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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第一章 ~モブのお仕事~
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モブの決意

 俺はソルドの後ろをついていくようにジンの通った道を追いかける。



 この方向からして【マラッカ草原】にアデラントがいると考えてよさそうだ。



「……いたぞっ!!」



 ソルドが指を差す方向に、ジンが体を引きずりながら、それでも敵に向かっていく最中だった。



 ジンの体はもうボロボロだというのが遠くから見てもわかる。



 あのバカ! そうじゃねぇだろ!



 筋は悪くないが、頭に血が上っているせいか、冷静な判断ができていない。



 あの大群に真っ向から立ち向かったところで、今のアイツの実力じゃ勝てない。



「なんだ、あれは……?」



 誰かがそう言った。



 やはり、知らないか。



 ジンが今敵対しているのは鎧を着た騎士達。



 あの魔物は召喚によって初めて生まれる召喚専用の魔物。



 推定ランク『A』



 倒し方を知らなければ、一国を滅ぼせるほどの強さを持っている。



「あれは【アーマーソルジャー】だな。別名【魂なき騎士】とも呼ばれる魔物だ」



 ランク『A』であるソルドがそう説明する。



 やはりお前は知っていたか。



 睡眠妨害クソ野郎、という汚名を返上してやってもいい気がしてきた。



「あれは国の戦闘兵器とも言われる。国が戦争するときなどにな、騎士団の魔法師が総出で召喚するんだ」

「え、ってことは……?」



 やっと気付いたか。遅すぎる。



 今から俺達が戦いを繰り広げる相手は国の戦闘兵器。



 一国を滅ぼすほどの相手を、俺達だけで対処しなければならない。



 そして、ジンをミーシャのいるところに送り出さなければいけない。



「いいか。最初っから全力でいかないと、俺達はたちまち全滅だからな」



 ソルドの言うことに俺は心の中だけで賛同した。



 だが、それだけでない。



 あの【アーマーソルジャー】は有力な魔法師の灰によって生まれた魔物だ。



 もしかしたら、普通の【アーマーソルジャー】よりも強い可能性がある。



 もしかしたら厄介な特性を持ち合わせているかもしれない。



 それをソルドもきっと気が付いているはずだ。



「……ッ! ソルドさんっ!」



 誰かの叫びに俺が前を見ると、ジンは【アーマーソルジャー】に吹き飛ばされたところだった。



 だから言っただろうがっ。



 もはや傷だらけで起き上がることも満足にできないジンへと【アーマーソルジャー】の剣が振り下ろされようとしていた。



「諦めてんじゃねぇぞぉぉぉぉおおおお!!」



 その直前でソルドが叫ぶ。



 ――手伝ってやるよ!



 ソルドの足の裏に俺の魔法で爆発を起こす。



 すると、ソルドは跳び上がるように加速し、ジンへと振り下ろされる剣と、持っていた大剣が交差した。



 大剣が剣をはじき返し、そのままその個体を吹っ飛ばした。



 ソルドは滑り込むようにジンの前で止まると、ジンを守るように【アーマーソルジャー】の前に立ちふさがった。



「ソルド……さん?」



 ジンが驚いた様子でソルドを見上げる。



 その顔は、どこか安心したような表情と、何かを諦めていたような表情が混ざっているように見える。



 コイツ、まさか。直前で諦めたんじゃないだろうな?



 もし、そうだとすれば。今すぐ殴ってやりたい気分だが、俺がそんなことをできる権利がないことは、俺が一番知っている。



「……ヒール!!」



 冒険者のうちの誰かが、魔法を唱えると、ジンの傷はみるみるふさがっていく。



 これで、ジンも動けるようになっただろう。



「あ、ありがとうございます」



 誰が回復してくれたのかわからないまま、礼を言うと、



「なにボケッとしてんだ。傷が治ったんならさっさと行かねえか。ここは俺たちに任せとけよ」



 と、ジンの顔を見ずに、ソルドが先を促した。



 だが、ジンは完全に心が折れてしまったのか、首を横に振って、



「俺なんかより、ソルドさん達の方が強いじゃないですか。だったら、俺が先に行くより――」



 と、言ってきやがった。



 マジで殴ってやろうかな。



 あらかた、ソルド達の方が強いから、ソルドが先に行けばいいのでないか、とでも考えたのだろうが、お前マジ、ふざけんのも大概にしろよ。



 ソルドも同じことを思ったようで、



「はっ! なこった。攫われたのはお前の仲間だろうが。お前が助けねぇでどうすんだ」



 まったくだ。



 それに、テメェごときがここを守れると思ってんのかよ?



 今のお前じゃ、足手まといにしかならねぇよ。



 すると、他の皆も思い思いにジンの背中を押す。



「そういうことだ。さっさと行け」

「ここにいても邪魔だっての」



 そうは言うが、お前らも大丈夫か?



 後ろから見てると、お前達の体も恐怖で震えているように見えているんだが?



 あの【アーマーソルジャー】に勝てるのか? それで?



 ……はぁ。まったく。



 仕方ない。ここも俺が一押ししてやろう。



「俺、この戦いが終わったらあの人に告白するんだ……」



 ……言ってみると、これなかなか恥ずかしいな。



 いや、別に告白する相手なんかいないけどね!



 これを普通に言える奴って逆にすげぇわ。



「おいっ! 誰だ今フラグ立てた奴!!」



 完璧なツッコミをありがとうございます。



 で、でも。確かにこれちょっとすっきりしたな。



 一度は言ってみて損はないもんだな。死亡フラグ!



「テメェら! 少しくらいビシッとしねぇか!」



 ソルドが最後にまとめてくれたおかげで、冒険者達の間で笑いが取れる。



 狙いどおりだ。



 見た感じ、ジンの緊張も取れたし、これぞ一石二鳥ってやつだな。



「俺が彼女を助けたい。それ以外ないだろ!」



 すると、いきなりジンが叫んだ。



 え、何? いきなりどうしたの? おかしくなったか?



 だが、何やら大事なものを再確認したような目をしている。



 いいけどね?



 でも、少しは何も知らない俺達のことを考えて、ものを言ってくれない?



 なんで、いきなりこっちが取り残されたような扱いをされなきゃいけないの?



 まぁ、よくわからないが、ジンの目にもう迷いはないようだし、こっからは俺達も気合いを入れる番だな。



「すいません。お願いしてもいいですか?」



 何を、とはもう聞かなくてもいいだろう。



 俺達がする返事はもう決まっている。



『任せとけ!』

















 ジンが【アーマーソルジャー】の群れをくぐり抜けてから、俺達は無数の【アーマーソルジャー】と激闘を繰り広げていた。



【アーマーソルジャー】は普通に倒そうと思って倒せる相手じゃない。



【アーマーソルジャー】の本体はない。



 言うなれば、鎧そのものが本体と言ってもいい。



 何が言いたいのかというと、この魔物はただ胴体を切断したところで、止まらない。



 鎧を粉々にするか、動けないほどに切り刻むかの二つの他に、あとは【ディスペル】という魔法を使うこと。



 だが、ここで誤算が二つあった。



 一つは【ディスペル】という対召喚魔法を使える者が少ないということだ。



 敵の攻撃を避け、相手の腹を蹴る、もしくは突き飛ばすことで魔法師へと飛ばして、彼らに【ディスペル】してもらうという方法で討伐していた。



 敵の量とこちらの戦力の差が大きすぎる。



 そもそもその突き飛ばしがうまくいかない冒険者が多すぎる。



 そして何より。



 敵を倒しきる前にこちらの魔力が保たない。



 ハンマー使いになんとかしてもらおうとも思ったが、意外と体力がない奴ら。



 普段から酒ばっか飲んでいるからだっ!



 そんなことを考えつつも、それでも他にいい案が思い浮かばず、今までと変わらず動きをしていると、ついに魔術師達の限界が来てしまった。



 それと同時に陣形が一瞬崩れ、それによって貴重なハンマー使いが敵にやられてしまうという。



「……クソッ!」



 思わず悪態をついてしまったが、実際問題、状況がかなり悪いのは明らかだった。



 そして、もう一つの大誤算。



「「ぎゃぁぁぁーーー!!」」



 悲鳴をした方向を見ると人が宙に飛ばされていた。



 何が起きたのか、こちらからは人で見えないが、強い相手が出てきてのだろうと予想できる。



 おそらく、普通の【アーマーソルジャー】と違うのはここだろう。



 その地域にだけ、魔力が他と比べて高いのは、うすうす感じ取れていた。



「こいつは俺に任せてみんなは他の奴を!」



 ……あぁ。それと、もう一つだけ誤算があったな。



 俺がそんなことを考えながら、爆心地を見ると、ソルドがその強者と戦おうとしているところだった。



 ……あの野郎。【アーマーソルジャー】との戦い方を全然知らなかったのだ。



 実際に相手するのは今日が初めてだったのかもしれないが、ランク『A』ならもっと勉強してきやがれ!



 なんとか、自力で答えを早くに見つけてくれたからよかったものの、マジでアイツを褒めてしまった分を俺に返してくれ。



 と、まぁ。こんな感じで、いろいろな予想外に見舞われていると、俺はあることに気付いた。



 俺の魔法で騎士の鎧を溶かし、地面にくっつけていると、突然その鎧の騎士が動かなくなるのだ。



 まるで、ありもしない魂を取られたかのように。



「……なんだ?」



 何が起きている、そう思ったときだった。



「「「ソルドさーーーん!!」」」



 冒険者達がソルドの名を叫ぶ。



 声からしてどうやらソルドがやられたみたいだ。



 ランク『A』が時間稼ぎもできない相手とは。



 これはかなりまずい状態かもしれん。



 ソルドがやられてしまったショックのせいか、なんとか保っていた陣形は完全に崩れ、あっという間に、騎士達にやられていく冒険者達。



 気付けば生き残っているのは、まだ体力に余裕のある俺だけとなっていた。



 さすがの俺でもこれはまずいな……。



 まだ【アーマーソルジャー】は五十体ほど残っている。



 一体、一体倒していくのは無理だろうな。



 となれば、一気に倒すしかないが。



「ここじゃ、マズいな」



 ここではその秘技を披露するには難しいと判断し、俺は場所を変えることにした。



 最後の一人である俺が場所を移そうとすると、そんな俺を追いかけてくる【アーマーソルジャー】の群れ。



 ガシャガシャとうるさい奴らだ。



 何もない、広い所に着くと、俺は魔力を剣へと込めていく。



「魔力を大量に持っていかれるが、それで全員倒せるのならプラマイゼロだ」



 剣に今の魔力量の八割を込めると、ちょうどいいタイミングを窺った。



 この大技を失敗するわけにはいかない。



 そして。



「今だっ!」



 鎧の大群に対して、少し離れた場所から剣をなぎ払う。



 ほんの一瞬の間が起きた。



「これで終わりだぁぁぁぁぁ!」



 俺の叫びと共に、騎士達のちょうど真ん中にオレンジ色の線が引かれた。



 それは空間の亀裂。



 そして、次の瞬間。



 亀裂から空間がそのもの大爆発した。



 俺が十年かけて習得した俺の秘技だ。



 その分、当然威力はお墨付きだ。



 だが。



「……はぁ、はぁ。クソッ! マジかよ……」



 その大爆発の中から人影が一つ現れた。



「そういうことだったのか……」



 思えば最初からおかしかったのだ。



 魔力が高い奴を最初に見つけられなかった時点で気付くべきだった。



 いや、気付いたところで結果は同じだったか……。



「経験値の譲渡とか……。ふざけんなよ……」



 あの【アーマーソルジャー】達はやられる直前に他の個体に魔力量や経験を譲渡していたのだ。



 俺の倒した魔物が動かなくなったのはそれが理由だったのか。



 ――さぁ、絶望しろ。



 と、爆発の中から一体の【アーマーソルジャー】が姿を見せる。



 この一体がこれまでのすべての魔力と経験値を得ているのだろう。



 魔力のほぼなくなった俺に勝ち目はない。



 下手すれば、万全の俺よりも強い可能性がある。



 いや、この様子だとそうと見て間違いないだろう……。



 俺がコイツに勝てる要素はない。



 だが、逃げるわけにもいかないこの状況。



 となれば、勝つ方法は一つしかない。



 主人公ジンに託すしかないのだ。



「全く……。この俺が時間稼ぎしてやる。だから、さっさとアデラントを倒せよ、この野郎……」



 今度諦めたら俺達の命がねぇんだからな。



 それにしても、時間稼ぎで事件を解決って。



 モブみたいな仕事やってんな、俺。



 まぁ、仕方ねぇ。



 昔から、そういうのは慣れてんだっての。



 さぁ、こっからは俺の全力を賭けて、テメェを救ってやる!



「これがモブ()の仕事だ!」




皆さん、どうでしたか?

「お前かよっ!」と思ったのであれば幸いです。

これをやるためにここまできたと言っても過言ではありません(笑


2018/02/22 改稿

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