プロローグ
最終章です
Aランカーと『蒼い烏』の決戦は佳境を迎えていた。一見Aランカー達の勝利のように見えるが、当のAランカー達は底知れない不安を抱えていた。
「あと何人だ!?」
「幹部クラスの奴らは全員戦闘中だが……」
「ブリューゲルだけが行方不明なんだ……」
「なっ……!」
そう。今この場にはほぼすべての『蒼い烏』のメンバーが集まっているが、肝心のブリューゲルだけが見つからなかった。
「レギンはいまどこにいる!?」
「オルウェンとともに戦闘中だ」
「クソ!」
辺りは混乱に包まれていた。『蒼い烏』の中でも飛び抜けた戦闘力と頭を持っているブリューゲルはまさにAランカー達にとっても恐怖の対象なのだ。
そんな中、次々と『蒼い烏』との戦闘を終えた人達が一つの場所に運び込まれていた。
「大丈夫カ?」
「なんとかな……」
すると、建物が大きく揺れた。各地で戦闘が終わっているはずなのに、幹部クラスとの戦闘の所為で決戦は静まるどころか激しさを増していた。
その揺れに負傷者達はこらえることもできず、負傷者達をこの場にとどめておくのは得策ではない。そうAランカー達は察した。
「負傷者達は外に運ぶぞ! 近くに洞窟があったはず! そこに移すぞ!」
その言葉にAランカー達は頷き、負傷者達を洞窟へと運び込んだ。
レギンは焦っていた。今の揺れが戦闘とは別に起こされたこと。そして、その揺れによって負傷者を別の場所へと移動させることを。
戦闘場所から遠ざけるということはそれはつまり仲間からも遠ざけるということ。ブリューゲルはそこを狙う気だとレギンは遅れながら気付いた。
「やられた……。僕とオルウェンを閉じ込めたのはそういうことだったのか……」
「悪いな。だが、俺も簡単にやられる気などないぞ」
「レギン、どうしますか?」
そんなとき、誰かがレギン達の方へ走ってくる音が聞こえた。
「レギンさんっ、オルウェンさんっ!」
「ジン君かい!?」
オルウェンがそう言うとジンとミーシャが入り口に現れた。
そこから一歩中に踏み込もうとしたところでオルウェンに止められた。
「そこから中に入ってきてはいけない!」
「……!」
ギリギリのところで足を止めたジンにオルウェンは諭すように言った。
「ジン君っ、よく聞いてくれ! ここは僕達に任せて君は負傷者の元へ向かうんだ! 仲間が危ないんだ!」
「オルウェンっ、正気かい!?」
「それしか方法がないだろう!?」
ジンは二人が焦っている理由がわからないが、現在の状況が悪いことはなんとなく察した。すると、ジンの裾をミーシャが引っ張った。
「ジン……、嫌な予感がする……。ジンは何か感じない……?」
「何かって……。……!」
ジンはその何かを感じた。しかし、それは野生の本能とも言えるものだった。
「皆の魂が行ってはいけないところへと移動しようとしている……!」
「早くしてください! ジン君っ!」
レギンに背中を押されジンはミーシャを見た。ミーシャは軽く頷いた。
「すみませんっ! ここは頼みます!」
ジンはそう言って、人の魂を感じながら、人が集まっている場所へと走って行った。
ジンが洞窟に着いたのはそれから三十分後のことだった。その洞窟からは前に自身からわき出てきたものよりはるかに真っ黒な魂を感じた。ミーシャも何かを感じているそうで、顔が真っ青になっていた。
慌てて中へ入るとそこには薄気味悪い笑みを浮かべた男が立っており、その周りにはたくさんの人が倒れていた。
その人達の外傷は確かにひどいものだったが死ぬほどではない。にもかかわらずその人達の目は死人を想像させるものだった。
「誰かと思えば期待の新人、ジンじゃないか。いや、今や新人とは言えないほどの実力は持っているんだよね」
「ア、アンタは……!」
その顔は前に国王誕生日会で見たときと同じだった。
「ジン……、もしかしてこの人が……」
「ああ。ブリューゲルだ」
ジンがそう言うとブリューゲルは楽しそうに笑った。
「いや~、やっぱり人を殺すのは面白いよな。特にこの目見てみろよ」
ブリューゲルはそう言って、足下に倒れている人の頭を掴みジン達へと見せた。やはりその目は死人そのものだったが、同時に恐怖で死んだような目でもあった。
「お前……!」
「やる気でなにより。それじゃ『不幸という幸せを』っと」
ジンが殺意を見せた瞬間にブリューゲルはミーシャの前へと立っていた。その手はミーシャへと伸ばされており、ジンは咄嗟にミーシャを後ろへ突き飛ばした。
そして頭に手が乗せられ……
「まず一人目」




