モブと紫鮫の戦い
闘技場の観客席にはカタリヌの言った通り少しの人数しかいなかった。おそらく彼らがAランカーなのだろう。なぜかオルウェンとヘイゲルもいたが無視しておこう。
「エリクさん、頑張ってくださいね!」
「あ、ああ……」
まさに逃げ場なし。シルヴィにそう言われたからには手を抜くこともできない。
ため息をついた後前を向くと反対側の入り口からカタリヌが現れた。レギンも観客席にあがりオルウェンの横の席に座った。あいつらそろそろ変な関係だと疑われるんじゃないか? つうか、思われろ。
「覚悟はいいな」
「いいけど始める前に先に言っとくぞ」
「なんだ?」
「今度からお前の恋愛の手助けしないからな」
「な、なに!?」
カタリヌは突然慌て始め俺に「ひ、卑怯だぞ!」とか言っていたがもう決定事項だ。ざまぁみやがれ。
「両者、用意はいいか?」
一体どこから現れたのかわからないが審判らしき人物が俺とカタリヌを見て言った。
俺達は互いに頷くと戦闘態勢に入った。
カタリヌからは路地のときとは比べられないほどの殺気を感じた。どうやら路地のときは俺が剣を持っていなかったこともあり全力ではなかったようだ。
俺も一度目を閉じると殺気を放った。
「それでは……始め!」
審判はそう言うと同時に突如消え、俺達もそれと同時に大きく飛び出した。
ちょうど真ん中で俺とカタリヌの剣がぶつかり、互いの髪が後ろへ跳ねた。互いに相手の顔を見ながら相手の次の手を予測し、自身の次の手を考えた。
「ふ……!」
「……」
カタリヌが最初に動いた。カタリヌが横に飛んだことで俺の剣は虚空を切り裂いた。その隙にカタリヌが俺の後ろに回り込むような形で剣を横にしたまま走った。
相手を斬ると同時に距離を取る。いい手だ。
だが……
「甘い」
俺は虚空を切り裂いた剣を地面に叩きつけると同時に、その剣を支えに縦に一回転した。半回転したとき後ろを斬るように剣を振り回した。
横斬りに対して下からの縦切り。剣同士がぶつかるとカタリヌの剣が斜め横へと逸れる。そして俺は着地の瞬間、大きく膝を曲げてその状態で後ろを振り返り横斬りを放った。
「くっ……!」
上へと剣が逸れた状態のカタリヌがこの剣を止めることはできない。そんなカタリヌがとれる行動は一つ。躱すだけ。躱すにもいろいろある。単純にその場で跳ぶ、もともとの勢いを使って横に跳ぶ、少し足に力を入れなければならないが後ろに跳ぶ。この三つだろう。
俺はカタリヌが次の行動を決める前に次の行動を予知した。
カタリヌ、まず俺の先制だな。
カタリヌが後ろへ飛ぶために力を入れる前に俺は自身の足のかかとを上げた。カタリヌが足に力を入れた瞬間俺は足の裏を爆発させた。
「なっ……!」
カタリヌと一緒の方向に飛んだ俺は剣を振り抜いた。剣がカタリヌの足に当たる瞬間に俺は剣をオレンジに光らせた。超高熱の剣。
カタリヌの紫の鎧を軽く溶かし、肉が焼ける音がした。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
片足を焼き斬られたカタリヌは叫ぶことで痛みに耐えながら、もう一つの足で真上に跳んだ。その隙に剣を上から下へと振り下ろした。
「……よっと」
俺は剣を持っていない左手を左に突きだし、さっきと同じように手のひらの前で爆発を起こし右へと飛んだ。
俺のいた場所にはなぜか五つの斬撃の後が生まれた。
「それがお前の魔法か」
「ぐ……!」
俺の言葉にカタリヌは何も答えず苦しそうな顔をしていた。左足が痛むのだろう。
「焼き斬っているからな、血は出ないぜ。その分痛いがな。まぁ、あとで治せるよね?」
俺はそう言ってレギンを見るとレギンは軽く頷いた。治せなかったら土下座するところでした。
にしてもカタリヌの別称からしてアイツの魔法は一撃で四つの斬撃を起こすことだろうなぁ。アイツの剣が見えなかったっていうことはたぶんないはずだし。
「貴様、私の動きを完全に読んでいたように思えるのだがっ……!」
「思えるも何も実際読んだんだ。お前が最初のつばぜり合いから動いた瞬間にな」
「バカな……!」
「あとで教えてやるよ。だが俺は早く帰りたいんだ。このまま終わらせたいところだが……」
「くっ、仕方ない……」
「やっぱ、二個目の魔法を使ってくるよな」
カタリヌの身体から魔力が発生する。
それを見て俺も剣を深く構え、カタリヌをジッと見る。
身体強化とかその辺だとは思うが、いや~、やばい予感しかしないな。
カタリヌは目を閉じた。それから目を開けたと思うとそこから一瞬だった。
カタリヌの身体は俺の目の前に突如現れた。
「な……! くそっ!」
カタリヌは驚くほど早くなっていた。身体強化で補えるものではないほどに。剣を振る速さも格段に上がっており、それにさらに先ほどの魔法で斬撃が増えてくる。
斬撃が増えること自体は大した問題ではない。斬撃は必ず決まった場所から生まれるから。だが、それに異常な速さが加われば話は別だ。一人で多勢を相手しているような感じだ。自分の攻撃をする暇がない。
「ぐっ……」
カタリヌの次の行動は読めても身体が追いついてくれない。このままだったら間違いなく負けるだろう。
ただで負ける気はないっての……!
俺は魔力を込めると自身の傷が増えることを顧みず防御を無視して横に一閃した。
「なっ!」
カタリヌはその行動に驚き後ろへ跳んだ。そして俺はそれを見たあと倒れた。
カタリヌは俺の最後の攻撃を躱したと思って安心しているのだろう。だが、甘い。
今お前が跳んだ場所は最悪の位置だぜ……!
カタリヌの身体にオレンジの糸のようなものが現れると一瞬にして爆発が起きた。カタリヌの身体は大きく吹き飛び地面へと叩きつけられた。
「そこまで! 両者引き分けとする!」
またしてもどこから現れたのか、審判はそう言った。
そして俺は気を失った。
戦闘短すぎたでしょうか?




