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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第六章 ~モブの出番が少ないです~
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モブの成果

ベルンハルドが毒と不可思議な現象に苦しめられている中、突然森の方から円柱が上がった。いや、円柱ではない。


「炎……?」


ベルンハルドがそう言うと同時に異変が起こった。

キュルトスが投げていると思われる大量の短剣が増えたのだ。


「! ……?」


ベルンハルドは咄嗟に身構えたがその必要はなかった。なぜかその短剣達は訳も分からない方向へと飛んだのだ。ベルンハルドは自分に向かってくる短剣をさばくと今の現象について考えた。


(何かを狙っている? いや、この状況で何かを狙う意味がない。ということは今のは……)


さらに四方八方から大量の短剣が飛んでくるが、やはり先ほどよりも多くなっている。そしてその増えた数分訳も分からない方向へと飛んでいった。


(なんだ? 何が起こっている?)


炎の円柱が消えると同時に増えた短剣の数が消えた。そこでベルンハルドはやっと相手の魔法がわかった。


「そういうことか……! 影だな!」

「アハハ~! さすがにバレちゃうよね~! だから何だって話だけどね~!」


そう。キュルトスの新しい魔法は【影像化】。普通なら物体が存在して影が存在する。物体に合わせて影も動く。それが普通だ。

しかし、キュルトスの魔法はその法則を変える。物体が存在して影が存在するのは変わらない。この魔法は影に合わせて物体が動くようにする。


「つまり、本来届かない位置にお前の短剣が飛んできたのは、影を小さくすることで、短剣が俺の元まで飛んできたかのようにしたからだ」

「正解~!」


さらに今王国は火がところどころに発生して、影の数を増やしている。だから短剣の数が増えたのだ。だから火柱が消えた後に短剣の数が少なくなったのだ。


「そしてお前自身は影の中にでも入って、家の影を使って高速移動しているわけだ」

「高速移動と言うより瞬間移動だけどね~!」


そうしている内にも短剣が四方八方から飛びだし、ベルンハルドに向かっていた。


「タネがわかったところで君は何もできないよね~!」

「……は?」


ベルンハルドが馬鹿にするような目で地面を見下ろした。ベルンハルドは手裏剣で短剣をすべて弾くと、手裏剣を周囲に散らせた。


「何をする気だ~い」

「タネがわかれば対応なんて楽勝だろ」


ベルンハルドはそう言うと散らせた手裏剣で家を切り裂いた。切り裂かれた家は完全に崩れ落ち、影の上に落ちた。


「高さがなけりゃ、影はできねぇよ。これでテメェは実体化するだろ」

「……なるほどね~」


キュルトスの影が家の影より長くなったことにより、キュルトスは影の中からの攻撃ができなくなった。ベルンハルドは高度を少し落とし、狙いやすいところへと移動した。


「高さは関係ない以上、俺が距離を取るほど俺の攻撃だけが当たりにくいからな」

「君のもう一つの魔法を見せてくれよ~!」


キュルトスは自分の攻撃手段が減ったにもかかわらず、余裕の口であった。


(まだ何かあるのか? また新しい魔法とかか?)


ベルンハルドはキュルトスの動きに集中していると、その二人以外の人物達が動き始めた。


「王国が火だるまだぞ!」

「まずは逃げ遅れている人達の救助を!」


空から転移されたはずのAランカー達が降ってきた。


「あれれ~? なんで、この場所がわかっているんだよう!」


キュルトスは不思議な顔をしていたが、ベルンハルドはすぐに思い当たった。


(まさかさっきの炎はエリクのものか! それでAランカー達をここに!)


Aランカー達は王国民の救助を行うついでに火を消火することにした。


「―――。『レイン』!」

「! バカっ、やめろ!」


ベルンハルドの制止も虚しく、王国の上に雨雲が広がった。その雲から大量の雨が降り注ぎ、同時に雨雲が王国全体に影をもたらした。


「ラッキ~! 俺っちてば、超~ついている!」

「くそっ、待ちやがれ!」

「ここは俺っちだけ逃げさせてもらうよ~ん!」


キュルトスはそう言って影の中へと入っていった。その後もベルンハルドは必死に探したが、気配はなくなったまんまだった。

ベルンハルドはそこでため息をついて、周りを見た。王国の炎は雨で消え始めていたが、騒ぎは収まっていなかった。むしろAランカー達が来たことで、騒ぎが大きくなっていた。


「早く助けてくれ! お前ら遅いんだよ!」

「うちの子を早く助けに行ってよ! まだ助かるかもしれないのよ!」


王国民はAランカー達に命令に近い頼みをしていた。ベルンハルドはその音を聞きながら、ため息を再度ついた。


「それじゃ、まず家をどかす仕事でもするか。……面倒くせぇけど」


そう言ってベルンハルドは王国を飛び回った。

















それから少しして、エリクとレギン、ついでにミレアは王国にたどり着いた。

門の前で突然レギンが止まった。


「? どうしたんだ、レギン?」

「先に行ってください」

「よくわからねぇが、お前のことだ。何か考えているんだろ」

「えぇ、まぁ。そんなところです」


エリクとミレアはそうして、先に王国の中に入っていった。

それから、レギンはしばらく黙って立っていると、その前に冷や汗をかいている人物が影の中から現れた。


「マジ、俺アンラッキーじゃ~ん……。運悪すぎっしょ……」

「悪いね。君にはここでやられてもらうよ」


レギンは腰に掛けている剣を抜き、腕ならしとでも言うかのように軽い戦闘態勢に入った。キュルトスは自分が舐められていることと、負けることはわかっていながら、それでも余裕の笑みを絶やさなかった。


「そんな簡単に負けるわけにはいかねぇよ~!」


キュルトスはレギンに短剣を飛ばす。










……そして、勝負は一瞬だった。
















「悪いね。君たちは昔の相手を相手にしたいようだけど、僕には関係ない。殺れるときに殺る、それが僕だ」


そう言ってレギンは門の中へと入っていった。

その後ろには人どころか灰すら存在しなかった。



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