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モブヒーロー ~モブで視る英雄譚~  作者: 甲田ソーダ
第六章 ~モブの出番が少ないです~
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モブは忠告される

国王誕生祭まで残り二日となった。

そんな中、王国のあらゆる場所で突風らしきものが吹き荒れていた。


「今日で南と東を終わらせるぞ」

「なら今日は俺が南だな」


俺とベルンハルドは二時間前にそう言って、二手に分かれた。ちなみに現在突風が吹き荒れている地域は東だ。俺はひたすら自力でゴミ拾いをしていた。


「つうか、ベルンハルドは反則すぎるだろ……。俺の速さとベルンハルドの速さが違いすぎる……」


そんなとき、俺の前に誰かが立った。俺が目線を上げるとそこには引きつった顔のオルウェンと困ったような笑いをしたレギンがいた。


「なんだ、俺の手伝いか? それは助かる。これでベルンハルドと同じくらいの速さにはなるだろ」


俺が気楽にそう言うと、オルウェンはついにキレた。


「君って奴は何をしてくれるんだ! 早く、ベルンハルドを止めてくれ!」

「はぁ? 何でだよ? 王国をきれいにするためじゃん。どこに止める理由がある」


俺の問いにレギンが頭を掻いて言った。


「いやね、あのすさまじい突風に国の人達が困っているんだよ」

「はぁ? なんで」


あれは突風のように思えるかもしれないが、ちゃんとしたベルンハルドの魔法だ。ベルンハルドが選択しない限り、人が飛ぶことはありえない。困っている理由が思いつかなかった。


「君ねぇ……、普通に考えてみてください。自分が吹き飛ばされないとしても、それがわからない者にとっては恐怖でしかないでしょう?」

「あ、あぁ~! そういうことね」


なるほど。確かに俺達はベルンハルドの魔法を知っているからそうだが、知らない者にとっては自分も吹き飛ばされると思ってもおかしくない。むしろ吹き飛ばされると思うのが普通だ。


「それに、動いているゴミに当たるかもしれないとも思っていますしね」


俺はそれを聞いて柄にもなく反省した。俺が反省したことは最近はないはずだ。俺が引きこもったときに皆からいろいろ言われたが、あれは反省ではないはずだ。


「とにかく、今すぐあれを止めさせてください」

「断る」

「まったく、君って奴は……。反省しなさ……え?」

「いや、だから断る」


俺の言葉に二人は耳を疑った。それはそうだろう。二人に言われて反省したような顔をしていた奴が目の前で断ると言ったのだ。驚くのも無理はない。だが、俺にも理由があるのだ。


「今、あれを止めさせたら俺達は祭りの日遊べないからな。悪いけど我慢してもらおう。大丈夫だ、そうだな……、十七時くらいには終わるから。明日は北の方を掃除して終了だ」

「君っ、反省しているのかい!?」

「反省はしてるよ。でも、それでも俺は祭りの日くらいは遊びたい」


俺がそう言うとオルウェンよりも先にレギンが動いた。レギンは俺に笑っていたが、声はガチのトーンだった。


「明日は祭りの準備の最終日だ。それを邪魔するのは僕も見逃せないよ。もし、そうしようとしているのなら……、僕は君を止めるよ」


レギンはそう言うと腰の剣に手をかけた。それだけで常人が気絶しそうな殺気を感じた。


これが世界最強のAランカーの覇気か……。俺なんかが戦ったら瞬殺だな……。


俺はあまりの迫力に鳥肌が立つのを感じた。だが、できるだけ表情を変えないように言った。


「それなら……、今日で終わらせてやるよ」

「……は?」


レギンは自分の殺気に動じなかったことを驚いたのだろうか、それとも俺の発言に驚いたのか、今後絶対に聞くことはないだろうと思える疑問の声をあげた。すると、殺気が解けたのだろう。俺は体が楽になった気がした。


し、死ぬかと思った……。この殺気の中変なことを言うものではないな……。だが、これで俺達にはチャンスができた。


「明日がダメなら今日で北も掃除して、俺達は堂々と明日、明後日と休んでやるよ。これなら文句はないだろう?」


俺の提案にオルウェンは反論しようとしたが、その前にレギンに止められた。


「……ホントにできるのかい?」

「できるできないじゃない、やるかやらないかだ!」

「そういうのはいらないから。できるのかい?」

「……で、できますよ~」


超怖かった……。だって一度は言ってみたかったんだもん! 俺だってね、主人公的な発言をしたいんだよ? それなのに……、怒られるなんて……。あ、やべぇ、今の殺気に涙が……。


俺は連続で殺気を込められた所為で、ついに俺の体が悲鳴をあげて目から透明な液体が流れ出してきた。


「えっ! ちょ、ちょっと!? なんで泣くの!?」

「レギン、大丈夫です。彼は君の殺気に思わず泣いてしまったのですよ。彼のメンタルは豆腐ですから」

「お、お前……! それはっ……、言い過ぎだろ……っ」

「事実でしょう?」


これは完全にキレちゃってるな……。こいつがここまでキレることはあまりないはずなんだけどな……。


「この二人はどうも集団行動どころか、単独行動も危険ですね……」


オルウェンはそう言うとため息をついた。


そう言うけどさ……、お前がそもそも俺達にゴミ拾いさせるのが悪いんだよ?


俺がそんなことを考えていると、俺達の周りのゴミが勝手に動き始めた。俺達は黙って頭上を見上げるとベルンハルドが降りてきた。


「話をしていないで早くこっちの掃除も終わらせて」

「ベルンハルドっ、あなたもですね……!」

「さっきまでの話は全部聞こえていたけど、答えはエリクと変わらないよ」

「つまり……?」


レギンがそう尋ねると、俺とベルンハルドは互いの顔を見てから二人に宣言した。


「「今日ですべて終わらせてやるよ」」


そう言って俺達(主に俺だが)は掃除を再会した。
















「というかなんで声が聞こえているの?」

「俺の【念動力】は音も動かすことができるからな」

「……マジで反則すぎるだろ……」



すいません……。しばらくは戦闘の予定はないです……。

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