モブの毒味
20万pv達成しました!
「皆の者! 今日は待ちに待った王国誕生祭じゃ! はしゃぐのはかまわないが、ケガだけはくれぐれもしないように!」
クソ国王が国内放送からそう宣言すると、国中が騒ぎ出した。
「「うっせぇな……」」
そんな中俺とベルンハルドは創造神の店の前を陣取って、【ホーンラビット】の串焼きを食べていた。
周りには、たくさんの人々が行き交っていて、その中には見知った顔のAランカー達もいた。
お疲れ様で~す。いや~、皆が働いているときに食べる飯ほど美味いものはない!
隣を見ると、ベルンハルドもそんなことを考えていそうな顔をしていた。やはりとことん俺達は似た者同士である。
「これから兄ちゃん達はどうすんだ?」
創造神がそう聞くとベルンハルドが串焼きを食べながら考えた。
「……。特になにもすることがないな」
「お、おう。そうか。だが、この店のものをずっと食わせるわけにはいかねぇぞ」
「な、なぜ!?」
俺達が何か悪いことでもしたのだろうか!? 俺はずっとここで【ホーンラビット】を食べている予定だったのに!
俺が理由を聞くと、創造神は二カッと笑った。
「兄ちゃん達だけに食べさせるわけにはいかねぇからだよ。俺の飯はできるだけ多くの人に食べてもらいてぇからな」
「「お、おっちゃん……!」」
やはり俺達とは別次元の人だぜ……! そうだよな、俺達なんかがこのお方の考えを理解することはできないよな。
俺達は感動した後、最後に串焼きを二十本ほど頼んで、その場を後にした。
「それでこれからどうする? どっか行きたいところとかあるか?」
「そうだな……。せっかくの祭りだから食べ歩きでもするか」
「了解」
ベルンハルドはこの国の誕生祭に参加するのは初めてなので俺が案内することになった。俺もあまりこの誕生祭に出ないが、毎年行われていると、どこにどの露店があるかはわかる。
俺がまず案内したのは家の近くにある店である。俺は食べたことはないが、家でゴロゴロしていると美味いなどいう声がよく聞こえる。
「ここは【コボルト】のステーキを売っている」
「ふむ、それじゃ一つ」
ベルンハルドが口に入れるところを俺は黙ってみていた。だって美味しかったら俺も買うから。
「ん……。ん~、あれほどではないが、なかなか美味いな」
「すみません、一つください」
「お前まさか……」
「? 何が? それじゃ、次行こうか」
俺の思惑に気付いたようだが、完全にバレる前に俺は次の店へと向かった。
次に俺が案内したのは、こりゃまた家の近くにある店だ。
「ここは限定アイスを売っている。結構甘いそうだぞ」
「とりあえず一つ」
ベルンハルドはアイスを口にした瞬間目を見開いた。
……お! ここはそれほどまでに美味いのか!? それなら……
「俺にも……」
「死ぬほど甘すぎてあまり味が好きじゃない」
「一つほしかったけど、あとでいいです」
あぶない、あぶない。まったくまぎらわしいんだよ……。もっと早くまずいかどうか言ってくれよ。
俺がそう思っているとベルンハルドが俺の胸ぐらを掴んできた。怖い怖い。
「お前、まさか俺に味見させているわけじゃないよな」
「まさか。わかった。次は俺が先に食べてやるよ」
さすがにバレたようです。だが、次の店は噂で聞く限り最も美味い場所だ。不味いことはありえないだろう。
俺は心の中で余裕を浮かべていた。しかし、それは間違いであった。
俺が次に行く場所は家の目の前にある店だ。いい加減気付いたかもしれないが、俺は家の周りの店しか知らない。しかもどこも食べたことがないのだ。
前にも言ったが、俺が外食したのは『エレスタ』が初めてなのだから仕方ねぇだろ……。
俺が店の前に着くと、早速店の人に注文しようとした。
「すみません、一つくだ……」
「エリク様、初めて来てくれましたね」
「……。くださらなくても大丈夫です。ホントにすいません」
俺が黙って帰ろうとしたところに、俺の両肩をそれぞれ違う人物が掴んだ。
「お前言ったよな? 次の店はお前が食うって」
「エリク様、どうして帰られるのですか?」
「……離してください」
俺は必死に逃げようとしたが、ベルンハルドの魔法で動きを完全に止められた。ついでに言うと、完全に操り人形になっていた。
「ごめんなさい! この店はダメだ! 無理です! 俺はもう【ホーンラビット】のおかげで正気に戻ったんだ! それなのに、また壊れたくない!」
「知るか。お前が自分から約束しただろうが」
「安心してください。何があっても私がついていますから」
それは最悪の状況だよ! 誰か!? 誰か助けてくれ! シルヴィ~~~!
「そこで他の女が出てくるとはいけませんよ、エリク様」
「よくわからないが、さっさと食え」
そこでベルンハルドとミレアは互いに目線を合わせた後頷いた。
待って!? 今何を……! く、口が勝手に……!
俺の口は俺の意志に反してゆっくりと開けていた。もちろん、それはベルンハルドの仕業なのだが、俺の目の前にいるミレアは頬を赤くさせて俺にあ~んをしていた。
いやいや! お前が頬を染めても無理なものは無理だから! やるならシルヴィに……!
そこでミレアは珍しくムッとして、俺の口の中に料理を突っ込んだ。
「どうだ、美味いか?」
「……」
「どうですか、エリク様。これで私の好感度は上がったはずです」
「……」
普通に考えれば店を出すということは他の客に食わせているものである。だから、エリクの考えているようなものは入っていない。しかし……
「? おい、何か言え」
「あまりの美味しさに何も言えないのですか?」
「……」
アイシアとミレアの料理=食べてはいけないもの、という方程式ができあがっていた俺は……
気絶していた。




