアのことか?」

「名前ハマダワカランガ、オソラク」

「ふむ……」



 なるほどね。



 お前はどうやら全然わかっていないようだ。



 まぁ、それも仕方あるまい。コイツはジンのことをまだ知らないのだから。



 でも、そうだな。



 可能性はゼロだが、俺自身どう思っているのか。



 それくらいは答えてやれないこともない。



 面白い回答が返ってくるとは限らないが。



 要するに、俺がシルヴィとアイシア、どちらのことが好きなのか。



 ヘイゲルが聞きたいのはそういうことだろう。



 答えは決まっている。



「何にもねぇよ」



 実際、あの二人とはかなりいいところまでいったのではないかと思ってはいた。



 けど、その二人は俺ではなくジンに惹かれてしまった。



 恋になるまでの何かまでもがない、と言えば嘘になる。



 もしも、あともう少しジンが現れるのが少し遅かったら、俺はきっとどちらかに惹かれていたかもしれない。



 けど、そんな仮定に意味は無い。



 ジンのことを想っている二人を見ていたら、俺は今まで積み重ねてきた感情が一瞬にしてなくなったのを感じた。



 だが、俺はそれから、二人をなんだかんだ言って応援しようという感情があることにも気付いた。



 ……まぁ、今は応援というよりストッパー的な役割ではあるがな。



 いや、本当。おかげで毎朝泣かされる運命を背負わされたわけだけど。



「それだけだ。今は二人になんとも思ってねぇよ」



 それを聞いたヘイゲルは、やけに納得した様子で頷くと、



「ナルホド。ソウイウコトカ……。悪イコトヲ聞イテシマッタナ」



 と、なぜか小さく息を吐いた。



 よくわからんが、これは励ましと取っていいのか?



「気にすんなよ」

「イヤ、オ前ジャナインダガ……マァ、イイカ」



 なんだよ、その意味ありげな閉じ方は。気になるじゃねぇか。



 ヘイゲルのおかげで、やけに暗いテンションに下がってしまったが、森をしばらく歩いていると、俺は視界の端で何かが動いたのを見逃さなかった。



「むっ。あれは!」

「ドウシタ? 何カ見ツケタノカ」



 王国近くには生息していなかったはずではないか?



 いつからこの森に移動してきたのだろうか。



「【ホーンラビット】じゃないか」

「知ッテイルノカ? アレハ美味イノカ?」

「美味い! あれを食べたのはつい最近だがなかなかいけるぞ!」



 あの味はいまだに覚えている。



 あのおっちゃんの店で初めて外食を経験して以来、俺はぶらりと外食に出て、気に入った店をチェックしているほどだ。



 つまり、俺が外食を知った原点があの魔物にあるということだ。



「ナラ、早速捕マエルカ」



 ヘイゲルがそう言って、草陰から出ようとするのを俺は片手で制した。



「あいつらは、基本的に群れで行動する。少し様子を見て、群れを見つけてから飛び出そうぜ」



 せっかくだから、大量にゲットしようではないか。



 ヘイゲル達もたった一匹では足りなさすぎだろう。




 ヘイゲルは頷き、様子を伺った。



 しばらくすると【ホーンラビット】は移動し、それに伴って俺達も移動した。



 すると、俺達は計画通り【ホーンラビット】の群れに遭遇した。



「よし、それじゃいくか!」

「イヤ、待テ!」



 俺が気合いを入れて行こうとしたところで、今度はヘイゲルが俺を制した。



「なんだよ? 欲張りすぎると失敗するぞ?」



 これ以上の成果なんてないはずだが?



 しかし、ヘイゲルはそんな俺を鼻で笑った。



 今、ここで殺してやろうか、と本気で思った。



「マァ少シ待テ。イイモンガ出テクルゾ」

「はぁ?」



 一体何を言っていやがる、そう言いかけたところで、俺の耳に独特な音が聞こえた。



 風を叩くような力強い音だ。



「……なるほどな。確かに二人でなら」

「ソウイウコトダ」



 俺達はお互いの顔を見て、ニヤリと笑った。



 まさか【ホーンラビット】がこんな奴まで呼び出すとはな。



「GYAAAAAAAAAッッッ!!」



【ホーンラビット】の群れのちょうど真ん中にでかい物体が降ってきた。



 地震のようなすごい揺れが森全体を揺らすが、俺とヘイゲル達は笑みを止めない。



 全身に鉄のように硬い鱗をまとい、その大きな翼の先には鋭い爪が太陽を反射する。



 巨大な体の後ろには、そこらの大木を何本も集めたほどに太い尻尾がむち打っていた。



 ドラゴン、と呼ばれる伝説級の魔物だ。



「ヒャッホー! ドラゴンといったらあの超が何個もつく美味いってはなしだぜ!? しかも、あれは【ギガントドラゴン】じゃねぇか。これ以上ないくらいの上物だぜ!」

「その分強イガ、俺達二人デアレバ十分倒セル相手ダナ」

「今日はご馳走だぜ! 今から楽しみだz――」



 俺が飛んだそのときだった。



「「GYAAAAAAAAA!!」」



 さらに新たな雄叫びがまた二つ聞こえた。



「「………………エ?」」



 俺とヘイゲルがゆっくりと後ろを振り返ってみると、二体のドラゴンが俺達を見ているではないか。



「「………………エ?」」



 思考停止しそうになる頭を必死に働かせようとする。



 だが。



「「「GYAAAAAAAOOOOOOOON!!」」」



 三体のドラゴンの咆哮に腰をぺたんと地面につけた。



 まるで女の子になったようにお互いの肩を握って震える。



 ドラゴンの下敷きにされた【ホーンラビット】はとても食べられそうには見えない。



 さらに言えば、俺達も食べ物ではないのだが、ドラゴンたちは予想外の獲物にうれしそうに雄叫びをあげる。



 二人してぱったりと死んだふりを決めると、ドラゴンの叫びに隠れるように呟いた。



「欲張るんじゃなかった」

「欲張ルンジャナカッタ」















 俺達はその後、ドラゴンの大きな手で運ばれ、そのまま洞窟に放り込まれたわけだった。



 俺達が投げ込まれたときには魔物達の死骸がそこらに転がっていた。



 枕にするにはあまりにも悪趣味としか言いようがない。



「どうすっかなぁ……」



 と、ここから先が冒頭にあたるわけだ。



 それでは三匹のドラゴンは今何をしているのかというと、洞窟の表でお話に熱中している。



 人で言えば、お話好きのおばさんくらいの年齢なのかもしれない。



「欲張りすぎると失敗するなんて言ったのがもうマズかったのかねぇ……」

「ドウイウ意味ダ?」

「その時点で失敗フラグが立っていたってことだよ」



 よくわからないとヘイゲルが眉に皺を寄せる。



 生きて帰ることができたときに改めて教えてやるからな。



 生きて帰れたら、な。



 ……はぁ。



 どうしたもんかねぇ。




今回みたいな話が一番書きやすい……


2018/03/13 改稿

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