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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
最終章 ~最後もモブです~
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モブとリンの冒険のあとで

というわけで俺とリンは地下に落とされて、その後は俺が自分とリンの足の裏で爆発を起こして減速したのだ。ヘイゲルは後で助けるとか言っていたけどその後は一体いつのことだろうか。あれから二時間は経っているのだが。


「えりく~、早く行こ~」


リンは俺と一緒の冒険を心の底から楽しんでいるらしく、こんな状況でも元気であった。それが俺の元気の源です。


「にしてもこんな場所が洞窟の地下にあったとは知らなかったな」


俺はリンから離れないように、リンが俺から離れないように細心の注意を払いながら探索していた。今のところ魔物達が現れてはいないがもしものことがあってはならない。

だがリンはそんな俺の心配も知らずにどんどん奥へと入っていく。いや、奥かどうかは知らないが今は奥としておこう。


「えりくはいつもこんな感じにクエスト受けているの?」

「う~ん、今回みたいなのはあまりないかな」

「あまりってことはたまにはあるんだね!」

「……うん」

「よかった~! それなら絶対大丈夫だね! ならもっとここを楽しもう~!」


言えない……! 初めてだとは言えない……! だってしょうがないじゃん! リンみたいな可愛い子を不安にさせるようなことなんて言えないでしょ!


俺が冷や汗をかいている間もリンは楽しそうに歩いて、洞窟の中を興味深そうに見ていた。

しかし突然止まってウルウルと目を潤せながら俺を見た。


「えりく……、おトイレ……」

「え!? マジで!?」


一応言っておくが俺は今驚いただけだからな。リンの口からトイレという言葉を聞いて興奮するわけないからな。俺はロリコンではないからな。

リンを見守らなければいけないので離れるわけにもいかないのだがどうしようかと考えているとリンの方から袖を引っ張ってきた。


「えりく、あっち向いてて」

「待てリン! まさかここでするのか!?」

「うん……」

「それなら俺は少し離れた場所で……」

「ダメ!」

「え?」


なぜ俺は怒られた? え、ちょっと待って。なんでリンそんな目で俺を見てるの?


リンはものをねだるかのように泣きそうな目で俺を見ていた。


「えりく……」

「ど、どうした?」

「一人は怖い……」

「……!」


そうリンは冒険が楽しくてこんな状況でも笑っていたわけではなかった。俺がいたから。俺という安心材料があったからこそ笑っていられたのだ。先ほどの質問も自分を安心させるためのものだったのだろうと今更になって気付いた。


そうだ。リンは子どもだぞ。十歳の子がこんな洞窟に一人でいて怖くないはずがないのに。それなのにさっきの質問をリンのためとは言え嘘をついてしまった。あのときの答えは軽く言っていいことではなかったのに。


俺はリンを見るとニコッと笑った。リンは俺を不思議そうな顔で見た。


「わかった。俺はここで待ってるから安心しな」

「うん……」


俺は後ろを見ると目を閉じた。俺の後ろで水が流れるような音がするが俺はひたすら無を意識した。だが意識すればするほど変態的思考が俺を襲う。


やべぇ。ちょっとかっこつけてリンには言ったが、これはマジで恥ずかしい。人がトイレしているのを聞く方も恥ずかしいとは思っていませんでした。


最終的に耳を塞いで堪えきった俺の肩をリンは叩いた。


「えりくっ、終わった!」

「お、おう。そうか」


ん? 今俺の肩を叩いたリンの手って……、よし、この話はいったん置いておこうか!


それから俺達はしばらく歩いていると狭い通路が上へと向かっていて、それをさらに進むと白い明かりらしきものが見えた。


「えりくっ!」

「やったなリン!」


俺とリンは急いで上へと上がるとそこには荒野が広がっていた。


「あれ、ここって……?」

「えりく、知ってるの?」

「ああ、間違いない」


俺はリンの手を引いてしばらく歩くと俺、というよりAランカー達にとって重要な建築物が見えた。

それを見てリンは驚いたように指を指した。


「あのおっきいのって何?」

「あれは……【ヒューロン監獄】だ」


そうそれこそが『蒼い烏』が捕まっていた場所であった。まさかこんなところにあるとは思っていなかった。いや、この場合は逆だろうか。監獄の近くに洞窟があるとは知らなかった。

とにかく俺の見知った場所に出れたことで一安心したところで最悪な事態が起きた。

声が聞こえた。


「おい、妙な気配がしねぇか?」

「っ!」

「? えr―――」


俺はリンの口をすぐに押さえた。リンは苦しそうに俺の手を触っていたが、ここは我慢してほしい。

今の声を聞き間違えるはずがなかった。アイツには嫌なほど狙われた。


フラン・・・、それ本当か?」

「俺の気のせいかもしれねぇけどな」

「その気のせいであっても確認はしっかりしろよ」

「わかってるよ」


俺は冷や汗が止まらなくなった。これなら洞窟にいた方がまだマシだったかもしれない。

俺は目を凝らしてヒューロン監獄を見ると、そこにはうっすらと赤いシミのようなものが見えた。俺の予想が正しければあれはヒューロン監獄を守っていた者であろう。


まさかあいつら自分たちが捕まっていたところをアジトにしているのか!?


俺はできるだけ気配を隠していたが俺はともかくリンは気配を消せていない。今はなんとか完全には気付かれてはいないようだが、フランがここに近づいて来た時点で俺達はバレる。

俺が殺される分にはまだいいが、リンを殺させるわけにはいかない。

俺は必死に策を巡らしたその瞬間……!


トントン


俺は肩を叩かれた……。



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