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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第二章 ~モブと愉快なお友達~
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モブの情報収集方法

「昨日はすみませんでした……」

「エ、エリクさん!?」



 これで何度目だろうか。



 冒険者がいない朝のギルドでシルヴィに頭を下げたのは。



 今日は孤児院が珍しく忙しいらしく、アイシアがいないので今いるのは俺とシルヴィの二人だけだ。



 正確に言うなれば、ギルドの奥には何人かいるそうなので、厳密には違うのだが、俺からしてみればここには俺とシルヴィしかいない。



「ほら、ヘイゲル達のこと……」

「……あぁ、いえいえそれなら全然」



 シルヴィはいつも優しいからな。



 すぐに許してくれるが、今回ばかりは俺が俺を許してはいけないだろう。



 なんだって、傭兵ギルドを提案したのは他でもない。俺なのだから。



「別に構いませんよ。もともと私から言おうと思っていましたし」

「でも、話を持ち出した本人が何もしないっていうのはな……」



 シルヴィは全然構わないと首を横に振るが、やはり俺自身が腑に落ちない。



 そんな俺にまたしても気を遣ってか、シルヴィが「本当に大丈夫ですから」と微笑んでくれる。



 本当にいい子やなぁ。



 ジンになんかあげたくねぇよ。



 二十代にして、子を出す親の気持ちがわかっちまうぜ……。



 ……おい。



 今、まさかと思うが俺が二十代ってこと忘れてなかったか?



「そうだ。エリクさん、最近この辺で人が行方不明になっているのはご存じですか?」

「いや、まったく」



 初耳だ。



 何? またなの?



「一応冒険者様達に気を付けるよう呼びかけているんですが……」



 行方不明、か。



 どうも先日の事件を思い出して仕方ねぇ。



 この世界はどれだけ人を攫えば気が済むのやら。



「前の事件と何か関係しているのか?」



 また魔法師を狙っているとすれば、今度は大事になる前に解決しなければならない。



 先日の一件、俺以外の奴らは楽観的に捉えているが、あれは奇跡だった。



 もう一度同じ事件が起こったとすれば、今度こそ世界の終わりかもしれないのだから。



 だが、シルヴィはそんな俺の考えに首を横に振った。



「それはないと思います。アデラントは今動くことができない状態ですので。別の人による犯行ではないかと考えています」



 それを喜んでいいことなのか、悪いことなのか。



 良く言えば、危険な香りが薄まった。



 悪く言えば、手がかりはなしってわけだ。



「……わかった。俺も少し調べてみるよ」

「無理だけはしないでくださいね」



 俺がこのギルドの中で一番強いのに無理しないでどうすんだよ。



 別にこれまでの仕事もおざなりにしていたわけではないが、このギルドのランク『A』が俺しかいない以上、俺が頑張らねぇといけないだろうに。



「善処するよ」



 そう笑って返すと、俺はギルドを出て早速調査に乗り出すことにした。



 こういうのを『早起きは三文の得』って言うんだっけ?



 いや、違う。これはあれだ。



 そう、たしか。



「善は急げ、だったな」














 と、いうことでギルドを出たものの。



「さて、どう調査を始めるとするか」



 よくある作り話ではこういうとき、行きつけの情報屋から何かを教えてもらうところだが。



 俺がそんなカッコイイ存在に見えます?



 何だったら、俺がその情報屋的な役回りを押しつけられているレベルだぞ?



 当然、仲間もいないし。独自に情報を収集しなければならないわけだ。



 まぁ、手っ取り早く町の人に聞くのが一番だが、いかんせん俺のメンタルはビックリするほど弱い。



 そうだな。例えば、



「最近人が消えているそうですが、何か知りませんか?」



 と聞いたとしよう。



 それに対して相手に、



「知るわけねぇだろ。こっちが知りてぇんだよ。さっさと調べやがれ」



 とでもまさに正論を言われてみろ。



 泣くぞ、俺が。



 赤の他人に冷たい態度された時点で、俺のガラスの精神は砕け散る。



 それ以降他人と話さなくなるかもしれないレベルだ。



 ということで、俺流の方法に出ることにした。



 人と話さずに情報を得る方法。



 コミュ障の人も明日から使えるテクニック!



 やり方は簡単!



 ただ耳を澄まして歩くだけ! 簡単でしょう?



 名付けて『壁に耳ありモブにも耳あり作戦』だ。



 一般人達の間で広まっている噂は外れることも多いが、ときどき的を射ていることがある。



 超機密情報などを噂だけで国民が独自に推測して、俺達でも考えなかった結果を導き出すことがある。



 これがときどき当たっているのだから、あながち馬鹿にできないところだ。



 しかし、外れることも多々あるので、慎重に噂から情報を切り取らなければいけないが。



 と、まぁ。



 こんな感じで、人と話さなくても情報を入れようと思えばできなくもないのだ。



 俺はランク『A』の冒険者だ。



 これくらいは当然できる。



 相手を知るならまずモブから、っていう言葉もあるしな!



 見直したか、この野郎!



 これで昨日の件はチャラといこうぜ!



 ……なんか『作戦』みたいだな。



 ガンガンいこうぜ、的なやつだ。



 ……。



 チャラといこうぜ!



 ――――――――



『おい、聞いたか? あそこの店結構うまいらしいぞ』

『そんなことより俺はあの店のデザートの味が忘れられないぜ……』



『ねぇ、聞いてよぉ。最近私不幸なことが起きているのよぉ』

『へぇ。例えばどんな?』

『お金を落としちゃって拾おうとしたらぁ、猫がそれを咥えて行っちゃってぇ』

『マジかよ。それは災難だったな』

『この前なんかぁ、目の前に花瓶が落ちてきてぇ。ビックリして転んじゃったのよぉ』

『それは不幸よりかは運が良かったようにも聞こえるけど……』



『ソルドさんは本当にすごいんだ! なんてったってギルド最強だからな。あの人は今にでもAランカーになって、あの【紫鮫】だってきっと倒せるぐらい強くなるんだからな!』

『お前はホントにソルドを尊敬してるんだな』

『当たり前だ! あの人はな――』

『もうわかったって……』



 ――――――――



 ……ダメだ。全然情報が入ってこない。



 昼まで粘ってみたがみたが、どうでもいい情報ばかり耳に入ってくる。



 どっかの店の飯やらデザートやらが美味しいとかどうでもよすぎる。



 ソルド教の布教が一番どうでもよかった。



 特に、このソルド教の奴。



 あれは、ギルドでジンと話していた奴だ。



 怖いわぁ。



 目がこれ以上なく生き生きしていたぞ。



 さながら【紫鮫】を語るソルドだ。



 やはり神と似たり寄ったりする奴が集まるのか。



「さて……。まったく情報が入ってこないがどうしたもんかな」



 今回に関しては、全く情報が入ってこないから調べようがない。



 行方不明になった奴がいるのは間違いなくとも、どこで行方不明になったのかも不明。



 気が付けば、ってことではあるらしいが。



「いったんギルドに帰って、いなくなった奴らが誰なのか調べてみるか……」



 念のためだ。前のこともあるし、調べておいて損はないだろう。



 というわけで、一度ギルドに戻って、シルヴィから行方不明者のリストをもらった。



 ギルドでは対策ということで、常日頃から二人以上で行動するようにと、義務づけられた。



 俺のパートナーは誰だって?



 いないよ。誰も俺のこと見えてなかったし。



 知ってるかい。



 無視より見えていない方が精神えぐられるぞ。



 ちなみにジンは、ミーシャは当然として、なぜかわからんが【紫鮫】と組んでいた。



 なんでいるんだよ、とツッコんだのは俺だけだ。



 当然のように受け入れていた皆の頭は大丈夫だろうか?



 そうしていると、俺はある重大なことに気付いてしまった。



 そういえば【紫鮫】の名前、知らねぇな。



 ものすごく今更な気がするが、そんなことを気にする俺ではない。



 まぁ、別にどうでもいいからいいんだけどさ。



 またギルドを出て、朝と同じように人の会話に耳を傾けていると……


「オ前、イイトコロニ来タナ」



 この話し方は、と思い後ろを振り返ると、昨日の夜に見たフードをかぶったヘイゲルがいた。



「オ前、ドウセ暇ダロウ。ドウダ? 俺達ト少シ行カネエカ」

「行くって、どこにだよ?」

「狩リニダ。マダ仕事モナイノニ何ヲ食ベテイケト?」



 そう言われてみればそうだ。



 たった一日だけで仕事がある方がおかしいよな。



 俺の方もどうせこのまま考えてもわからないし、少し体でも動かしとくか。



「わかった。ギルドの創設の件では悪いことをしたし、協力させてもらうよ」

「ナラ、俺達二人ダケデ行クノハドウダ?」

「……ほう、面白い」

「決定ダ」



 そう言って、俺とヘイゲルは門を出て二人で三十人(体?)分の獲物を狩りに行った。




真面目な話はまだ書きたくない……


2018/03/12 改稿

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